政治・経済

関西財界の地殻変動

 昭和41年4月21日夕刻、関西の経済5団体首脳が一堂に会した料亭「なだ万」における〝含み〟のある晩餐会は盛会裏に終わった。

 だが、所期の目的である小田原太造・大阪商工会議所会頭の更迭劇のみに留まらず、それは関西財界の地殻変動にまで発展する。後輩財界人がひそかに待ち望んでいた事態が、まさに急転直下、具現化したからである。

 小田原は任期を待たずに辞めるに際し、側近筋にこう意向を伝えた。

「ワシは後継者に市川(忍副会頭・丸紅社長)を推すが、キタは間違っても松原(譽三松・日立造船社長)を支持しないだろうねぇ」

 側近筋は即座に〝7人の侍〟に連絡をつける。7人の返事は、「小田原さんが指名する人なら誰でも支持する。条件は飲む。ただし、伏せろ」。伏せに伏せられた人事。留任は佐伯勇・近鉄社長と中小企業代表の村井八郎・日東工業社長の両副会頭。新加入は、産業界、金融界をそれぞれ代表する長谷川周重・住友化学社長と寺尾威夫・大和銀行(現りそな)頭取。副会頭布陣は、村井を除く3人が朝の会の有名メンバーで重厚そのものといえた。

関西財界の総本山辞任で芦原義重擁立へ

 大商・小田原更迭という無血クーデターの余波は大阪工業会にも及んだ。井口竹次郎会長(大阪瓦斯会長)が突然辞任。4歳若い室賀国威副会長(敷島紡績社長)が後継者に指名された。そしてその秋、ついに関西財界の総本山、関経連の阿部幸次郎会長が辞意を表明。本命・芦原義重の登板が実現された。

 次代を担う財界人の間では、芦原擁立のコンセンサスが既にできていた。ところが、そこには2つの問題があった。1つは、大阪建物社長の工藤友恵の存在。工藤は関経連の発足時から運営面にタッチする実力派の常務理事で、自他共に〝工藤関経連〟との認識があった。加えて工藤は芦原と同年輩。そのため、芦原擁立のムードに対しては、敢然と反旗をひるがえしていた。

 もう1つの問題は、会長の阿部と東洋紡で同じ禄を食み、先輩・後輩の間柄であった谷口豊三郎だ。立場上、因果な阿部引き落としの手先になることははばかられ、「利害の利、理屈で動かないのが世の中」との考えを貫いていた。

 こうして、関経連の綱引きは秋の総会まで続く。

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