政治・経済

 関西財界再編成の序曲は、老化著しい大阪商工会議所会頭・小田原太造に対する引退勧告の準備から始まった。動いたのは、関西財界のポリシーボード『朝の会』の17人の面々。きわめて周到な手順で事が進められた。

 昭和40年末、関西経済同友会の代表幹事経験者(OBのすべてが朝の会の主要メンバー)による代表幹事選考委員会が開かれた。事前の打ち合わせどおり、選考委員会は満場一致で2人の選任を可決する。1人は、過去に2回、代表幹事を経験した中司清。元鐘紡副社長で戦後分離独立した鐘淵化学(カネカ)社長。もう1人は、住友グループの新進気鋭、山本弘・住友信託銀行社長。何とも心憎い人事であり、その裏面では大商会頭と関経連会長の若返りに照準が定まっていた。時代はまさに激動のとき。5年後に開催される日本万国博覧会を日本国内はもとより、世界が注目する祭典と見ていた関西財界では、万博会長への大物招聘が優先順位の筆頭だった。

 イの一番に推挙されたのは、〝経営の神様〟松下幸之助。だが、松下は、「支援・協力はするが、その任にあらず」と、婉曲に断わりを入れた。2番手の候補だった住友銀行の堀田庄三も、日銀総裁のポストが念頭にあったために、会長就任を固辞。人選は難航する。

 ただし、水面下では秘かに1つの取引が進捗。堀田の副会長受諾を条件に、石坂泰三・経団連名誉会長を推挙。万国博担当大臣・三木武夫がそれを承諾し、意中の人・石坂を口説き落とすことになる。ところが、そんな中、関経連会長の阿部孝次郎が突如として万博会長問題の解決に立ち上がる。それは、彼と側近に、政財界の事情が知らされていなかったという悲喜劇だった。もちろん、上京して三木と会った阿部は瞬時に失意の人となり、結局、財界首脳の座、関経連会長を勇退する羽目に陥った。他方、同友会代表幹事に就任した中司と山本は昭和41年4月、関西5経済団体首脳に「お披露目の挨拶がしたい」と呼び掛け、大阪の料亭「なだ万」で一席を設ける。その客の中に、事前に趣旨を説明し、了解を取り付けていた相手がいた。

 大阪商工会議所専務理事の里井達三郎と久保田鉄工秘書の東田和四。ともに著名な〝訳知り〟であった。

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