マネジメント

(もとえ・たいちろう)
1998年慶応義塾大学法学部法律学科卒業。01年弁護士登録(第二東京弁護士会)、アンダーソン・毛利法律事務所(現アンダーソン・毛利・友常法律事務所)勤務を経て、05年法律事務所オーセンスを開設。同年、法律相談ポータルサイト弁護士ドットコムを開設。代表取締役社長兼CEOを務める。

 

偽装表示の事例 

 弁護士法人法律事務所オーセンスの代表弁護士、元榮(もとえ)太一郎です。ビジネス弁護士としての実務経験で得たトラブル対応のノウハウ、「ブラック企業と言われないための対策」を解説します。

 禁煙グッズ等の健康商品を製造販売するA社のB社長が、慌てた様子で法律事務所に駆け込み、こうまくし立てました。

 「当社自慢の禁煙グッズ『ヤメルンデス』のパッケージには『誰でも必ず禁煙できます!』と書いてあるんだが、この表示に関して消費者庁から調査が入った。販売前の当社調査の結果は禁煙成功率60%くらい。多少の誇張は許されると思ったんだが」

 さて、A社はこの後どうなってしまうのでしょうか。

誰でも起こし得る偽装表示による景表法違反

 「嘘」の情報で消費者に誤解を与え、不当に商品を購入させようとする行為は、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)で規制しています。

 景表法は消費者を保護するための法律であり、あらゆる事業に適用されます。最近では食品の産地偽装表示が問題になりましたが、これに対して、「うちは食品会社じゃないから関係ない」と高をくくっていると、痛い目に遭うので注意が必要です。

 以下、先の事例を基にしながら、表示にかかわる法的リスクについて見ていくことにしましょう。

(1)「ヤメルンデス」の表示は不当か?

 「ヤメルンデス」は、A社の調査で禁煙成功率が60%であったにもかかわらず、商品のパッケージに「誰でも必ず禁煙できます!」と記載しています。これは、実際の商品よりも性能を著しく高く表示しているので、商品の品質や規格に関する不当な表示と見なされ、景表法規制の対象となってしまいます(景表法第4条第1項第1号)。

(2)景表法違反を疑われるとどうなるか

 景表法違反を疑われると、消費者庁などから調査を受けます。

 調査では、事業者側に弁解の機会が与えられますが、弁解してもなお景表法違反があると判断された場合、「措置命令(景表法第6条)」という行政処分を受けることになります。

 措置命令では、「消費者に対して景表法違反の事実を周知すること」、「再発防止策を講じること」、「今後、同様の表示をしないこと」などが命じられることが一般的です。

 ちなみに、景表法違反があったとしても必ずしも措置命令を受けるわけではなく、警告や注意など、違法状態の是正指導を受ける場合もあります。

(3)景表法違反者が負うリスク

 景表法違反の措置命令に従わなかった場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科されます(景表法第15条)。またA社の場合、「ヤメルンデス」の購入者から購入代金の返還や、損害賠償を請求される可能性があるほか、マスコミ報道や消費者庁による措置命令・警告の公表により、会社の社会的信用が低下、売り上げの減少、お詫び広告のコスト負担など、事実上の影響を受けるおそれもあります。

 実際、2013年の阪急阪神ホテルズの偽装表示問題の際には、テレビや新聞で連日この話題が扱われた上、当時の社長が「偽装表示ではなく誤表示」と言い張り、偽装表示を認めなかった不適切な対応も相まって、ホテルのブランドに少なからず悪影響がありました。

景表法違反を回避するには

 景表法違反を回避するには、「事前の相談」と「日頃からの資料の準備」の2点を心掛けることが大切です。

 まず、景表法は、品質や規格等について「著しく」優良であるかのように表示することを禁じています。ただし、どのレベルから「著しく」なるのかは微妙です。もし、行おうとしている表示が、景表法に違反しているかどうか判断できない場合は、早めに消費者庁や弁護士に相談すべきです。

 また、景表法違反を疑われると調査を受けますが、調査が開始されてから資料を集めるのでは手遅れになる場合があります。

 特に、商品の品質や規格等についての不当表示では、「15日以内に表示内容を裏付ける合理的な根拠を示した資料を提出する」よう求められることがあります。

 この期間内に資料を提出できなければそれだけで不当表示と見なされてしまいます。そのため、表示内容を裏付ける資料を日頃から準備しておくことが大切となります。

偽装表示の発覚時には適切な対応を

 阪急阪神ホテルズの食品偽装問題が発覚した後、その他のホテルや百貨店が自主的に偽装表示を公表しました。もし、自社における景表法違反行為が発覚した場合には、一定の社会的信用の低下はやむを得ませんが、速やかに違反の事実を認め、再発防止策を講じるなど、説明責任を果たして適切な対応を取り、損害の拡大を防ぐべきです。

筆者の記事一覧はこちら

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

【特集】2019年注目企業30

 2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。 原点回帰で、顧客第一…

「超サポ愉快カンパニー」としてワクワクするビジネスサイクルを回す―アシスト

ITと建設機械、グリーンエネルギーの3本柱で地球環境問題解決に貢献する―Abalance

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年4月号
[特集]
日本の「食」最前線

  • ・総論 日本の「食」から世界の「食」へ 成長産業となった農水・食品産業
  • ・「食」の輸出1兆円を支えるジェトロの役割
  • ・全国で進むブランド化「食」から始まる地方創生
  • ・上海で見た日本の「食」の未来
  • ・海外進出した外食チェーン「成功」と「失敗」の分かれ目
  • ・日本人が知らない中国の「日本食ブーム」の真実
  • ・消費税引き上げで始まる「外食VS中食」最終戦争

[Special Interview]

 星野晃司(小田急電鉄社長)

 「未来を見据えた挑戦で日本一暮らしやすい沿線をつくる」

[NEWS REPORT]

◆中国リスクが顕在化 電機業界に再び漂い始めた暗雲

◆持続可能な水産業へ 魚はいつまで食べられるのか

◆CES 2019現地レポート 家電からテクノロジーへの主役交代が鮮明に

◆相次ぐトラブルで業績悪化 SUBARUの見えない明日

[総力特集]

 2019年注目企業30

ページ上部へ戻る