マネジメント

 クオンタムリープファウンダー&CEOの出井伸之氏が、2014年1月に同社の執行役社長に抜擢したのは、若きベンチャー経営者である杉山大輔氏。ニューヨークで育ち、15歳の時に日本に帰国。19歳で自ら会社を立ち上げた経験を持つ杉山氏の武器は、語学力と優れた国際感覚、そして何事にも物おじしない突破力だ。76歳と34歳の異色コンビは今後何を生み出すのか。そして2人の目に映る日本の企業と社会の課題とは何か。

興味がある人にはトコトンぶつかると語る杉山大輔氏

杉山大輔

杉山大輔(すぎやま・だいすけ)
1979年東京都生まれ、NY育ち。2002年慶応義塾大学総合政策学部卒業。04年慶応義塾大学大学院経営管理研究科修了。19歳の時に教育コンサルティング会社を設立。07年インターリテラシーを設立し、各界リーダーのインタビューによる情報サイト「私の哲学」を開設。14年クオンタムリープ執行役社長就任。

-- 出会いのキッカケは。

杉山 私が慶応のビジネススクールに通っていた時に、ソニーのケーススタディーをやったこともあり、もともと出井さんには興味があったんです。昨年、あるパーティーでご挨拶する機会があって、今度オフィスに遊びにおいでと誘っていただいたのが最初です。

-- 出井さんは杉山さんにどんな印象を。

出井 覚えていないですね。こういうことは結構たくさんあるから(笑)。

杉山 私は鮮明に覚えているのですが、遊びにおいでと言われたら絶対行くほうですから(笑)。すぐに連絡して、出井さんに僕のバックグラウンドを話して、私が手掛けているインターリテラシーという会社の情報発信サイト「私の哲学」に出ていただくことをOKしてもらいました。

出井 「私の哲学」は認知されたメディアだったし、まぁ、いいですよと。

杉山 そこから、自分で勝手に出井さんとは相性がいいと思って、いろいろと連絡を取るようになりました。出井さんは、世間的にはソニーの元社長というのはありますが、私はアメリカで育った影響もあって、興味がある人にはトコトンぶつかっていく気持ちがあるので。日本人は3回くらい相手と目が合ってようやく名刺を渡しに行く感じですけど、私は目が合った瞬間に行かなくちゃと思います。

出井伸之

出井伸之(いでい・のぶゆき)
1937年東京都生まれ。60年早稲田大学卒業後、ソニー入社。主に欧州での海外事業に従事。オーディオ事業部長、コンピュータ事業部長、ホームビデオ事業部長など歴任した後、95年社長就任。以後、10年にわたりソニー経営のトップとして、ソニー変革を主導。退任後、クオンタムリープ設立。NPO法人アジア・イノベーターズ・イニシアティブ理事長。

出井 人と人との出会いって、歳を取るとちゃんと順番を踏んでからということになりますが、最初からガンガン来る人もいて、杉山さんもそうやってハードルを越えてきた1人だよね。

杉山 私はズバっと行くのが好きなので。

出井 私の周りの人ってほとんどそうですよ。それでベンチャーと大企業をつなげることができたケースなどがたくさんある。

杉山 それは、出井さんの懐が深いからですよ。出会った頃ですが、雪かきも親密になったキッカケです。私はニューヨークにずっといたから雪かきが好きで、出井さんの家はたまたま近所だったから、大雪が降ったらやってあげようかなと思って。ちょうど大雪が降り、アピールできるタイミングだなと(笑)。

出井 初めは誰がやったのか知らなくて、何で家の周りが綺麗になっているんだと(笑)。

組織にはコアメンバーがいれば十分と語る杉山大輔氏と出井伸之氏

対談の様子

-- 出井さんは、杉山さんにクオンタムリープをどうしてほしいと思っていますか。

出井 会社をどうこうしてほしいということではないです。クオンタムリープというのは、さまざまなビジネスを行うプラットフォームですが、杉山さんみたいな人が出て行くと話が早く進む。34歳という彼の年齢も絶妙で、若過ぎることもなく、年寄りでもない。いろいろな経験を積むにはよい年代かなと。

杉山 出井さんは以前、仕事の体力が一番乗る時期が35〜40歳と言っていました。私の名刺には、「スター・ウォーズ」のジェダイとヨーダを模した私と出井さんの写真が出ていますが、海外の人が見ると、その意味をすぐ理解していただき効果抜群です。つまり、弟子と師匠の関係。中には出井さんのことを“Is he your dad?(彼はあなたの父親か)”って聞いてくる人もいますが(笑)。

出井 私が76歳で杉山さんは34歳だから、dadどころかgranpa(祖父)じゃないの。

杉山 でも誰もそうは言わないです。出井さんが若いから。

-- 杉山さんは出井さんとの違いをどう出していきますか。

杉山 あまり違いを出そうとは思っていません。今までやってきた仕事は、簡単に言うとエグゼクティブの御用聞きみたいな感じで、クライアントがやりたいことを実行していくことでした。出井さんが抱えているプロジェクトが20個ぐらいあるので、私の色を出すというより、それらをどうゴールに持って行くかを考えるだけ。私が前に出ていくというよりも、単純に実行役という意識です。ただ、海外育ちというのが今の日本では武器になるかなと思います。

杉山氏の名刺に描かれている「スター・ウォーズ」のジェダイとヨーダを模した2人

杉山氏の名刺には「スター・ウォーズ」のジェダイとヨーダを模した2人が描かれている

出井 杉山さんのいいところは、私より英語がうまいところ。英語ってどんどん相手のレベルに合っていっちゃうから、英語がへたな人と話していると、自分もへたになっていく。

杉山 私の強みは英語だから、そこは磨いてきました。でも出井さんは英語のジョークがうまい。スピーチも慣れている。

出井 私は自慢じゃないが、弱みは英語だからね(笑)。ソニーに入った時は英語なんて一言もしゃべれなかったから。

杉山 それは本当にすごいと思います。海外企業と戦う時、今の大企業って英語で突破口を作れる人がいない。クオンタムリープの人たちはスピーディーに海外と交渉できるし、大事なのはやっぱり、意思決定の早さなんですよ。

出井 日本人は、企業は人数が多いほどいいと思っている人が多いけど、それは能率が悪いってことだからね。そのプロジェクトに長けている人がいればいい、というプロジェクトマネジメントの考え方で日本企業は成り立っていない。アメリカ人に「おたくの会社には何人いますか」と聞くと、知らないほうが多かったりする(笑)。

杉山 コアメンバーがいれば十分なんです。フィル・ジャクソンというNBAのシカゴ・ブルズやロサンゼルス・レイカーズの監督を務めた名将がいます。バスケットボールは5人がスタメン、12人がベンチ入りで出るのですが、彼は、一人ひとりが違ったそれぞれの役割を持つのが、一番強い組織のつくり方と考えている。だから、彼が監督になるとチームが優勝する。

出井 同じようなタイプの人が何人もいると話がややこしくなるだけ。日本は集団技が強くて個人技は弱いなんて言われるけど、個人技が優れた連中が集団になったらもっと強くなる。日本の会社が強くなるには、個人の力が強い集団をつくればいい。

杉山 まさにシカゴ・ブルズ流ですね。

出井 日本でバスケットボールがそれほど流行らないのは、圧倒的に個人技の要素が強い集団技だからではないかな。日本人がバスケットボールをもっと好きになったら、この国はもっと強くなるのではないかと思う。(次号、後編に続く)

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