政治・経済

「エルニーニョ現象:来月警戒 低温、長雨の恐れ 97年以来の規模か」

 南米ペルー沖の東太平洋の赤道域で海面の水温が高くなるエルニーニョ現象が、5年ぶりに6月に起きる可能性が高まっている。今回は観測史上最大だった1997年以来の本格的な規模になりそうだという。発生すれば日本は低温や長雨になりがちで、農業などへの影響が懸念される(中略)。統計が残る49年以降では、97年の発生で11月に過去最大の水温変化(3・6度)を記録。2002年と09年の発生は規模が小さかったが、気象庁異常気象分析検討会会長の木本昌秀・東京大教授は、これまでの観測から「今年は本格的な規模になりそうだ」と話す。(毎日新聞2014年5月10日付)

 

7〜9月期の家計消費と日照時間の関係

エルニーニョ発生と重なる景気後退局面

 気象庁が4月10日に発表した最新の「エルニーニョ監視速報」によると、エルニーニョ現象が夏に発生する可能性が高いと予測されており、市場関係者の間では景気への悪影響を懸念する声も聞こえ始めている。

 エルニーニョとは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1〜5度高くなる状況が、1年から1年半続く現象である。エルニーニョ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。

 最も被害が拡大したのは1993年夏から冬である。日本は39年ぶりの冷夏となり、大雨や日照不足もあって稲作を中心に農作物に被害が出た。気象庁の過去の事例からの分析では、エルニーニョの日本への影響として、気温は西日本を中心に平年より低い地域が目立つことや、降水量は平年より多い地域が多く、西日本の日本海側や東日本の太平洋側で顕著となることなどが指摘されている。

 実際、90年代以降はエルニーニョ発生期間と景気後退局面は実に51・7%もの確率で重なる。特に、91〜92年と93年のエルニーニョ現象は91年3月〜93年10月まで続いた景気後退局面に含まれる。また、97〜98年のエルニーニョは、ほとんどの月が97年6月〜99年1月まで続いた景気後退局面に含まれている。

 そして、93年の景気後退局面においては、景気動向指数の一致DIが改善したことを根拠に、政府は93年6月に景気底入れを宣言したが、円高やエルニーニョ現象が引き起こした長雨・冷夏等の悪影響により、景気底入れ宣言を取り下げざるを得なくなった。

 仮にエルニーニョ現象により夏場の天候が不順となれば、日本経済に悪影響が及ぶことは否定できない。事実、近年で最も日照不足の悪影響が大きかった93年と2003年の7〜9月期前年比の平均値を基に、日照不足が品目別に及ぼす影響を確認すると、消費支出全体では前年比マイナスとなっており、消費全体には悪影響を及ぼしている。

 特に足を引っ張っているのは、季節性の高い「被服および履物」、交際費などが含まれる「諸雑費」、夏の行楽等を含む「教養娯楽」、ビールや清涼飲料の売り上げの影響を受ける「食料」、冷房の使用減等の影響を受ける「光熱・水道」となっている。

 そして、国民経済計算を用いて7〜9月期の実質家計消費の前年比と東京・大阪平均の日照時間の前年差の関係を見ると、7〜9月期の日照時間が▲(マイナス)10%減少すると、同時期の家計消費支出が▲0・45%程度押し下げられる関係がある。

 この関係を用いて今年7〜9月期の日照時間が93年および2003年と同程度となった場合の影響を試算すれば、日照時間が前年比でそれぞれ▲51・3%、▲30・3%減少し、この時期の家計消費はそれぞれ前年に比べて▲1兆4812億円(▲2・3%)、▲8754億円(▲1・3%)程度押し下げられる。

 

冷夏で年間成長率が2%を下回る可能性も

 エルニーニョが発生したからといって必ず冷夏になるわけではない。しかし、エルニーニョによる天候不順のインパクトが現実のものとなれば、政府が今年12月に最終判断するとされている来年10月の消費税率引き上げの判断に大きく影響を及ぼすかもしれない。と言うのも、判断の際に最も重視される経済指標が、今年12月に公表される7〜9月期のGDP2次速報値とされているためである。このため、本来年率換算で2%を上回るはずだった経済成長率が、エルニーニョによる天候不順に伴い年率換算で2%を下回ることも想定される。

 足元の個人消費に関しては、消費増税に伴う駆け込み需要の反動により落ち込んでいるが、夏場にかけて回復するとみられている。しかし、今後の個人消費の動向を見通す上では、エルニーニョによる天候不順といったリスク要因が潜んでいることには注意が必要である。

 

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