マネジメント

別会社を多数つくって銀行融資を受けやすくしようとした経営者

 以前お会いした社長は建設業を営み、年商は2億円。一般的な中小企業と思いきや、グループ会社が10社もあり、その10社で2億円の売り上げをつくっていたのです。

 なぜそんなに多くの会社をつくったのか--。そう社長に聞けば、「会社をたくさんつくれば、それだけ多くの融資を受けられると知り合いから教えてもらった」とのこと。これは、小手先のテクニックに走ってしまった典型例と言えるでしょう。

 銀行が融資に慎重になる企業タイプに、関係会社を持つ企業があります。関係会社と本体の会社は「実質同一体」と見なされ、融資審査も同じ1つの会社として行われます。そして関係会社の存在で、全体の実態がとらえにくくなると、融資審査もより慎重になるのです。

銀行が融資を嫌う関係会社のタイプとは

 企業グループの在り方には、いくつかのタイプがあります。そのタイプを大きく類別すると次の3つに分かれます。

(1)事業主体と不動産管理から成るタイプ

 例:不動産管理会社が本社・工場などの不動産を所有。事業主体に賃貸している

(2)関係会社間での取引がほとんどないタイプ

 例:本社と関係会社がともに事業会社で、それぞれ別事業を独立採算で行っているため、2つの会社に分けられている

(3)関係会社間で取引が多くあるタイプ

 例1:本社Aが関係会社Bに対し売り上げを計上。AがBに対して売掛金を保有

 例2:本社Aが関係会社Bに対して多くの貸付金がある

 

 これらのタイプの中で、「(1)」は、銀行からあまり嫌がられません。事業主体の財務状況だけで融資判断が下せるからです。しかも、不動産が別会社所有となるため、事業会社の有形固定資産が少なくなり結果、事業会社に対する銀行の信用格付もアップします。

 同様に、「(2)」のタイプも嫌がられません。本社と関連会社の資産・負債が明確に分かれており、各社の財務状況で融資判断が下せるからです。

 しかし、「(3)」のタイプは、銀行から嫌われます。なぜならば、関係会社間の関係が複雑で、全体の実態が見えにくいからです。例えば、本社Aの年間売り上げが8億円あり、そのうち関係B社に対する売り上げが6億円だとします。そして、B社は10億円の売り上げがあり、それはすべて外向けのものだとしましょう。

 A社とB社の売り上げ合計は18億円ですが、そのうち内部的な売り上げは6億円であるため、A社とB社を1つの事業体として見ると、売り上げは12億円となります。

 ところが、A社とB社に別々に融資を申し込まれると、A社は売り上げ8億円の会社、B社は売り上げ10億円の会社として融資審査を行うことになり、銀行はこのような融資審査の「ゆがみ」を嫌うのです。

銀行から融資を受けやすくするために

 もし、「(3)」タイプの企業グループが、銀行からの融資を受けやすくするには、「連結決算書を作成すること」と、「会社間の関係を薄くすること」、そして、「可能なかぎり関係会社の数を少なくしていくこと」の3点が重要です。それぞれの施策について少し説明を加えましょう。

(1)連結決算書を作成する

 連結決算書を、顧問の税理士に作成させ、銀行に提出します。これで、銀行によるグループ全体の実態把握と融資審査がスムーズになります。

(2)会社間の関係を薄くする

 企業間関係の複雑性を生む主たる要素は、「出資」、「金銭の貸借」、「商品の売買」の3つです。

 これらの関係について、相関図などを作って銀行に説明すれば、一定の理解は得られるかもしれません。

 ですが、何よりも大切なのは、会社間における、これらの関係を可能な限り解消していくことです。

(3)関係会社の数を減らす

 関係会社の数は少ないほうが、銀行からの融資は受けやすくなります。

 ですから、既にたくさんの関係会社があるならば、会社として独立させておく意味がないと思われるところから減らしていき、その会社に勤めている役員・従業員は、本体に移すようにしてください。

事業体構造がシンプルな方が、銀行からの融資は受けやすくなる

 私はよく、「会社を多くつくると、銀行からの融資を増やせますか」といった種の質問を受けます。ですが、これまで見てきたとおり、会社をたくさんつくったところで、意味はなく、逆に、事業構造が複雑になる分、銀行の心証は悪くなります。会社をたくさんつくろうとは思わず、事業体はシンプルな構造にしておくことが肝心なのです。

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