テクノロジー

東芝は2013年度の決算と中期計画の概要を明らかにした。昨年から再成長への舵取りを任された田中久雄社長としては期待どおりの結果を示したことになる。その一方で、中計の目標は手堅い印象を受けるが、そこから東芝が抱える問題がうかがえる。

田中久雄

ウェアラブルディスプレーを装着する、田中久雄・東芝社長

増収増益を達成し再び成長軌道に乗る

 東芝の田中久雄社長が前任の佐々木則夫副会長からバトンを引き継いで1年、東芝を再び成長基調に乗せることが求められてきたが、1年目となる2013年度の業績を見る限り、順調な滑り出しを見せている。

 売上高はすべてのセグメントにおいて対前年比で増収を達成。10年度以来の増収に転じ、6兆5025億円となった。損益については、光学ドライブ事業の非継続化や繰り越し税金資産の取り崩しなどで当期純利益が対前年比で減益となった。しかし営業利益は対前年比47%増の大幅増益となる2908億円を達成。好業績を支えたのはまずメモリで、年間を通じて好調に推移し、電子デバイス部門は過去最高の営業利益となった。また、電力・社会インフラ部門では、電力流通システムや太陽光発電システムなどの増収で事業全体が伸長したという。

 今後も昨年定めた経営方針「創造的成長」を引き続き推進していく方針。14年度から3カ年の中期経営計画として、14年度に過去最高の営業利益、15年度に過去最高の純利益、16年度に過去最高の売上高を目指す。

 これらの目標達成に向けて、特に財務体質の強化に注力する。16年度にはすべての事業でROS(売上高利益率)5%を目指すとしており、「達成できない事業はしかるべき判断をする」と強い姿勢で臨む。現時点で赤字となっているのは白物家電やテレビ、PCを中心とするライフスタイル部門で、同部門の改革がまず問われる。

 「テレビやPCで培う技術は、医療分野をはじめ、今後展開するほかの事業領域への波及効果があり、東芝がやる意義はある」(田中社長)という。そのため、成長の軸に据えることはないが、黒字であれば今後も事業を継続する方針だ。

 テレビ事業は、第3四半期、第4四半期とマイナスだったが、黒字化のめどは付いたという。一方、PC事業は、赤字幅は縮小してきているものの、まだ厳しい状況が続くと認識している。このためPC事業では、BtoBへのシフトを進める。16年度にはPC事業におけるBtoBビジネスを5割にまで引き上げる。従来のBtoCも継続するが、BtoCではいたずらに数や規模を追うことはせず、無理なビジネスをしないというスタンスで臨む。

堅調な事業環境の一方でBtoBのイメージを強調

 現状の事業環境を考慮すると、今回の中期計画の目標は、オーガニックの成長で達成できると見られる。それだけに目標設定は手堅い印象を受ける。

 目下の東芝の課題のひとつは企業価値の向上、つまりは株式市場の評価だろう。東芝の株価は田中社長が就任した昨年6月以来、400円台の低水準で推移している。株価はあくまで市場が決めるものだが、東芝としても現在の株価は納得できるレベルではないようだ。

 「東芝の経営はどういう状況なのかを説明しきれてない」と田中社長は語る。

 東芝と言えば、原子力発電と半導体の2本柱が近年の成長を牽引していた。しかし半導体のメモリは市場の変動性が激しく、需給状況に応じては莫大な利益を生み出す一方で、膨大な赤字を計上することもある。また、原子力発電事業は、東日本大震災以降、逆風にさらされている。こうしたことから、東芝の成長性を疑問視する向きもある。

 しかしこのような状況下で、業績が好調に推移しているのは、この2本柱が機能していることが大きい。半導体ではNANDメモリの微細化競争で、韓国メーカーを相手に真っ向勝負できている。四日市工場の新規増設もスタートし、微細化によりコスト競争力を維持できている。また、原子力発電事業では、確かに新規の案件はないが、現在事業の80%が保守・メンテナンスによるもので、事業の収益や継続性に問題はないという。

 それだけに対外的な戦略発表としては、堅実な姿勢を示している。先の中期計画の目標数値も必達値として公表。「目標値を何度も変更し市場を不安にさせるようなことはしない」という意図が表れている。

 PC事業の展開で見られるように、田中社長が強調したのがBtoBへの展開だ。もともと発電事業をはじめ東芝の事業の中心はBtoBで、現状でも全体の8割以上を占める。ソニーやパナソニックなど弱電系メーカーに対して、重電系メーカーである東芝の強みはこのBtoBにある。それを今さら強調することは、東芝流のイメージ戦略だろう。

 経営説明会で田中社長は開発中の眼鏡型ウェアラブルディスプレーを披露した。ウェアラブルディスプレーは、今年1月に米国で開催された家電見本市「CES」でも話題になったように、BtoCビジネスの今後の牽引役と目され、各メーカーからさまざまなデバイスが提案されている。しかし田中社長は、このウェアラブルディスプレーを業務用ツールとして想定しており、BtoBのデバイスであることを強調。BtoCの本命デバイスをあえてBtoBで展開することに、東芝のイメージ戦略の徹底ぶりがうかがえる。東芝としては、名実共に成長軌道に乗る構えだ。

(文=本誌/村田晋一郎)

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