政治・経済

2009年の民主党による政権交代後、党と内閣の要職を務め、常に「民主党の顔」としてメディアに頻繁に登場した細野豪志氏。野党転落後も党再生に腐心してきた細野氏に徳川宗家19代の政治評論家、徳川家広氏が鋭く迫る。

 一昨年暮れの総選挙での大敗以来、民主党が政治の世界で話題になることは、めっきり少なくなった。最近で言えば、日本維新の会と結いの党の合併で、民主党が野党第一党の座から転落という、情けないニュースくらいだろうか。そんな落日の「元・与党」に希望を抱かせてくれるのが細野豪志だ。テレビ映えするルックス、高い政策理解力、そして仲間割ればかりしていた民主党において「中道」を貫いて来た政治的センス。2009年には中堅だった細野だが、今では閣僚も経験し、新たにグループも立ち上げた。果たして野党大反攻の要となるのか?

 

細野豪志

細野豪志(ほその・ごうし)
1971年京都府生まれ滋賀県育ち。京都大学卒業後、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て2000年衆議院議員初当選。現在5期目。民主党政調会長、幹事長、総理大臣補佐官、環境大臣、内閣府特命大臣(原子力行政・防災担当)を歴任。著書に『パラシューター』『未来への責任』など。

民主党政権3年間、政権中枢にいた細野豪志氏の総括とは

徳川 民主党政権は、期待外れに終わったと思います。民主党の3年間、政権中枢にずっとおられて、どう総括されますか?

細野 一番の失敗は外交だったと思います。特に決定的だったのは普天間です。理想を掲げるのは決して悪いことではないんですが、理想の実現に必要な現実的なステップを踏めずに、大失態を演じた。このことが、鳩山政権崩壊の最大の理由です。その後いろいろなことがありましたが、それらは普天間の失敗の派生物だったと思います。

徳川 リーマンショックが起きてから経済がどんどん悪くなっていたので、民主党政権の誕生が確実なのは、かなり前からはっきりしていました。政権獲得前に、政策の擦り合わせをしていなかったのでしょうか。

細野 2009年のマニフェストを作った時に、私は政調の筆頭副会長で、マニフェスト作成の実務を担当していました。もちろん、大きなところは党代表や政調会長がかかわるんですが、安全保障のところを私が書くことになりました。今でも覚えているのは、その時「米軍再編については見直しの方向で臨む」と書いたことです。「方向」という言葉と「臨む」という言葉と、2つのリスクヘッジをかけたんですね。現実には簡単でないことが分かっていました。ただ、それを鳩山代表に直接に確認できるほど近い関係ではなかったので、幹部レベルの確認で「これでいいですね」ということでスタートしたんです。直接確認しておけば、県外はともかくとして、国外移転なんて発言は飛び出さなかったと思います。

徳川 経済政策についての功罪は、いかがでしょう。

細野 民主党の再分配における最大の成果は、子育てにお金を掛けるようにしたことでした。子ども手当てというやり方が良かったかどうかは意見が分かれますが、社会保障と言えば医療、介護、年金という3支出が圧倒的だったところへ子育てを加えたこと自体は悪くなかった。民主党の議員の中でも、そこに異論のある人は、あまりいませんでしたね。それに加えて、どうやって成長を促していくかということが必要だったんですが、そこが中途半端に終わってしまった。ですから、これからの民主党ということで言うならば、規制緩和も含めた経済政策をどう打ち出せるか、それから安全保障の政策をどう現実的に立て直せるか。この2つが鍵になります。

徳川 細野さんは日米が最重要だとおっしゃりつつ、最近では民主党の訪中団にも加わっています。米中それぞれが多大な難題を抱える中で、日本の安全保障のあるべき軸というのは、どういうものなのでしょうか。

細野 民主党のアジア外交の最大の失敗は、「アメリカかアジアか」という選択を提唱してしまったことですね。日米同盟は外交の基軸なわけだから、これを揺るがないものにした上でのアジアだったんですが、「アメリカよりも中国」ととられる場面もあって、これは間違いでした。では日米同盟をどうするか。やはり日本がきちっとやるべきことをやるということは重要だと思います。原発事故を経験して、私も日米関係の最前線で働くことになりましたが、アメリカから来ていた最も明確なメッセージは「原発事故のようなシビアな事態に対して、自衛隊がきちっと行動しなければ、米軍はサポートしない」というものだったんです。逆に言えば、日本がきちっと自らの責任を果たした場合には、アメリカは同盟国としてそれを全面的にサポートする。これが日米同盟ですよね。中国に関しては、好むと好まざるとにかかわらず、お隣りさんですから、付き合っていかざるを得ない。私が年に少なくとも1回は中国に行くようにしているのは、きちんと対話ができるチャンネルを作っていかなくてはならないと考えているからです。

