マネジメント

 2014年3月期の決算で売上高が前年比46・2%増の約105億円、経常利益が同59・9%増の約55億円と、業績絶好調の日本M&Aセンター。事業承継M&Aで展開する同社の好調の背景には、ますます深刻化する企業の後継者問題がある。分林会長に現在の事業環境と今後の展望について聞いた。

分林保弘

分林保弘(わけばやし・やすひろ)
1943年生まれ。京都府出身。立命館大学経営学部卒業後、66年日本オリベッティ入社。91年日本M&Aセンターを設立し、翌年代表取締役社長に就任。中小企業のM&A事業のパイオニア的存在として活躍する。

深刻化する企業の後継者不足、M&A成功のポイントは経営者の人柄

-- 業績が好調ですね。

分林 M&A案件はものすごく増えていて、1日に20件ほど問い合わせが来ます。われわれは2012年問題と呼んでいましたが、団塊の世代が12年にちょうど65歳に差し掛かってリタイアし、その後5年間ぐらいは事業承継M&A案件が増えると予想していました。企業再編も増加しています。小売業、卸売業、調剤薬局などで再編が進んでおり、最近ではビル・マンションの管理業、建設業関係などでもニーズが高まっています。

-- あらゆる業界ですね。

分林 病院関係の話も増えています。病床数200〜400クラスの病院では、医師や看護師が不足するケースが増えていて、これらのところでは、経営者は労務対策や資金繰りに集中せざるを得ず、2代目経営者では対応できなくなっているのです。そのため、後継者が見つからないケースが非常に多い。

-- 企業の後継者不足はかなり深刻ですか。

分林 今や全体の66%、つまり3社に2社で後継者がいない状態です。子どもが継がない場合、多くの経営者は社員に継がせようと考えますが、多くはあきらめることになります。仮に無借金経営の場合、社員はその会社の株を買う財力がないし、借金が多ければ個人保証を誰がするのかといった問題が出てくる。どちらにしても、社員による承継はハードルが高いのです。

-- 後継者不足の最大の要因は何でしょうか。

分林 やはり、少子化の影響が大きい。当社を創業した23年前は出生率が約1・40でしたから、男の子が生まれる確率はその半分、さらに事業を継ぐのがその半分としたら、全体の35%しか事業承継ができない。つまり65%の企業に後継者がいないことは予測できていたのです。この傾向は加速しますから、最終的にはM&Aも増加すると予測できたのです。

-- 事業承継M&Aの成功と失敗の分かれ目は。

分林 われわれの案件では、失敗するM&Aはほとんどありません。1つの案件につき、売り手と買い手の間を何度も行き来して慎重に進めているので、失敗事例は極めてまれです。当事者同士や素人の仲介で話を進めると、失敗しやすくなります。

-- M&Aのプロの立場から見てマッチングのポイントは。

分林 本業でつながりのない企業同士のM&Aはお勧めしません。本業でシェアの拡大が見込めるケースや、相乗効果が見込める相手を探します。例えば、技術力は高いが後継者がいない企業を、関連商品を扱う商社が買うことで販売力を付けるといったケースです。

 もう1つは、経営者の人柄の問題が大きい。まれに、成功すれば自分の功績、失敗すれば相手や仲介者のせいにするといった経営者もいますが、こうした案件は手掛けないよう社員には言っています。買った側は、売り手の創業者や社員を大事にしなければ絶対にうまくいきません。売り手側の社長にも、最低3年ぐらいは残ってもらって社名も変えないことが多い。そうすることで、社員や取引先に安心感を与えられます。

M&Aのマーケットは、今の10倍の規模にはなる

-- 今後の事業展開は。

分林 年商1億円以下の零細企業の案件にも積極的に取り組もうと思っています。そのために約2年、数億円を掛けてネットマッチングのシステムを作りました。例えば、全国に数万件ある歯科医院のうち、毎日10〜20件が開廃業しています。歯科医は開業するのに3千万円から4千万円掛かり、廃業するのに500万円から1千万円掛かるといわれています。開業を希望する人が、そのまま機材や患者も受け継げば費用は1千万円くらいですみ、廃業する側も処分する費用が浮くので、お互いにとってプラスになります。こうした案件を地方銀行、信用金庫、会計事務所など協力会社に呼び掛けてまとめています。

-- 以前とはかなり状況が変わっているようですね。

分林 日本でも、会社を売るということをネガティブにとらえるのではなく、成功して売れる会社に育てたというように経営者の意識が変わってきました。M&Aのマーケットは、今の10倍の規模にはなるでしょう。

(聞き手=本誌編集長・吉田浩 写真=森モーリー鷹博)

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

グローバル化が進む中、多くのビジネスパーソンにとって英語力の向上は大きな関心事の1つ。日本人が相変わらず英語を苦手とする理由と解決策について、英語学習アプリで展開するポリグロッツの山口隼也社長を取材すると共に、同社が提供するサービスについても聞いた。(取材・文=吉田浩)日本でますます高まる英語学習熱  201…

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る