テクノロジー

 前回は、電力自由化を契機に欧州全域を席巻したドイツの電力メジャーが、ここ数年の再エネの拡大に伴い苦境に陥り、事業モデルの転換を迫られている現状を紹介した。大型火力発電所や原子力発電などベース電源は、1990年代末から始まった自由化により創設された電力卸売市場で大きな利幅を稼ぎ出し、また、参入障壁も高いため、4社に収斂したドイツの電力会社の事業モデルのコアを成していた。

 しかし、固定価格買取制度で急拡大した再エネにより需給が緩み卸売市場価格が低下、特に昼間の需給逼迫時に発電する太陽光発電の拡大が想定以上の打撃を4大電力のベース電源に与えた。今回は、電気事業法改正により電力システム改革が推し進められ、エネルギー基本計画により、原発の再稼働と再エネの拡大が方向づけられた日本において、どのようなシナリオが想定されるか考えたい。

 

(1)競争が起きない「形式的自由化シナリオ」

 日本でも、2000年から一部大規模な需要家は既に電力会社を選ぶことができるようになり、その範囲も拡大してきた。しかし、既存の電力会社間で起きた顧客の奪い合いは1件にとどまり、新電力のプレゼンスは原発事故後上がっているとはいえ、シェアはせいぜい数%だ。制度の問題や電力会社間の協調的な行動もあるが、本質的にはどの電力会社もコスト競争力に大した違いはなかったことからである。また、新電力もその発電所はLNG火力などミドル電源と呼ばれるものがほとんどで、原発や石炭火力などベース電源を有するのは電力会社だけであり、新電力が競争力を発揮し得るのはオフィスビルなど1日の需要が大きく変動する顧客に対してだけだ。日本でも16年には一般家庭まで小売自由化範囲は拡大するが、それだけでは競争は起きないだろう。

 

(2)不均衡な原発再稼働による「電力会社間競争シナリオ」

 しかし、原発再稼働が電力会社間で不均一に起きれば、競争環境の要因の1つは整う。また、電力システム改革により送配電中立化が推し進められつつあり、多くの原発が再稼働した電力会社や元からその依存度が低い電力会社などコスト競争力と供給力を回復した電力会社が現れれば、電力が高く取引される地域に、安価に供給できる電力会社から電気が流れるのは当然の帰結である。先般閣議決定されたエネルギー基本政策においては安全が確認された原発は順次再稼働をしていくとされ、一部既に再稼働の見通しがたった原発もある。しかし、活断層問題などはさておき、事故後に原子力規制委員会が設定した新安全基準は40年原則廃炉を打ち出しており、また地元の同意が得られそうにない原発も加えると、その再稼働は一部に限られ、電力会社により大きくばらつくことが予想される。現在の流れでは、このシナリオの蓋然性が最も高いと考える。

 しかし、競争の主役はやはり電力会社であろう。と言うのは、ドイツの自由化に見られるよう、原発や石炭火力等ベース電源は日本でも参入障壁は当然高く、政府が新規参入業者の増大も目的の1つとして推し進めている電力取引市場の活性化も有効ではなく、原発再稼働が十分でなく引き続き供給力が十分回復しないこのシナリオでは、高止まりが想定される。現在、電力事業への参入を表明している企業は多いが、単に電力取引市場から調達した電気を小売りしようとする新規参入者は本格的なコスト競争力を持ち得ないだろう。

 

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