政治・経済

好況・不況どちらになるにしろ、あらゆる事態を想定しなければならないのが企業である。その意味で、事業再構築は不可避のテーマだ。最近、特に注目される事例として、イオンと太平洋クラブのケースをピックアップしてみよう。

イオンの岡田元也社長(右)

悲願の首都圏攻略へ一石を投じることになったイオンの岡田元也社長(右)(Photo:時事)

注目のM&A① スケールメリット追求の印象が拭えないイオン

 5月19日、大手食品スーパーのマルエツと茨城を地盤とするカスミおよびマックスバリュ関東の経営統合が発表された。3社は年内にも共同持ち株会社を設立、この株の過半数をイオンと丸紅が設立する特定持ち株会社が保有し、来年3月に東京証券取引所に上場するという。

 前述3社は、いずれもイオンが大株主として君臨してきた企業だけに、今回の経営統合は言わば既定路線。遅きに失した感すらある。

 言うまでもないが、近年、首都圏は少子高齢化の中にあっても人口流入が顕著となっている肥沃なマーケット。国内消費市場のシュリンクが避けられない状況下で、唯一残された成長マーケットだけに、小売り各社は首都圏の店舗網強化が至上命題。

 小売り大手とはいえ、イオンの店舗網は郊外店が多く、肝心の首都圏攻略という点では、ライバルのセブン&アイHDに大きく後れを取っていた。

 対策として、首都圏を地盤とするいなげやなどに触手を伸ばしたものの、多くはイオンに飲み込まれるという危機感から前向きな返答は得られてこなかった。セブン&アイの独壇場に指をくわえて見ているわけにもいかないイオンは、近年、対抗策としてミニスーパー「まいばすけっと」を驚異的な勢いで出店させてきた。

 「まいばすけっと」は、小家族化や買い物弱者の支持を受け、業容を拡大してきたが、ミニスーパーだけに十分な品揃えが実現できないことが足かせとなり、売り上げは頭打ち。この3社の経営統合はイオンにとって悲願だった「首都圏食品スーパー連合」の実現となる。

 会見でイオンの岡田元也社長は統合の意義をあれこれ述べていたようだが、結局のところはイオンの大好きなスケールメリットの追求に集約される。

 「スケールメリットによる価格訴求は小売業にとって重要なファクターですが、現在の消費動向を見ると、低価格だけが〝売れる商品〟の絶対条件とは言えません。特に高年齢層になればなるほど、価格は高くても高品質・高付加価値商品を求める傾向が強くなっています」(業界関係者)

 確かに最近のヒット商品を見ると、その傾向が顕著と言えるのではないか。

 象徴的なのが、セブン&アイHDが販売している「金の食パン」。原材料と製法にとことんこだわったことで、通常の食パンより高額に設定されたが大ヒット商品に成長した。

 さらに同社では、ヒットにおごらず、その後も品質改良を常に実施、消費者を飽きさせない努力を続けている。スケールメリットの追求とは、真逆な施策で成功を収めている例である。

 イオンも注力するPB「トップバリュ」に高付加価値ラインを加えるなど、最近の消費志向への対応を怠っているわけではない。しかし、どうしてもイオンイコール、スケールメリットという図式が頭から離れないのはなぜだろう。

注目のM&A②ゴルフ場の成長モデルを模索するも太平洋クラブの前途は多難

 5月20日、一昨年、経営破綻したゴルフ場運営会社太平洋クラブのスポンサーになったパチンコホール運営大手のマルハンによる今後の事業戦略が発表された。

 同社が掲げた成長戦略はズバリ〝ブランド価値の向上〟だ。同クラブと言えば、1枚のメンバーズカードで全17コースのプレー可能という共通会員制を敷くが、すべてが一流コースとは言いがたい。

 そこで、新生・太平洋クラブでは、コースおよび施設に4年間で43億円を投じ設備面の強化を図るとともに人材面でのサービス向上に努めるという。

 特に傘下17コースのうち、埼玉県の江南コース、兵庫県の六甲コースを三井住友VISA太平洋マスターズの開催コースとして知られる御殿場コースに比肩するブランドに早急に育てたい意向だ。現在停止している名義変更手続きも7月から再開、2015年中には、新規会員権販売を開始する計画もある。

 太平洋クラブの社長に就任した韓俊氏は、「レシプロ(相互利用)契約を提携した香港の『ザ クリアウォーターベイ ゴルフ&カントリークラブ』を皮切りに、今後は各国の名コースとも同様な契約を結び会員価値の向上に努める」と語った。

 資金力のあるスポンサーを獲得した太平洋クラブであるが、前途洋々とは必ずしも言えない。国内のゴルフ人口は減少基調で、客単価の下落にも歯止めがかかっていないからだ。

 「ゴルフ場は1日の来場者数の限界があるため年間売り上げの上限が、ほぼ決まっている。バブル時のように会員権を刷れば儲かるというものではありません。一方で、会員を優先すると土日にドル箱でもあるビジターの減少による収入減が避けられません。新規で会員権を販売するそうですが、会員権相場の地合いは決していいとは言えません。いかに利益を出していくのか注目したい」(ゴルフ場経営者)との厳しい見方もある。

(文=本誌/大和賢治)

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