政治・経済

順番待ち20人でも大幅改造なし

内閣改造とかけて盆栽と解く。

イラスト/のり

 「今夏行われる予定の内閣改造だが、大幅な改造はないだろう」

 政務三役を経験したある自民党衆院議員はこう〝予言〟する。今年2月28日、2014年度当初予算の年度内成立が確定した際、安倍晋三首相が今国会閉会後の内閣改造と自民党役員人事の実施を明らかにしたことを受けての発言だ。

 現在、自民党は衆院294人、参院115人の計409人(4月10日現在)。そんな圧倒的多数を占める自民党において、当選9回の逢沢一郎氏を筆頭に、8回生の宮路和明氏、山口俊一氏、安倍首相と同じ7回生では坂本剛二氏、山本公一氏、さらに、6回生には、お茶の間でもおなじみの河野太郎氏、平沢勝栄氏など15人が未入閣。つまり、6回生以上だけを見回しても20人が〝順番待ち〟の状態となっている。

 にもかかわらず、大幅な改造はないという。その理由を前出の自民党衆院議員はこう続ける。

 「現在の安倍内閣は安定している。わざわざ代える必要が少ない内閣です。強いて言えば、谷垣禎一法相と石原伸晃環境相、さらに森雅子少子化・消費者担当相ぐらい。致命的と思われる舌禍問題を起こしたのは、側近の衛藤晟一首相補佐官と萩生田光一総裁特別補佐だが、彼らを外すとは考えにくい。改造の狙いはほかにあるのでしょう」

 谷垣法相は、集団的自衛権の憲法解釈に否定的な考えを示している。4月11日にも会見で、「論理に飛躍があるのではないか」と批判した。

 石原環境相は、3月17日の参院環境委員会に約10分遅刻するなど、〝やる気の無さ〟が目立っている。自民党ベテラン衆院議員は語る。

 「石原氏は12年の総裁選で敗れたため、政権奪還後の組閣で閣僚人事は辞退するつもりだったが、派閥前会長の山崎拓氏から『角が立つので、引き受けなさい』と言われてしぶしぶ受けた経緯がある。しかし、責任は重い割に軽く見られるポスト。しかも、専門外なので、早く辞めたくて仕方ないのが見て取れる」

 森少子化・消費者担当相は、特定秘密保護法案担当でもあるが、昨年の審議では答弁がブレまくり、非難を浴びた。参院1年生議員での入閣ということもあり、今回でお役御免となりそうだというのだ。

 「しかし、女性登用を掲げる安倍首相だけに、代わりも女性議員となる可能性が高い。当選回数の多いオジサン待機組には無縁でしょうね」(永田町関係者)

 

狙いは財政規律派の排除か

 そもそも、集団的自衛権の憲法解釈についての造反や支持率が低下した場合に予測される〝安倍降ろし〟防止対策として、早々と〝人事のアメ〟をぶら下げたと見られる今夏の改造予告。しかし、大幅な改造がない場合、党内の不満はさらに高まるのではないか。そもそも、改造をブチ上げた狙いとは何だったのか。再び、前出の自民党衆院議員の話に耳を傾けてみる。

 「支持率が大幅に下がらない限り、党内で安倍降ろしを仕掛けられる人はいないでしょう。裏返せば、安倍内閣は支持率を落とさない戦略を絶えず考えなければいけない」

 その一番のカギは、法人税減税だと言う。前出・自民党衆院議員はこう続ける。

 「消費増税が4月に実施され、このままではジリ貧になるのは目に見えています。カンフル剤は、今年1月にスイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の基調講演で安倍首相が国際公約した『法人税改革に着手』が不可欠。現在、法定実効税率38・01%で、国際的に見て高い水準にある。これを10%ほど下げることができれば、国際的な信用も得られ、国内の企業活動は活性化する。政府税調も法人税改革の議論を進めている。しかし、それを実行するためには、党内の〝抵抗勢力〟を排除しなければならない」

 それこそが党税制調査会で、会長は大蔵省OBの野田毅衆院議員。同じく大蔵OBで、宮沢喜一元首相を叔父に持つ宮沢洋一参院議員は同会の幹事だ。

 「党内で2人は財政規律重視の急先鋒で、法人税減税は猛反対です。とりわけ、宮沢氏の抵抗はすさまじい。こういった抵抗勢力を人事で外すことができなければ、減税はできずに国際的信用を失い、外国人投資家も株式市場から逃げ出し、株価暴落に繋がりかねません。そうしたら、安倍内閣はあっという間に崩壊します」

 経済あってこその安倍政権。加えて、年末までに消費税10%を決めるためにも、頑なな財政規律派を重要ポストから外していく必要があるのだという。

 さまざまな課題が山積しているが、頼みの綱はやはり経済。人事の肝も結局はそこにたどり着くというのである。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年1月号
[特集]
平成の事件簿

  • ・[イトマン事件]闇勢力に銀行が食い荒らされた戦後最大の経済事件
  • ・[ダイエー、産業再生機構入り]一代で栄枯盛衰を体現した日本の流通王・中内 功の信念
  • ・[ライブドアショック]一大社会現象を起こしたホリエモンの功罪
  • ・[日本航空経営破綻]親方日の丸航空会社の破綻と再生の物語

[Special Interview]

 高橋和夫(東京急行電鉄社長)

 「100周年に向けて、オンリーワン企業の強みを磨き続ける」

[NEWS REPORT]

◆かつてのライバル対決 明暗分けたパナとソニー

◆経営陣に強い危機感 富士通が異例の構造改革断行

◆売上高1兆円が見えた ミネベアミツミがユーシンを統合

◆前門の貿易戦争、後門の技術革新 好決算でも喜べない自動車各社

[特集2]経営に生かすAI

 「人工知能は『お弟子さん』
日常生活が作品になるということ」
落合陽一(筑波大学准教授)

ページ上部へ戻る