政治・経済

イラスト/のり

イラスト/のり

二階俊博氏 予算委員長の立場を逆手に取って安倍官邸に圧力

 「間合いが抜群というか、ケンカ上手。とにかく駆け引きでは何枚も上」

 安倍首相側近の1人がそう話すのは二階俊博予算委員長。そして、警戒心をあらわにした。

 「官邸が今一番(動きに)神経をとがらせているのは野党でも何でもない。二階さんだ」

 二階は当選10回の重鎮。運輸相、経産相、自民党総務会長、国対委員長などを歴任してきたが、二階の厚みは、過去、新進党や保守党などにも籍を置いてきたこと。「逆にそれで根気や胆力を身に付け、結果的に与野党問わず幅広い人脈を築くことになった」(自民党幹部)のである。

 人脈は、野党では新進党以来の公明党との太いパイプ。このほか他党の落選議員や、かつて敵対していた議員らが路頭に迷うような状況になれば自らの二階派に受け入れ、「今の時代数少ない本当の親分肌」(前出・自民幹部)との評もある。

 そんな二階を、安倍政権はむしろ重用すればガバナンス上もメリットは大きいはずだが、それが逆に警戒とはなぜか。自民党の7役経験ベテラン議員はこう話す。

 「二階さんをはじめ党内のベテラン議員たちは、参院選で勝ってねじれを解消するまでは、多少の不満はあっても安倍さんに協力してきた。ところが、官邸が政策や人事を決めるいわゆる『政高党低』が相変わらず続いている。じゃあ与党とは何なのかと派閥領袖やベテラン議員などは我慢できないところまできた。そうしたマグマが集団的自衛権見直しなどを契機に、一気に安倍批判の声になって噴き出してきたということ」

 さらに二階の場合、どうしても譲れないのが外交路線だ。

 「二階さんは親中国派。中国や韓国など近隣諸国を大事にしながら経済交流を深め、相互発展していこうという考えだ。そこが安倍さんとは真っ向からぶつかる」(二階派中堅議員)

 こうしたことから、今後は二階が安倍首相の政策に対して度々変更を迫る可能性が高まってきたのである。

 では二階の「何枚も上」の駆け引きとはどんなものなのか。

 例えば、官邸は人事で二階を予算委員長に就けたが、これは実は動きを封じるためのポストだった。「国会のしかも委員長というのは中立でなければならず私情も挟めないから勝手な動きは許されない」(前出・首相周辺)からである。しかし、二階はこれを逆手に取る。

 「二階さんも最初は『今さら俺がなんで予算委員長なんだ』と周囲に怒っていたのに、いざ国会が始まったら予算審議などで安倍さんに意地悪をするどころか、逆に混乱させずにスピード通過させてしまった。つまり『安倍さんよ、与野党をしっかり押さえてちゃんと通したぞ。分かってるだろうな。こっちの言うことも少しは聞けよ』という力の誇示、無言のプレッシャーだ。表向きには安倍さんの国会運営に協力しながら、実は同時に安倍さんを脅す。正面から攻撃してくるよりもずっとすごみがあって、官邸が震え上がるのも分かる」(前出・元7役議員)

二階俊博氏を中心とした反安倍官邸への動き

 また、リベラル派の二階自身も反対の集団的自衛権の解釈改憲については、パイプがある公明党に水面下で接触し連携を図っているという。

 公明党幹部が言う。

 「二階さんは早い段階から、『自民党内でも反対は多い。こっちはこっちで動くから』と言ってくれていた。3月ごろからうちも代表や幹部が『見直しには慎重な議論を』と公言し始めたが、そのとき二階さんは、『いくらでも兵力を出す。遠慮なく言ってくれ』と。つまりうちが反対の声を上げたら同時に援護射撃の声を自民党内でも上げるという意味です。事実二階さんは親しいベテラン同士に持ち掛けて慎重論の声を盛り上げ、『公明党の立場を大事にすべき』とまで言ってくれた」

 むやみに正面切っての殴り合いはしない。間合いの取り方やケンカ上手、人脈をフルに使うといった二階の真骨頂が見え隠れする。ただ、二階にも最後の一線がある。例えば親中・親韓の外交政策は絶対に捨てられないし、集団的自衛権のむやみな行使にも反対だ。「安倍さんがこの2点で暴走するなら、そのときは反安倍ののろしを上げるだろう。党内の人脈は、青木幹雄元参院会長、古賀誠元幹事長、大島理森前副総裁、額賀福志郎元財務相ら。彼らと連携して反安倍の総裁候補を立てて戦うこともあり得る」(三役経験者)という。これに対して安倍側近の一部は、「支持率は高い。古い自民党と戦う形に仕立てて遠慮なく進めばいい」と話す。

 安倍VS二階。自民党の新たな権力闘争の構図がうごめきだした。 (敬称略)

政権交代請負人、小沢一郎が語る永田町の内幕

 

【永田町ウォッチング】記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

「PCのかかりつけ医」として100年企業への基盤構築を進める―黒木英隆(メディエイター社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

南谷真鈴

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年1月号
[特集] 新しい街は懐かしい
  • ・「街の記憶」で未来をリノベーション
  • ・日本橋が「空を取り戻す」水辺と路地がつながる街へ
  • ・水辺はエンタメの宝庫だ 大阪が目指す観光客1300万人
  • ・街の誇りを取り戻せ 名古屋・堀川復活プロジェクト
  • ・なぜ水辺に都市が栄えるのか
  • ・2020以降は海と川がさらに面白くなる
  • ・「住む」と「働く」両方できるが求められている(たまプラーザ)
  • ・「土徳」が育む一流の田舎(南砺市)
  • ・音楽ファンが集う街づくり
[Special Interview]

 辻 慎吾(森ビル社長)

 東京が世界で勝ち抜くために必要なこと

[NEWS REPORT]

◆飛びたくても飛べないスペースジェットの未来

◆エンタメが街を彩る 地方創生に挑むポニーキャニオン

◆問題噴出のコンビニをドラッグストアが抜き去る日

◆始まった自動車世界再編 日本メーカーはどう動く?

[特集2]

 経済界福岡支局開設35周年記念企画

 拓く!九州 財界トップが語る2030年のかたち

ページ上部へ戻る