マネジメント

仮面ライダーとの違い

 制作費はほとんどのウルトラシリーズで赤字。特撮はもともとコストが非常に掛かる上、経費の管理も信じられないほどずさんだった。制作が赤字でも著作権料で挽回すればいいという甘えが、会社に蔓延していた。

 「ウルトラマンだから、金が掛かるのは仕方ないという考えがずっと社内にはありました。なぜ、仮面ライダーや他の戦隊ものなどがうまく続けられるかと言えば、制作で赤字を出していないからです。制作の赤字が出れば、著作権収入で穴埋めせざるを得ず、それを当てにしてどうしてもキャラクターが乱立する。または、パチンコ機向けにキャラクターを貸すといった部分に走っていく。円谷プロはずっとそれをやってきたんです」

 皐氏が社長を退いた後も、昌弘氏や英明氏に経営権がわたることはなかった。後を継いだのは皐氏の息子の一夫氏。皐氏が保有する円谷プロの株式は、一夫氏が相続した。この間、英明氏は関連会社の円谷エンタープライズや円谷コミュニケーションズに在籍し、円谷プロの傍流を歩かされていた。

 「皐さんも当初は良かったが、晩年は息子の一夫さんに継がせたいという方向に走り、役員を手なずけてイエスマンで周りを固めるようになった。一夫さんはそうした中で世代交代したので、高圧的な経営者になってしまいました」

 一夫社長の時代に混迷はますます深まり、会社は倒産寸前の危機に陥った。ついに、不満を持った役員たちによるクーデターが発生。英明氏の兄の昌弘氏が5代目社長として迎えられ、英明氏も円谷プロ本体に専務として復帰した。だが、昌弘氏も同時期に起こった著作権をめぐる裁判での敗訴や、過去のセクハラ行為が週刊誌に暴露されたことなどが重なり、わずか1年で社長を退任。6代目社長として英明氏が就任することになる。

円谷英明

権力への執着の果てに

 本体に復帰した英明氏が最初に取り組んだのは、経理の厳格なチェックだった。そこで驚愕の事実が判明する。支出に当たる制作費と収入に当たる著作権料を精査したところ、すべての番組で赤字を垂れ流していた。要するに、制作費のマイナスを著作権料でカバーするビジネスモデルは全く機能していなかったのだ。この他、皐社長時代の経費の私的流用、社員の経費横領など、ずさん極まりない実態が明らかになった。

 英明氏の社長就任時は、経理の厳格化や新たなウルトラシリーズの放送枠が取れたことなどによって、収益状況は一時的に改善した。だが、今度は会長職に就いていた一夫氏と英明氏の関係が悪化する。経営にタッチできずに不満を持っていた一夫氏と同氏に同調する役員によって、英明氏は就任わずか1年で社長を解任された。英明氏はこう振り返る。

 「私が社長になった時、祖母から相続した0・75%くらいしか株を持っていなかった。これでは、実質何もできない。だから、代表取締役を引き受ける時に一夫さんに株を譲ってくれと頼みましたが断られました。一夫さんは『僕が応援するから大丈夫』と言うので信じていましたが、結局は1年で飛ばされてしまいました」

 株式の過半数を皐氏、一夫氏に押さえられていたことが、ネックとなった格好だ。同じく、当時まだ大株主だった東宝との関係で、英明氏はこんなエピソードを明かす。

 「僕が社長時代に東宝から円谷プロ株を放出したいと打診されましたが、いずれは上場を目指しているからと言って待ってもらったことがあるんです。昔からの経緯で東宝に株を保有してもらう意味はあったし、東宝もそれで了承してくれました。そして、一夫さんに『これからは市場からお金を集めて、ウルトラマンを本気で支えてくれる人に支えてもらいましょう』と言ったら、少数株主に口を出されるのは嫌だと断られました」

 経営を独占することへの執着。英明氏の後に外部から招いた社長も結局は2年で解任され、一夫氏は再び社長に返り咲く。そして、そのわずか4カ月後に、資金繰りに行き詰った円谷プロは、外部企業に株式の過半数を握られ、その傘下に入ることになったのである。

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