政治・経済

 日本唯一のDRAMメーカーだったエルピーダメモリは2012年2月に会社更生法を申請、製造業として戦後最大の負債総額4480億円で経営破綻した。負債総額の大きさとエルピーダ支援に公的資金が投入されていたことも相俟って、経営破綻時の社長である坂本幸雄氏は激しい批判にさらされた。

 その一方で、半導体業界内では、「坂本氏が社長でなかったら10年前にエルピーダは潰れていた」という声は少なくない。坂本氏は、米半導体大手テキサス・インスツルメンツ(TI)でキャリアをスタートさせ、日本法人副社長を務めた後、KTIセミコンダクター、日本ファウンドリーと渡り歩き、「再建請負人」と言われた。エルピーダでは11年にわたって社長を務め、04年には上場を果たした。

 エルピーダの会社更生法申請後は管財人としてDIP型会社更生を進め、13年7月には米マイクロンテクノロジーとの経営統合をまとめた。「株主と債権者には確かに迷惑を掛けたが、銀行には借金をほとんど返すことになっていて、従業員の雇用は守った」とし、1年半の「撤退戦」をやり切った。

 エルピーダと坂本氏の苦悩から、日本の半導体業界とそれをとりまく環境の問題が改めて浮かび上がる。

坂本幸雄(さかもと・ゆきお) 1947年生まれ、群馬県出身。70年日本体育大学を卒業し、日本テキサス・インスツルメンツ(TI)入社。工場長、事業部長、開発本部長を経て、93年取締役副社長に就任。97年には神戸製鋼所とTIとの合弁会社KTIセミコンダクターの立て直しのため神戸製鋼所に転籍。2000年に日本ファウンドリーの社長に就任。02年エルピーダメモリの社長に就任、04年東京証券取引所第1部上場を果たす。12年2月会社更生法の適用を申請、管財人を務める。13年7月管財人兼社長を退任。

坂本幸雄(さかもと・ゆきお)
1947年生まれ、群馬県出身。70年日本体育大学を卒業し、日本テキサス・インスツルメンツ(TI)入社。工場長、事業部長、開発本部長を経て、93年取締役副社長に就任。97年には神戸製鋼所とTIとの合弁会社KTIセミコンダクターの立て直しのため神戸製鋼所に転籍。2000年に日本ファウンドリーの社長に就任。02年エルピーダメモリの社長に就任、04年東京証券取引所第1部上場を果たす。12年2月会社更生法の適用を申請、管財人を務める。13年7月管財人兼社長を退任。

大規模な資金調達で成長の基礎を固める

 坂本幸雄氏がエルピーダの社長に就任したのは2002年11月。「エルピーダでは最初から最後まで金のことで大変だった」と振り返る。

 まず直面したのは、設備投資のための資金調達だった。当時のエルピーダのDRAM市場での世界シェアは1・9%で、早急に設備投資して生産能力を増強しなければ海外メーカーに太刀打ちできない状況にあった。しかし、親会社のNECと日立製作所からは金は出せないということだった。そこで、坂本氏は、米インテルと日本政策投資銀行を2つの柱にして資金調達を進めた。インテルは半導体のオペレーションでは圧倒的な世界ナンバーワンで、政策投資銀行は日本の財務をリードしている。この2つから融資を引き出せば、他のメーカーや銀行も出資に応じるだろうという判断だった。

 インテルとの交渉では何十回と米国に飛んだ。なかなか認められなかったが、最後にインテルが認めて出資する時に言われたのは、「インテルは人を見て金を出す。どんなに装置や工場があっても経営者がしっかりしていなかったら出資しない」ということだった。

 当時のエルピーダはNEC広島工場に製造を委託しており、自前の工場を持っていなかったが、破格の250億円の出資をインテルから引き出した。

 一方、政策投資銀行については、エルピーダの財務もギブアップして諦める寸前だった。交渉では、誰も利益を出せないようなワーストケース中のワーストケースばかりを想定する銀行側に坂本氏も閉口したという。結局、希望額には届かなかったものの20億円の出資を受けた。

 インテルと政策投資銀行からの融資を受けたことで、他からの資金も集まり、最終的に1800億円の資金を調達。これでエルピーダの基礎ができたという。広島工場を立ち上げ、製品開発と生産能力を増強。シェアを回復させた。

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