文化・ライフ

村井満チェアマン

村井満チェアマンの手腕に期待がかかる(写真:時事)

Jリーグ国際化に向け大きな歩み―マンCの親会社がマリノスに出資

 米国の経済誌『フォーブス』によれば、今季のイングランド・プレミアリーグ王者のマンチェスター・シティの資産価値は8億6300万ドル(約878億円)。これは世界のサッカークラブで7番目にあたる。

 ちなみに1位は5月24日(現地時間)のUEFAチャンピオンズリーグ決勝を制し、10度目の優勝を果たしたレアル・マドリード(スペイン)の34億4千万ドル(約3498億円)である。以下、バルセロナ(スペイン)の32億ドル(約3254億円)、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)の28億1千万ドル(約2858億円)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)の18億5千万ドル(約1881億円)、アーセナル(イングランド)の13億3千万ドル(約1352億円)、チェルシー(イングランド)8億6800万ドル(約883億円)と続く。

 マンチェスター・シティを傘下に持つシティ・フットボール・グループ(CFG)がJリーグ・ディビジョン1の横浜F・マリノスに出資することが明らかになった。出資比率は19・95%。外国の企業がこれだけの株式を取得するのは、Jリーグが創設されて以来、初めてのことである。

 これを受け、F・マリノスの親会社・日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼最高責任者(CEO)はこう語った。

 「CFGのグローバルなサッカーインフラが横浜F・マリノスに機会をもたらし、ファンをワクワクさせると考えています。今回のパートナーシップは、横浜F・マリノス、そのホームタウン、さらに日本のサッカーの成長に貢献するものとなるでしょう」

 一方、CFGのフェラン・ソリアーノCEOは以下のコメントを発表した。

 「私たちは、サッカー、マーケティング、メディアおよびビジネスの発展について、シティファミリーのすべてのクラブにおいて、共同で総合的なアプローチを提供することに誇りを思っています。今回の協力関係が始まることを非常に楽しみにしています」

 今年1月にJリーグチェアマンに就任した村井満は、この事案を発表の数日前に知った。株式の移動はリーグの承認事項だからである。

 「非常に大きなメリットがあると思いますね」と前置きして、村井は語る。

 「CFGは全世界にスカウト網を持っているので、世界中からタレントを発掘することができる。それから育成システムやメディカルの部分。例えば選手のスポーツトレーニングもサイエンスに近い領域で非常に高いノウハウを持っています。マーケティングもそうです。いわゆるクラブマネジメントの領域でいうと、Jリーグがまだまだ獲得できていないノウハウを、この交流で交換できると思います」

 早いものでJリーグチェアマンも村井で5代目である。初代チェアマン川淵三郎がワンマンだったせいか、他のチェアマンのイメージは概して薄い。

国際派のJリーグチェアマンが描くアジア戦略

 村井は日本リーグやJリーグの選手でもなければ、クラブの元経営者でもない。前職は人材総合サービス事業会社の「リクルート」の社員。退職するまで同グループの香港法人で社長を務めたこともあり、大抜擢の理由は「人材育成とアジア展開」とみられる。

 民間企業時代の経験を生かして、とりわけ力を入れるとみられるのがアジア戦略だ。

 村井は語る。

 「プレミアリーグは、年間収益約2200億円。Jリーグは、約120億円で20倍近い規模です。その売り上げの多くを支えているのがアジアからの放映権料なんです」

 そして続ける。

 「アジアからヨーロッパに流れたお金でビッグネームを獲得できる。それが今のヨーロッパサッカーの実態、構造ですね。アジアは人口が多く、GDPの成長率が非常に高い。何よりもサッカーを好きな人の数がものすごく多い。すべてではありませんが、大半の国の一番人気がサッカーなんです。こういったところの資金を、どうやってアジアの中で還流させるか、というのが非常に重要なこと。

 今、いくつか手を打ち始めていますが、もっとJリーグに関心を持ってもらう。アジアの国やクラブの土台を上げて育成し、クラブ経営のノウハウをこちらがどんどん出していく。そういうコラボレーションを強化していきたいと思っています」

 リクルート出身と言えば、東北楽天の島田亨球団取締役など、スポーツ界でも成功例が多い。このところ、やや内向きだったJリーグにあっては、待望久しかった国際派のリーダーと言えよう。

 どんな改革案を打ち出すか。まずはお手並み拝見である。

 

(にのみや・せいじゅん)1960年愛媛県生まれ。スポーツ紙、流通紙記者を経て、スポーツジャーナリストとして独立。『勝者の思考法』『スポーツ名勝負物語』『天才たちのプロ野球』『プロ野球の職人たち』『プロ野球「衝撃の昭和史」』など著書多数。HP「スポーツコミュニケーションズ」が連日更新中。最新刊は『広島カープ最強のベストナイン』。

筆者の記事一覧はこちら

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る