政治・経済

ソニーが苦境に喘いでいる。平井一夫社長が2012年の就任時に掲げた再生への公約は未達に終わり、他社が黒字転換を果たす中、損失を計上し「独り負け」の状態にある。平井社長は14年度を構造改革の年と位置付け、今一度再生を目指す。

平井一夫

平井一夫・ソニー社長

ソニーらしい製品があっても事業全体では赤字

 ソニーは5月の2013年度の決算説明会の直前に3度目となる業績見通しの下方修正を行った。2月に事業売却を発表したPCの販売が想定を下回ったことが大きく、2月時点の見通しから売上高は700億円増加したものの、営業利益は540億円減少し、純損失は200億円赤字幅が拡大する結果となった。

 下方修正を3度も行うこと自体、尋常ではないが、修正した結果の純損失1300億円は、他の業界と比べても突出しており、「ソニー独り負け」と言える事態を露わにした。

 その後の決算発表では、平井一夫社長が12年の就任時に掲げた公約である「13年度のテレビ事業黒字化」は達成できず、「14年度の売上高8兆5千億円、営業利益率5%以上」は事実上撤回する形となった。さらにこの公約未達の発表の場に平井社長がいなかったことも、ソニーの状況の苦しさを物語る結果となった。

 しかも、14年度の業績見通しとして500億円の損失を発表。「エレクトロニクスの再生」を掲げて華々しく就任した平井社長だが、再生どころか赤字を払拭できない状況にある。

 決算発表の1週間後、ソニーは平井社長が登壇する経営説明会を開催した。目標未達に対する謝罪と共に平井社長が語ったのは構造改革への意気込みと自社技術・製品のアピールだった。

 ソニーは日本の他の電機メーカーと比べて、エンタテインメント事業や金融事業への業容転換を早くから進めてきた。

 平井社長は次のように語る。

 「本業のエレキとよく言われるが、エンタテインメントや金融もソニーにとっては本業だ」

 エンタテインメント事業も金融事業も二十数年の歴史があり、両事業がソニーの全体の収益を支えていることを考えると、確かにソニーの本業と言える。しかもエンタテインメントも金融も非常に好調だ。その好調な事業をもってしても支えきれないのが今のソニーのエレクトロニクス事業ということになる。

 ソニーのエレクトロニクス事業がすべて駄目かと言うと、決してそんなことはない。かつての「ウォークマン」や「Play Station」のように市場を新たに創造する製品はないものの、平井社長の就任以降、市場で高い競争力を有する及第点レベルの製品の市場投入は進んでいる。平井社長が掲げる「One Sony」の象徴的製品であるスマートフォン「Xperia Z」シリーズ、新型ゲーム機「PlayStation4」、4K液晶テレビ「BRAVIA」などは、ソニーらしい製品であり、高いシェアを獲得している。

 しかし「競争力のある商品で稼いだ収益を赤字事業が打ち消している」(平井社長)。それだけ赤字分野の事業構造の問題が深刻ということだ。

ソニーの構造改革と成長戦略

 構造改革がソニーの当面の最重要課題となる。ソニーでも平井社長の就任以降、構造改革を進めてきたが、「構造改革のスピードが市場の変化よりも遅かった」ため、現在のような状況を招いたと平井社長は認識している。

 他の電機メーカーとの比較で言えば、ソニーと同じ弱電メーカーであるパナソニックとシャープが大幅な純損失を計上した12年度、ソニーは黒字転換を果たした。しかし、この時の黒字はエンタテインメント事業や金融分野の増収によるところが大きかった。結果的にはこの段階での黒字化により、エレクトロニクスの構造改革が遅れたという見方もできる。

 そのため、平井社長は「14年度は構造改革をやりきる年」と位置付けている。年度初めの経営説明会と言えば、通常は中期経営計画の概要を明らかにするものだが、今回は中長期的な展望はほとんど示されなかった。今年度に進める構造改革を完遂した上で、その成果を基に中期計画を策定するとした。ソニーにとって今年度の構造改革は必ず果たすべき目標となった。

 構造改革費用として、13年度と14年度で3千億円を計上。具体的には2月に発表したPC事業の収束と、テレビ事業の分社化を進める。PC事業は日本産業パートナーズ傘下の新会社「VAIO」に譲渡。テレビ事業については7月1日をめどに新会社「ソニービジュアルプロダクツ」を発足させ、収益性の高い事業体制を構築する。

 エレクトロニクス事業全体では、本社間接部門で約30%の費用削減、販売会社で約20%の費用削減を行う。これにより、15年度以降に年間1千億円以上のコスト削減効果を見込み、15年度に4千億円規模の営業利益を目指せるという。また、分社化するテレビ事業では、経営スピードの向上や商品力の強化、コスト構造改善により、14年度の黒字化を目指すという。

 平井社長は、目標が未達だった場合の経営責任について問われると、「構造改革をやりきって、来年度以降、成長戦略にもっていけるようにすることが期待に応える方法だ」と語った。

 構造改革への意気込みは伝わってくるが、1千億円以上のコスト削減効果の見通しは今一つはっきりしない。PC事業とテレビ事業を中心とした改革だけで事態が好転するかも疑問だ。ソニー低迷の根はさらに深いのではないだろうか。

(文=本誌/村田晋一郎)

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