文化・ライフ

闘莉王選手

日本代表への復帰が期待される闘莉王選手(写真/時事)

代表OBからもイチオシの声

 ブラジルW杯に臨むサッカー日本代表メンバーの発表を前に、ひとりの元代表選手に注目が集まっている。

 名古屋グランパスのDF田中マルクス闘莉王だ。

 イタリアで3つのビッグクラブ(ACミラン、インテル、ユベントス)を率いたアルベルト・ザッケローニが日本代表監督に就任して4年がたつが、闘莉王はまだ一度もザックジャパンでプレーしていない。

 実はザッケローニ、4年前の10月に行われた国際親善試合(対アルゼンチン、韓国)に闘莉王を招集したが、彼は右ヒザの故障を理由に途中離脱した。

 それ以来、指揮官は一度も闘莉王を呼んでいない。

 周知のように闘莉王は4年前の南アフリカW杯では最終ラインの統率者として、日本代表の決勝トーナメント進出に貢献した。

 彼のパフォーマンスは各方面から高い評価を受けた。

 イングランド・プレミアリーグの名門アーセナルのアーセン・ベンゲル監督は「日本代表の最高の武器だった」と絶賛し、闘莉王の祖国であるブラジルの民放テレビは「日本の守備の堅さの象徴だ」と称えた。

 今回、闘莉王待望論は代表OBからも上がっている。

 「世界の舞台を経験した選手を(メンバーに)入れておいたほうが計算が立つのではないか」

 そう語るのは1998年フランスW杯日本代表GKの小島伸幸だ。

 「彼はリーダーシップがとれる選手。W杯のような大きな大会ではGKが指示しようにも、大歓声でかき消されてしまうんです。そんな時、GKの代わりに声を掛け、守備の狙いをはっきりさせてくれる選手の存在はありがたい。

 加えて彼には攻撃力がある。日本のDFでは最も得点の期待できる選手でしょう。開催地がブラジルというのも、モチベーションを喚起するには十分な材料のはず」

 続いてフランスW杯、2002年日韓W杯にDFとして出場した秋田豊。彼はメディアでも再三再四、闘莉王の必要性を強調している。

 「パワープレーを仕掛けられた時、闘莉王ならラインコントロールしながら守り切ることができる。これは大きい」

 思い出すのが06年ドイツW杯の初戦、オーストラリア戦での逆転負けだ。

 前半を1対0と折り返した日本は、後半、オーストラリアのパワープレーの前に為す術がなかった。空中戦で圧倒され、終わってみれば1対3。まるで決壊する堤防を見ているようだった。

 ブラジルW杯で2戦目に対戦するギリシャは、フィジカルの強さを全面に押し出すかたちでパワープレーを仕掛けてくる可能性が高い。

 その際、ゴール前で体を張って用心棒の役割を果たせる屈強な選手が必要ではないか。小島も秋田も、その一番手に闘莉王を推す。

 

切羽詰まった時に必要なカード

 ザックジャパンの最終ラインが万全であるならば、闘莉王待望論が持ち上がることはあるまい。逆に言えば、闘莉王待望論は守りへの不安の裏返しでもある。

 ザックジャパンはW杯アジア予選こそ8試合5失点と堅守を誇ったものの、ブラジル、イタリア、メキシコの3カ国を相手にした昨年6月のコンフェデレーションズカップでは3試合9失点と、それこそボコボコにされた。

 直近の5試合でも9失点を喫するなど守備の不安定さは相変わらずだ。

 センターバックの今野泰幸は視野が広く、手堅いプレーを売り物にするが高さに不安を残す。もうひとりの吉田麻也はフィジカルの強さには定評があるものの、球際でのミスが目立つ。

 名古屋でユース時代の吉田を見ていた秋田は次のように指摘していた。

 「麻也はもっと自信を持ってプレーすべき。今は(ミスを)怖がるあまりに思い切ったプレーができていない」

 仮に闘莉王が代表メンバーに加われば、吉田もうかうかしてはいられない。吉田の尻を叩くためにも、闘莉王は必要なカードだと秋田は繰り返す。

 さて、代表メンバーの発表を前に当の本人は、今どんな心境か。

 あるテレビ番組で、闘莉王はこう語っていた。

 「W杯は1点とられたら2点取り返す(戦い)では、日本は通用しない」

 「南アフリカで、日本は何が良かったのか。それは失点しないことだった」

 「僕だけじゃない。中澤佑二、中村俊輔など、今の代表選手にはない経験を僕たちは持っている。切羽詰まった時、必ず日本の力になれると思っている」

 果たして闘莉王は故郷に錦を飾ることができるのか。すべてはイタリア人指揮官の判断に委ねられている。

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