政治・経済

高い売り上げが見込める都市部を中心に激しい出店競争が繰り広げられているコンビニエンスストア(CVS)。今や一等地には必ずと言っていいほど、複数の店舗が乱立する。各チェーンは出店立地や業態に知恵を絞る時代に突入した。(文=本誌/大和賢治)

勢いを増すセブン

 3月27日、CVS業界最大手のセブン–イレブン・ジャパンがJR西日本と提携し、〝駅ナカ〟立地に約500店舗を出店する計画を発表した。これにより、同社は近畿・北陸・中国地方で大量出店が実現、同地域の店舗数で先行するローソンを逆転する。

 セブンの出店戦略の要はドミナント(集中出店)による効率性の追求にある。効率的な商品配送は、利益の源泉でもあり、これを実現するにはドミナントに勝る策はない。それゆえ、いち早く全都道府県へ出店を完了したローソンやファミリーマートに対し、セブンはいまだに未出店の地域が存在。近畿・北陸・中国の店舗数で、ローソンが勝っているのは、そんな背景もある。

 しかし、今回の提携により、手薄だった中国地方でも橋頭保を築くことになり、セブンの優位性がこれまで以上に増すことにもなる。

 今回、JR西日本との提携の狙いをセブン–イレブン・ジャパン広報では次のように語る。

 「24時間営業はできなくとも駅構内店舗は乗降客を含めた集客力という点で魅力的です。弊社ではこれまで、京浜急行さまと同様な取り組みをしてきましたが、以前の店舗に比べ日販は確実に上がっています。今回の提携では、その実績を踏まえ各々の駅が通勤・通学や出張・帰省の利用が多いかなど、特性を分析した品揃えを実施し、効率性と満足度向上に注力します」

 セブンがこれまで培ってきた個店のマーケティングデータでいかに優越性を発揮していくのか注目したいところだ。

 しかし、今回の提携は見方によっては、街中での出店立地の限界が近づいていることを示唆しているようにも思える。

 「出店立地の選択肢が以前と比べ狭くなっているのは事実です。しかし、弊社では現実に年間1500店以上を出店し続けています。弊社に関する限り、まだまだ出店立地は十分あると考えています。高い効率を実現できる駅ナカとは根本的な考えが違います」(同)

 一方、ローソンは、レギュラー店「ローソン」の拡大とともに生鮮コンビニ「ストア100」のテコ入れ策として新業態「ローソンストア」を開発した。

 「ローソンストア」を一言で説明すると「ローソン」と「ストア100」の融合店。

 生鮮コンビニとして増加の一途をたどる〝小家族化〟に対応し、新しいマーケットを創造した「ストア100」に関しても最近では、その成功を見た大手ミニスーパーが出店を加速。これまでの優位性に陰りが見えてきた。

 「ローソンマート」は、そんな現状を打破するためにローソンが開発した新業態でもある。「ストア100」で培った生鮮の〝適量小分け〟のノウハウに、レギュラー店の公共料金の支払い、ATMの設置、さらにはニーズの高い出来立て惣菜といったサービス・商品を付与することで、これまで以上に幅広い顧客層に対応する狙いがある。

 ローソンの玉塚元一社長は、今回の新業態への意気込みを次のように語る。

 「『ストア100』は基本的に100円均一商品が中心。そのため、ロットが小さくならざるを得ず、2〜3人向けのボリューム感のある商品が実現できなかった。新業態では、この課題を克服する一方、新しいサービスを加えることで、ニーズの多様化にも対応できる」

 2月20日にオープンした横浜の1号店も出足は好調、売上高でも対前年比103%で推移しているという。同社では、店舗面積が50坪以上の「ストア100」を順次「ローソンストア」に業態変換していくことになる。

コラボという選択肢のファミリーマート

中山勇・ファミリーマート社長(左)と林三郎・第一興商社長

カラオケとの一体型店舗に乗り出した中山勇・ファミリーマート社長(左)と林三郎・第一興商社長(Photo:時事)

 業界3位のファミリーマートは異業種とコラボした一体型店舗の展開に乗り出した。2012年5月に、ドラッグストアを展開するヒグチ産業と「ファミリーマート+薬ヒグチ」をオープンさせたのを皮切りに、他のドラッグストアチェーンや調剤薬局ともアライアンスを締結し展開を加速させた。

 その一方、異業種とはいえ、競合でもある大手スーパーのイズミヤともタッグを組み、昨年10月に大阪に「ファミリーマート+イズミヤ寺田町東店」をオープンさせた。

 「商品によっては当然、カニバリましたが、ここを2社で話し合い、棲み分けを実施しました。イズミヤさんのノウハウで生鮮品を充実できたことで、これまでCVSに来店されなかった主婦層など顧客層も拡大し出足は好調です」(ファミリーマート広報)

 また、4月にはカラオケ「ビッグエコー」を展開する第一興商とも「ファミリーマート+カラオケDAM」をオープンさせた。店舗を一体型し、カラオケ客にもCVS商材を提供することで売り上げ増を期待する。

 「『ビッグエコー』の店舗は、街の一等地に多い。CVSの出店余地が減少する中で、この提携は、ファミマにとっては願ったりかなったりと言えます。このコラボで成功を収めれば、ロードサイドの外食など異業種との提携がさらに加速することになるでしょう」(業界関係者)

 ファミリーマートは、異業種との業態開発で差別化戦略を推進することになる。

サークルKサンクスは、もはや〝草刈り場〟!?