 

徳川家広

徳川家広・政治経済評論家

徳川 日米同盟の深化と中国へのコミットは両立可能なのでしょうか。

細野 両立させなければならないですよ。

徳川 中国が日本を恐れるべき理由はたくさんあります。日本としては中国を恐れて自衛隊の主体性を強くしましょう、日米同盟を強化しましょうと頑張るわけですが、中国はそれを見て警戒するわけです。この点については、どうお考えでしょう。

細野 中国側が日本をどう見ているのか、先方へ行って直接話を聞くと、いろいろと聞こえてきます。経済成長も治安問題も民族問題も、中国の脆弱性は日本にとっても難題です。だから中国側の事情を、われわれもしっかり見ておかなくてはならない。日中は運命を共有していると見たほうがよいと思います。

 

対談の様子

細野豪志氏が立ち上げた新グループでやりたいこととは

徳川 私は景気の悪化も、政権交代もかなり早いと見ております。そこまで行かずとも、政局は間違いなく流動化するでしょう。そうした中で、細野さんは新グループを立ち上げられました。

細野 ひとつは民主党の政策全体を方向転換したい。グループの中でしっかりした議論を重ねて、それを踏み石に、党全体の方向としていきたいと考えています。具体的な政策で言いますと、ひとつは最初に話の出た安全保障で、もうひとつは経済に強い党にしたいということです。規制緩和もそうですし、企業の負担軽減も重要です。私は法人税減税よりも、社会保障負担のほうが問題だと考えています。

 もうひとつは、民主党のガバナンスの問題です。非常に自由闊達に議論する、フラットな組織を作ってきたわけですが、これは組織を運営するという上では良くなかった。結局、それぞれが自由に議論をして、困難な問題に直面した場合には、エネルギー政策でも消費税でも、「私の勝手でしょう」とばかりに行動してしまって失敗したわけです。それで私自身ができるところからやっていこうと。

徳川 新グループ「自誓会」に集まった議員の皆さんは、その認識を共有していますか。

細野 その議論は、随分しました。政策については徹底的に議論して、人間関係も強化して、落選者の支援も含めて財政的にも支え合うと誓い合いました。

細野豪志徳川 ただ、民主党は現状ではあまりに数が少ない。選挙で勝てそうな勢いがないと、有権者は投票しないと思うのですが。

細野 理念なき政界再編みたいなものに、国民が冷ややかであるのも事実なんです。そこで最優先されるのは、民主党をしっかり立て直すこと。それをやった後で現実に選挙で勝っていかなくてはならないわけですし、考え方の同じ人とは一緒にやれるわけですから、そこはさまざまな可能性を探るべきだと思います。共生、未来の責任を果たす、国の借金を残さない、エネルギー問題について明確な方向性を打ち出すといったものですね。私はこうした民主党の理念を、とにかく大事にしたい。私は今の民主党の最大の財産は、落選者も含めて、人材だと考えています。守るべき理念があるということを示す上で、それは不可欠です。それをやった上で、志を同じくする人材を積極的に結集していきたいです。

徳川 細野さんは民主党の系譜では前原誠司さん、野田佳彦さんといった保守の系譜と、小沢一郎さんのリベラルな系譜の両方から信頼されていたと見ています。その小沢さんが民主党から追い出されてしまった。生活の党は民主党との関係をどうするべきなのでしょうか。反政府票、弱者票を集めるのに最も手っ取り早いのは、私は小沢さんと組むことだと思います。

細野 小沢さんの問題というのは、消費税ではなくて例の刑事事件への対応だったと思うんです。民主党が本当の人権政党であれば、あの時しっかり仲間として守るべきでした。ただ、時計の針は戻らないので、簡単なことではない。大事なのは、生活の党に限らず、私たちの理念に共鳴して集まる人に対して門戸をどんどん開くということです。

細野豪志徳川 安倍政権は憲法問題についても、かなり強引だと思います。それに対して民主党が効果的に対応できないのは問題なのでは。

細野 今の日本の民主主義は、かなり危機的な状況にあると見ています。こういう時だからこそ野党は「これはおかしい」という時には声を大にして言わなければならない。年が明けてアメリカへ、3月には中国へ行きましたが、世界から見た時に今の日本の状況は実は首を傾げるような状況になっていると思うんです。そもそも先進国の中でこれだけ圧倒的多数の政権党は、ありません。靖国参拝も国内では理解を得られても、国際的にはほとんど理解されていません。世界から見て健全な民主主義が日本に機能していると見せることは、国益上も大事だと思います。われわれも政権を失ってから1年半が経過していますから、もはや敗戦を引きずっている場合ではない。もう1回立ち上がるべき状況が来ていると思います。

(文=徳川家広 写真=葛西 龍)

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