国際

不透明な資金運用のリスク

 最近、中国のシャドーバンク問題が注目されている。

 特に、国有銀行などの商業銀行が販売している理財商品と呼ばれる信託金融商品のデフォルトが心配されている。銀行にとって理財商品の販売で集めた資金はオフバランスのものであるため、銀行業監督管理委員会はこれまで厳しく監督していなかった。

 商業銀行は預金を集めた場合、商業銀行法によって預貸比率規制などに厳しく縛られることなく、運用の自由度が制限される。それに対して、理財商品の販売で集めた資金は商業銀行法に縛られず不動産市場での財テクなど、比較的自由に運用できる。

 しかし、その運用が失敗した場合、金融システムに大きなリスクがもたらされる。

 そもそも中国にはシャドーバンクのような概念の金融機関と組織は存在せず、高利貸しを中心とする民間の非正規金融システムがこれに近い存在である。

 中国人民銀行(中央銀行)によると、2012年末の時点で、中国国内でマイクロ・ファイナンスを行う会社は既に6080社に上っており、融資残高は5921億元(約9兆9千億円)に達している。そして、質屋は6084社あり、質の残高は706億元に達する。融資信用保証会社は8590社あり、村レベルの資金互助組織は1万6千カ所に上っている(中国人民銀行「2013年金融穏定報告」)。

 中国では、家計の貯蓄率は30%を超えているが、一般家庭が運用できる金融商品は限られている。

 家計はまとまった資金があれば、住宅購入を選好する傾向が強い。小口の資金の場合は理財商品の購入を選好する。一般的に、理財商品の利回りは銀行の定期預金より高めに設定されているため、人気は高い。

 問題は商業銀行の資金運用の不透明性にある。商業銀行は直接的ないし間接的に不動産などに投資するケースが多く、不動産市況が暴落すれば、商業銀行のバランスシートの悪化がもたらされる。これこそ理財商品のリスクが心配されるゆえんである。

 シャドーバンクのほかに、金融システムの安全性を脅かすもう1つのリスクとして地方債務の問題が挙げられる。地方債務はこのまま放置すればますます膨らんでしまう。

 地方政府が商業銀行から借り入れた債務は景気減速局面において返済は困難である。地方政府が保有する資産をみると、地下鉄、上下水道、道路、街路樹などはほとんど売却不可能なものばかりである。

 ここで重要なのは、地方債務の穴をいかに素早く埋めるかである。

 振り返れば、1998年に金融改革が行われたとき、4大国有銀行(工商銀行、中国銀行、建設銀行、農業銀行)の不良債権の一部を、新設された資産管理会社(AMC)に移管した。その際、国有銀行の資産劣化を防ぐために、「債転股」(Debt equity swap)の手法が使われた。すなわち、国有銀行の債務をエクイティに転換することである。

 そのエクイティをAMCが簿価で取得するので、国有銀行のバランスシートが劣化しなくて済んだ。最終的にAMCが損出した場合、財政資金で補てんする。

 しかし、今回の地方債務問題は、証券化の手法で解決できるかどうかが不透明である。地方政府およびその傘下の国有投資会社が保有する不動産については証券化する可能性があるが、上下水道や地下鉄および街路樹などは証券化することが難しい。

 地方債務問題は、痛みの伴わない解決法は存在しない。限られた選択肢の中から比較的コストの低い解決法が選好されよう。

 現段階で予想され得る解決法のアジェンダは、経済成長率をある程度押し上げて、不動産市況の上昇を大きなバブルにならない程度容認し、そこで得られた資金を地方債務の返済にあてることである。

解決が困難な地方債務問題

 中国国内の金融リスク問題を素早く解決しなければ、金融危機が起きる可能性がある。その引き金となり得るのは、中国の金融リスクを嫌気して資本が海外へ逃避してしまうことである。

 これまでの10年間、人民元の切り上げの為替差益を目当てに、巨額のホットマネーが中国に流れている。今、景気が減速し、人民元が切り下がる局面が現れている。

 中国政府はシャドーバンクの問題や地方債務の問題を国内問題と位置付けているが、これらのリスク問題を見える形で解決しなければ、ホットマネーが瞬時に逃げ出してしまう恐れがある。97年に起きたアジア通貨危機は中国にとって反面教師となる。

 中国政府は金利の自由化と人民元為替変動幅の拡大など、さらなる金融の自由化と国際化を模索しているようだが、国内金融市場の改革と不良債権の処理を先行しなければならない。

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

2015年の中国リスクと新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第35回)

「3不社会」韓国の「3放世代」

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

 昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

201712EVEREDIA_CATCH

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年1月号
[特集]
敗者復活戦

  • ・負けから何を学び、糧にしていくか
  • ・存亡の危機を乗り越えた「熱海」の逆転ストーリー
  • ・あの名門ブランドが、帰って来た(アイワ、ビクター)
  • ・「なるほど家電」を牽引する大手家電メーカーの早期退職組(アイリスオーヤマ)
  • ・関ケ原で敗れた立花宗茂はなぜ、返り咲くことができたのか
  • ・市江正彦(スカイマーク社長)
  • ・加藤智治(ゼビオ社長)

[Special Interview]

 三毛兼承(三菱東京UFJ銀行頭取)

 「旧来の商業銀行は構造不況業種 大変革で信頼と強さを持ち続ける」

[NEWS REPORT]

◆カードローン規制で稼ぎ頭を失う地方銀行の明日

◆12年ぶりのアイボ復活 名実ともにソニー再生は成るか

◆終身権力者も視野に入った習近平が恐れるクーデター

[特集]クルマが変わる、社会を変える

・これから始まる全自動運転 OSを制するのは誰だ!?

・車載電池の性能が左右するEV時代の覇権戦争

・冷える鉄鋼、潤う化学 クルマが変える産業構造

・トヨタ・日産・ホンダ・マツダ 主要4社「わが社の戦略」

ページ上部へ戻る