マネジメント

 6月12日未明に開幕する2014FIFAワールドカップブラジル大会。今では出場も当たり前になったが、1998年のフランス大会に初出場を決めるまでは日本サッカー界の悲願であった。川淵氏と、2002年日韓大会招致の立役者である諸橋晋六・三菱商事会長(当時)の想いのこもった対談であった。(1997年9月23日号)

諸橋晋六

諸橋晋六(もろはし・しんろく)
(1922〜2013)三菱商事の社長・会長を歴任。ロンドン支店長時代に『三菱ダイヤモンド・サッカー』(テレビ東京)の誕生にかかわるなど、サッカー界にも多大な貢献をした。

日本サッカーは確実に成長していると語る諸橋晋六氏

-- 諸橋さんの目から見て、日本サッカーの今の実力は。

諸橋 国際レベルの超一流に比べたら、まだまだだと思います。しかし相当なものだなと感じるのは、よくなるポテンシャリティーを持ちながら運営されていることです。

 要所に3人くらいの一流外国選手が入っていますと、個人技は日本の平均よりもずっとうまいですし、どういうふうなフォーメーションを組み立てていくかということを、日本人選手に教えるんですね。そうすると、日本人選手も試合をする中で、「サッカーってこういうふうに動くのか」などということを学べるんですね。それがポテンシャリティーです。しかし、先日ブラジル代表チームとの試合で3対0のスコアで負けましたが、あれは私にいわせれば完敗でしたね。ただ、ブラジルは世界一ですから、彼らの域まで達するためには、もっとサッカー人口の土壌が必要になってきます。実際には、小中高のサッカー人口は野球を超えているんです。

川淵 運動能力の高い子どもが、かつては野球へ行っていたのが、今はサッカーに来ているのです。そういう意味では若い選手には、素材としていいものがあるので、今後さらに伸びる可能性はあります。

諸橋 欧州・南米に比べるとどうしても土壌が浅かったんですが、今だんだん厚くなってきているんですね。

-- 問題は施設と指導者ですね。

諸橋 まあ、それも時間とともに、基礎的な土壌が増えていけば指導者も増えていくだろうし、良い試合も見られるだろうし、施設だってだんだん良くなっていくはずです。

川淵 そうですね。プロができて急にすべてが良くなっていくわけではありません。われわれJリーグは「百年構想」と言っていますが、100年かかって欧州に追い付いていかなければならないと考えています。そういう意味では、施設も指導者も全く足りない状況ですが、それらをいかに早く整備していくかが、これからの仕事なんです。

川淵三郎

川淵三郎(かわぶち・さぶろう)
(1936〜)元サッカー日本代表選手、元日本代表監督、Jリーグ初代チェアマンを経て、第10代日本サッカー協会会長を務め、現在は、日本サッカー協会最高顧問。

組み合わせは悪くないと語る川淵三郎氏

-- ワールドカップ本選出場のめどはどうですか。

川淵 組み合わせとしては悪くないですがまだ分かりませんね。ただ、第1戦の結果次第です。試合の中身はどうであれ、勝つか負けるかで大違いです。勝てばそのまま勢いが続きますし、負ければその後遺症が尾を引きます。勝負だからどうなるかは今の時点では分かりませんが。

諸橋 オリンピックは23歳以下でしたけど、本当に世界で一番強いのが出てこい、というのがワールドカップですからね。

川淵 だから、本当に大会が始まったら日本の人はビックリするだろうと思うんです。「こんなにすごいのか!」と。

 ワールドカップは、日本を世界にアピールするチャンスであり、文字を読めない人でも映像で見ることができるのですから、日本人のメンタリティーまで知ってもらえるチャンスです。もっと事前に僕らが、これをうまく利用しない手はないでしょうということを、これから5年かけて伝えていきたいと思います。

諸橋 いや、余計なことは必要ないですよ。9月7日から最終予選が始まりますから、勝ち残って来年のワールドカップフランス大会に出場すれば何もしなくてもいいんです。今度も行けないとなると、もう5年かかってもダメですよ。意地でも勝ってワールドカップに行くことですよ。

川淵 例えば、来年のフランスワールドカップに出られなくて、2002年のために20億円、30億円を掛けたとしても大したことはできません。しかしこれがもし出場となると、その効果は何百億円くらいの価値が出てきます。

川淵三郎氏と諸橋晋六氏

諸橋 来年フランスに行けたら、02年は自動的に日本と韓国は、ホスト国として出場できるわけですから。

-- 〝勝てば官軍〟ですね。

川淵 負けたら賊軍になってしまいますね(笑)。

諸橋 オール・オア・ナッシングですからね。

(構成/本誌・古賀寛明)

 

【温故知新】の記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

入学試験や資格取得のための勉強法については、さまざまなハウツーコンテンツが世にあふれている。そんな中、独自の学習理論で注目されているのが、サイトビジット社長の鬼頭政人氏。勉強法という個人的な問題を解決するためのサービスを、「働き方改革」を推進する法人向けにも展開している。(取材・文=吉田浩) …

鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年2月号
[第45回経済界大賞]
  • ・[大賞]新浪剛史(サントリーホールディングス社長)
  • ・[特別賞]小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)
  • ・[優秀経営者賞]水田正道(パーソルホールディングス社長CEO)
  • ・[優秀経営者賞]青野慶久(サイボウズ社長)
  • ・[ベンチャー経営者賞]及川智正(農業総合研究所会長CEO)
  • ・[ベンチャー経営者賞]山本正喜(ChatworkCEO兼CTO)
  • ・[グローバル賞]ハロルド・ジョージ・メイ(新日本プロレスリング社長兼CEO)
  • ・[100年企業賞]高松建設(高松孝年社長)
[Special Interview]

 新浪剛史(サントリーホールディングス社長)

 創業精神の共有から始めた米ビーム社との統合作業

[NEWS REPORT]

◆海外メーカーを次々と買収 キリンがクラフトにこだわる理由

◆売上高は前期比3割増 止まらぬワークマンの快進撃

◆第3の都市はどこに? 「スタートアップ拠点」争奪戦

◆寿司屋の大将は3Dプリンター? 電通が画策する未来の飲食

[特集]

 もっと眠りたい

 明日のパフォーマンスを劇的に高める

 一流の睡眠術

ページ上部へ戻る