政治・経済

シャープは2013年度の決算と中期経営計画の進捗を明らかにした。構造改革から再成長に向かうことを謳った中期計画の初年度としては、着実に回復が見て取れる結果となった。業績の回復を牽引したのは太陽電池と液晶だが、液晶が当面の成長の鍵を握っている。

髙橋興三

髙橋興三・シャープ社長

公表予想値を上回る業績を達成

 シャープの髙橋興三社長の就任1年目となった2013年度の決算はおおむね好業績で終わった。売上高、営業利益、純利益すべてにおいて、当初の公表予想値を上回った。特に利益については、営業利益、純利益ともに前年度から大幅に改善し、黒字転換を果たした。

 売り上げを牽引したのは、太陽電池、液晶、電子デバイスで、対前年比2桁以上の大幅な増収を達成した。太陽電池事業は、国内市場で住宅用、メガソーラーなどの産業用が伸長したほか、海外のディベロッパー事業が好調に推移した。液晶事業は、スマートフォン向けなど中小型液晶が伸長。特に中国のスマホ向け顧客の新規拡大を通じて顧客ベースを拡大し、当初の売り上げ目標を達成している。また、電子デバイスではモバイル機器向けカメラモジュールの販売が堅調に推移したという。

 財務体質の改善も進んでおり、棚卸資産の圧縮は、月商比で1・5カ月から1・21カ月と計画を上回る改善となった。有利子負債の圧縮も計画どおりに進み、12年度末をピークに縮小に転じている。また、営業キャッシュフローは大幅に改善し、13年度は3年ぶりの黒字となった。同社は今年9月に1千億円の社債償還を予定しているが、現預金やキャッシュフローの改善により、手元の資産で完済のめどが立っているという。

 シャープでは昨年、3カ年の中期経営計画を策定。13年度までを構造改革ステージ、14年度からを再成長ステージと位置付けている。再成長に向けた初年度の13年度を振り返り、髙橋社長は、「比較的順調な滑り出しだった」と語る。この勢いを緩めることなく、再成長ステージに向けた取り組みをさらに加速していく構えだが、その一方で次のように引き締める。

 「全体的な数字としては、売り上げ、営業利益、当期純利益などが公表数字に達したが、個々に見ていくといろいろなブレがある。例えばソーラー事業は非常に上振れをしているが、それも決してうまくいった結果ではない。ソーラー事業そのものは今年度の計画でマイナスを想定しているように、事業転換を図っている最中であり、まだ課題が残っていると考えている」

 単年度で良かったから良いとは言い切れない状況にあるという。市場環境の変化を想定し、14年度の業績目標値は中期経営計画に対して、売上高を1800億円増額する一方で、営業利益、当期純利益をそれぞれ100億円減額した。

 髙橋社長は、昨年の就任時に「シャープのけったいな文化を変える」と語った。市場や環境の変化が激しいだけに、変化に即応していける会社の体質にしていかなければいけないと考えている。

 

シャープ復活はやはりまずは液晶で

 シャープの再成長に向けて、当面の牽引役となるのは、やはり液晶だ。スマホやタブレットの市場拡大に伴い、高精細の中小型液晶への需要増大が、13年度の業績にも大きく寄与した。シャープとしては、亀山第2工場における中小型液晶の生産比率を拡大させる方針で、前年度の20%台から14年度上期中には50%以上に引き上げる。

 ただし、かつてのテレビ向け液晶パネルの市場飽和と価格下落が、シャープの低迷を招いたように、高精細の中小型液晶においても同様のリスクが懸念される。

 髙橋社長は、「当社はそのリスクを一番経験し、一番知っている会社だと思っている」と語る。それだけに同じ轍は踏まないように、高精細中小型液晶の展開においてもリスクの回避をする事業展開を進めている。

 その1つが、大口の重点顧客との関係強化により収益を安定化させること。中期経営計画では、13年度は売り上げの半分を9社の重点顧客で占める計画を立てていた。結果的には9社では売り上げの半分に満たなかったものの、中国の新興顧客を開拓し、重点顧客を15社に拡大、計画どおりの営業利益を達成した。14年度はさらに19社まで重点顧客を拡大し、この19社で売り上げの半数を占める計画。これにより、事業の規模拡大と安定を図る。

 また、中国の事業環境も当面は好転する見込みだ。髙橋社長は次のように語る。

 「当初考えていたよりもはるかに早く高精細に動いているという印象を持っている。その意味で、当初懸念していた価格低下は意外と起こってこない」

 いずれ価格低下は起きるだろうが、中小型液晶の数量が出る領域は後工程がネックになっており、当面は生産技術でコスト競争力を維持できるという。

 シャープは中小型液晶の新しいアプリケーションとして、車載機器向けの展開も進めている。しかし自動車向けは製品化されてビジネスに寄与するまでに時間を要する。また、中長期的な成長戦略としてヘルスケア・医療やロボティクスなどの新事業領域の製品開発を進めているが、これらの多くもBtoBの領域で、ビジネスになるまでは数年かかる。

 シャープの再成長は、新規事業の開拓までに高精細中小型液晶でどこまで稼げるかにかかっている。

(文=本誌/村田晋一郎)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る