政治・経済

「あかんなぁ」。日本の農水産物の輸出を今後どう伸ばせばよいのか。その秘策を村田氏に尋ねると、まず帰ってきた答えが冒頭の言葉。日本食を世界に広めることをライフワークとし、和食の無形文化遺産登録の立役者であるがゆえに、愛情深い視点から見えてくる日本の食の現状は、課題も多いようだ。

 売りたいのなら、相手の土俵に上がれ

 日本に住んどると、ほとんどの人が髪も黒いし、目の色も同じでしょ。赤といえばみな同じ赤を思い浮かべるし、音にしてもみんな同じ音が聞こえていると思うてる。もちろん、おいしい味も、みな同じく感じているはず。僕は若いころにフランスに行ってたけど、彼らは違う。僕らが思うてる赤と彼らが思うてる赤も、ほんまは違うやろうな。

 例えば、ヨーロッパの人は鼻も鼻孔も大きい。寒い地域だから氷点下の空気を一度そこに入れて温めてから肺に入れる。つまり、臭覚が発達している。逆に味覚は日本人のほうが発達していると思う。

 そやから、日本の農水産物をプレゼンする時も、日本人にプレゼンするのと同じようにしてはダメだということです。

 日本酒も、「評価されてる」という割には売れてない。試飲会を行ってもお酒を並べて、どうぞ試飲してくれと言うだけ。説明も、「香りは豊潤で、飲み口スッキリ」。そんな言葉じゃ、現地の言葉に訳しても彼らには伝わらへん。

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村田吉弘(むらた・よしひろ)
1951年京都・祇園の老舗料亭「菊乃井」の長男として生まれる。立命館大学在学中、フランス料理修行のため渡仏。大学卒業後、料亭「加茂免」で修行を積む。93年菊乃井代表取締役就任。2013年の和食の無形文化遺産登録に尽力、「食育」なども積極的に行っている。

 彼らは、素養としてワインの知識があるんです。腐葉土の香りはこの香り、ナッツの香りと言えばこの香りと、教育として受けているわけですよ。教育のベースにそれがあるから、まず、香ってくださいというと「白い花の香りですね」とか「いや、オレンジかな」という話になる。その後、「口に含んでください」となるわけですよ。こんな風に、ちゃんと彼らに分かるように、彼らの言語で説明できる人がいてないわけです。

 日本では、〝日本酒対ワイン〟の構図になっているけど、そんなことを思うてんのも日本人だけ。向こうにしてみれば、「極東で米を2次発酵させた白ワインをつくってるよ」くらいなもんですよ。山廃やら大吟醸なんて、日本人だってよう分からんもんをいかに説明するのか。

 そやから、今度、安倍首相が名誉会長の日本食文化普及推進議員連盟ができたんです。そこに、国際ソムリエ協会会長の田崎真也さんと日本ソムリエ協会会長の岡昌治さんを呼んで、向こうのワインを売っていく戦略について話してもらう。

 それが、日本酒を売っていく戦略の参考になると思うてます。シャルドネと同じ温度で、同じグラスで飲んでもらう。徳利やお猪口を買わなくてもすむ。だったら、ソムリエは経営者に対して、「試してみますか」と言いやすいでしょ。戦略が決まってないのは、闇夜で真剣振り回したりするようなもんです。危のうてしゃあない。

 

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