
目次
経営者が銀行員に言ってはいけないことはあるのか?
企業の経営者は、「銀行員は特別な存在」と見なしがちです。確かに、融資が受けられるかどうかは銀行の審査で決まりますし、会社の資金繰りがうまく回るかどうかも銀行次第です。そう考えれば、銀行員を特別扱いする経営者が多いのも自然の成り行きと言えるでしょう。
とはいえ、銀行員もわれわれと同じ人間で、銀行に勤務している一社員にすぎません。ですから、彼らを恐れる必要は微塵もなく、経営者として堂々と接すればよいのです。
もっとも、銀行は、融資先の返済が滞り、貸倒れになると、受け取れるはずの利息の何十倍もの損失を被ります。そのため銀行員は、融資先の返済が今後も滞りなく行われるかどうかを常にチェックしています。
そんな銀行員が、「この企業は危うい」と考えるきっかけは、融資先との会話、とりわけ、その経営者との会話の中でつくられることが少なくないのです。ということで、今回は、銀行員には「言わないほうが無難な事柄」について説明することにしましょう。
銀行員に言ってはいけない話 その1 経営者の体調
中小企業の場合、その繁栄も衰退も、経営者で決まります。ですから、経営者が万が一の事態に見舞われる︱︱例えば、亡くなられたり、病気やけがで働けなくなったりすると、有能な後継者が経営を引き継がないかぎり、会社は厳しい状況に陥ります。そのため銀行では、経営者が、この先数十年、健康を維持し、問題なく会社を率いていけるかどうかをチェックします。
ですから、経営者は、例えば、自分の病気や持病のことを銀行員に多く語ってはなりません。そうすることで、銀行は会社の今後に不安を抱き、融資が慎重になるからです。
また、実際に体調が芳しくなく、健康な状態で仕事ができない場合は、自分の代わりに経営の仕事してくれている幹部や後継者の存在を前面に出すべきです。さらに、自身の数年後の引退が決まっているならば、後継者と銀行員との顔合わせを早めに済ませておくとよいでしょう。
銀行員に言ってはいけない話 その2 本業以外の趣味
経営者の仕事に支障が出ない程度の趣味であればよいですが、支障が出る趣味であれば、それを銀行員に言うと、「この社長は、趣味にうつつを抜かしているが、本業のほうは大丈夫なのか?」と疑われてしまいます。
例えば、「平日の昼間から週に何回もゴルフに行っている」との話を社長から聞くと、銀行員はその会社の将来を不安視します。また、夜の高級クラブに入り浸っているといった話も、「この社長は体調管理がしっかりとできているのか」、「散財してしまい会社のカネに手をつけているのではないか」といった疑念につながります。
中でも気を付けなければならないのは、ギャンブルや株式投資。それで大負けをし、穴埋めのために銀行からの借入金に手を付けてしまう社長もいなくはないからです。
このように銀行員を不安にさせる経営者の趣味はさまざまあります。そうした趣味にのめり込み過ぎると、銀行員の警戒心を強めるだけでなく、実際の経営にも支障を来すことになります。銀行員に話す内容も含めて、何事も「ほどほどに済ます」ことが無難なのです。
銀行員に言ってはいけない話 その3 社員に関するグチ
経営者は孤独です。会社の中で頼れる人、相談する相手がいない場合も少なくないでしょう。そんな環境に身を置く中で、銀行員に対し、ついつい社員のグチをこぼしたくなるのも分かります。ですが、これは厳禁です。そもそも、身内である社員に関するグチを部外者に言う経営者は見苦しいものです。そのような経営者を銀行員は信用しません。「この社長はいつも社員に責任を転嫁するのか」と見なし、経営者としての能力を低く評価するのです。
銀行員に言ってはいけない話 その4 「経理担当者の退職」にも警戒感
これは、飲食業のある会社の話で、私の銀行員時代の出来事です。この会社では、経理担当者が銀行との窓口になっていたのですが、ある時を境にその人の表情が曇り始め、時を経るごとに険しさを増していきました。
そしてついには退職。その3カ月後に会社が倒産したのです。この間、企業内では内紛により社長が頻繁に交代。倒産直前には、最後の社長が30億円もの使途不明金を出していました。年商70億円の企業においてです。
このように、企業の中で問題が起きると、経理担当者はその仕事から逃れたいと思い、退職してしまうことがよくあります。例えば、粉飾決算や資金繰り難、もしくは経理担当者自身による会社資金の横領、などです。このようなことから、経理担当者の退職を銀行は警戒します。したがって、もし経理担当者に退職の意向がある場合には、いったん別の部署に移してから、退職させたほうが無難でしょう。
筆者の記事一覧はこちら
好評連載
年収1億円の流儀
一覧へ起業して得られる経験・ノウハウ・人脈は何ものにも代え難い。--鉢嶺登(オプトホールディングCEO)
[連載]年収1億円の流儀

[連載]年収1億円の流儀
5時間勤務体制を確立した若手経営者 フューチャーイノベーション新倉健太郎社長
[連載]年収1億円の流儀
新倉健太郎氏 ~経営者は、相手の立場に立つことだと16歳の身で悟った~
[連載]年収1億円の流儀
南原竜樹氏の名言~人生の成否はDNAで決まっている 要はDNAの使い方だ~
[年収1億円の流儀]
元マネーの虎 南原竜樹 儲かるからではなく、「楽しいから」やる、と言い切れるか。
銀行交渉術の裏ワザ
一覧へ融資における金利固定化(金利スワップ)の方法
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)
定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)
メインバンクとの付き合い方
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)
銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)
融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける
元榮太一郎の企業法務教室
一覧へ社内メールの管理方法
[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)
タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)
ブラック企業と労災認定
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)
電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)
女性の出産と雇用の問題
温故知新
一覧へ[連載] 温故知新
エイチ・アイ・エス澤田秀雄社長が業界各社に訴えたいこと
[連載] 温故知新
小山五郎×長岡實の考える日本人の美 金持ちだけど下品な日本人からの脱却
[連載] 温故知新
忙しい時のほうが、諸事万端うまくいく――五島昇×升田幸三
[連載] 温故知新(第19回)
最大のほめ言葉は、期待をかけられたこと--中條高德(アサヒビール飲料元会長)
本郷孔洋の税務・会計心得帳
一覧へ税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」
[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)
グループ法人税制の勘どころ
[連載] 税務・会計心得帳(第17回)
自己信託のススメ
[連載] 税務・会計心得帳(第16回)
税務の心得 ~所得税の節税ポイント~
[連載] 税務・会計心得帳(第15回)
税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~
子育てに学ぶ人材育成
一覧へ意欲不足が気になる社員の指導法
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)
子育てで重要な「言葉」とは?
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)
女性社員を上手く育成することで企業を強くする
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)
人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)
人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~
ビジネストレンド新着記事
注目企業
一覧へ次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)
1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

新社長登場
一覧へ地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)
中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

イノベーターズ
一覧へペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり
家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

大学の挑戦
一覧へ専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長
2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…