竹内修一・サークルKサンクス社長

前途多難な竹内修一・サークルKサンクス社長(Photo:時事)

 前述のとおり、大手CVSチェーンは、これまで同様のレギュラー出店に加え新規業態の開発など差別化戦略で、待ったなしの少子高齢化市場での生き残りを模索する。

 しかし一方で、ここ最近では、他チェーンからのくら替えという動きも顕著になっている。その標的にされているのが、業界4位、大手スーパー、ユニーグループのサークルKサンクスだ。

 今年に入ってからも3月に京都府や奈良県でサンクスを約100店運営するエリアフランチャイズのサンクス京阪奈がローソンへのくら替えを発表、4月から既存店を順次、ローソンに転換させている。驚くことにエリアフランチャイズの離反はこれで他を含め5例目。サークルKサンクスがいかにフランチャイジーから信用を失っているかを物語るものだ。

 要因として考えられるのは他チェーンに大きく水をあけられている売上高。サークルKサンクスの平均日販は約46万円と首位のセブンの約66万円をはるかに下回るものであり、ローソン、ファミマに比べても7万〜8万円低い。

 言うまでもなくCVSというビジネスモデルは各店にオーナーが存在するFC制が基本。平均日販の低さはイコール、オーナーの収入減に直結する。平均日販の低さから他チェーンへのくら替えに踏み切るオーナーの気持ちも理解できる。

 サークルKサンクスの業績低迷の理由についてはいろいろ指摘されるが、ある大手CVSの幹部は次のように述べる。

 「今の時代にCVSが求められているのは、顧客の目を引く商品やサービスの新しさです。これまでにない商品や価値を感じさせるものが実際に売れている。特に消費増税が実施されて以降、この傾向は顕著です。サークルKサンクスでも試みていないわけではないが、それが顧客に伝わっていない印象が強い。地盤の中京には1等立地に多くの店舗を構えながら苦戦しているのが何よりの証拠です」

 そんな指摘を裏付けるようにサークルKサンクスの前期の既存店売上高は対前年比3・1%のマイナスと大手チェーンと比べても状況は厳しい。既にサークルKサンクスは、計画していた新規出店を600店から400店に下方修正することを発表、首都圏への出店強化と既存店のテコ入れを重要課題として挙げている。

 「軸は質と量。既存、新規ともに個店の立地のあった品揃えを強化することで売り上げを伸ばしていく。新規に関してはこれまで以上に立地選定を精査する」(サークルKサンクス広報)

 同社では新規出店では地盤の中京圏と関東圏の強化を挙げている。しかし、他の地域にも増して競争が激しいエリアへの出店に果たして勝算はあるのか。もっと言えば、厳しい環境下にある同社に加盟したいと考えるオーナーが存在するのだろうか。

 同社では「加盟希望者の増減についての個別の回答は差し控えたい」とのことだが、新規加盟を希望するオーナーは当然他チェーンとの比較を行う。現状、新規オーナーを引き付ける魅力があるかは疑わしいと言わざるを得ない。

 問題の平均日販にしても「現在の約46万円を18年2月期までに57万円までにもっていく計画があります」(同)とは言うが、既存オーナーから見れば、このスピード感には不満があるだろうし、そもそも実現可能な数字なのか根拠があいまいな気もする。明確な根拠が示せなければ、今後さらに離反するオーナーが出てくる可能性も否定はできない。

 今や他チェーンによる〝草刈り場〟の様相を呈してきたサークルKサンクス。劣勢を挽回するにはハードルが高い。そこでいまだに根強く囁かれるのが他チェーンによる買収だ。

サークルKサンクスの独立独歩は可能なのか?

 地盤の中京地区に強固な地盤を持つサークルKサンクスは競合にとっても買収メリットが小さくない。あくまでも想像の域を脱しないが、買収の可能性を探ってみよう。

 業界首位のセブン–イレブン・ジャパンもローソン同様、12年に高松にあるサンクスアンドアソシエイツ東四国のくら替えを実施した過去がある。しかし、同社は、自力出店の余力も十分にあるし、これまで歴史的に見ても、禍根を残してまで傘下に収めるような無理はしないだろう。

 一方、これまで4例のくら替えに成功したローソンはどうか。同社の玉塚社長は「今後の成長エンジンの柱のひとつはM&A」と明言している。しかし、同社のM&A推進の意味は、川上から川下までを自社で賄うというサプライチェーンの拡充を意識した発言とも考えられる。多くの不採算店を抱える巨大チェーンの買収は考えにくい。

 残るは3位のファミリーマート。サークルKサンクスの親会社である大手スーパーのユニーグループHDは、ファミリーマートを実質支配する伊藤忠商事に近い。その意味では、全く必然性がないわけではない。

 さらに言えば、ファミリーマートは過去にam/pmを買収したこともあり、オーナー対応などM&Aにかかわるノウハウは十分に蓄積されていると思われる。国内に6千店以上を擁するサークルKサンクスと一緒になり、現状の約1万店と合わせればバイイングパワーも向上する。

 だが一方で、こんな指摘もある。

 「確かにファミリーマートには統合ノウハウはあります。しかし、逆に統合の難しさも痛感しているのです。コンバージョンに高い労力を費やしたことで、自チェーン成長の要でもある商品開発の進展に少なからず影響を及ぼしたことも事実です」(業界関係者)

 そういう意味では、買収には慎重姿勢をとることは当然ではあるが、仮にサークルKサンクスの状況が好転するとしても長い時間を要するのは必至。その間さらに〝草刈り場化〟が進めばチェーンとしての魅力は半減する。ここ2〜3年は両チェーンの動きを注視していく必要があるだろう。

 
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