テクノロジー

「金の卵発掘プロジェクト」とは将来の日本経済を背負って立つ人材を発掘し、日本を元気にするためのビジネスプランコンテスト。本連載では2013年の選考会で審査委員特別賞を受賞した企業について紹介していく。
「金の卵発掘プロジェクト」フェイスブックページはこちら

木村光希

木村光希(きむら・こうき)
1988年9月北海道札幌市生まれ。2011年札幌大学経営学部卒業、同年NK北海道入社。12年Noyukに移籍、13年株式会社おくりびとアカデミー設立、代表取締役となる。同年一般社団法人日本納棺士技能協会設立、代表理事となる。

木村光希氏が設立したおくりびとアカデミーとは

 私は2013年6月に、人生の終末期を専門に取り扱う教育ならびに人材育成機関として、株式会社おくりびとアカデミーを設立しました。超高齢化社会を迎えている日本において、われわれ若い世代が人生の終末期と真正面から向き合う必要性を感じたのがきっかけです。

 私は実際に納棺士として活動してきましたが、この職業を選んだ最大の要因は、父の影響です。父は23歳の頃から納棺士として活動する傍ら、現在の納棺の儀の様式や技法を構築し、現在まで約3万体のご遺体を納棺してきております。また、映画や舞台「おくりびと」で主演俳優に技術指導を行いました。

 私はそんな父に幼い頃から納棺士としての技術を学び、大学在学中から実際に納棺の現場で働き始めました。ご遺体の体を清め、お着せ替えをすると同時に、フューネラルメイク(死化粧)を施し、ご納棺。一連の所作を目の当たりにされたご遺族の多くは、施術後のご遺体の変化に驚かれると同時に、時には涙を見せながら感謝の言葉をくださいます。私は納棺士という職業にあらためて誇りを持つと同時に、強い責任を感じました。

 ご存じない方も多いのではないかと思いますが、葬儀社のスタッフではなく、「納棺」を専門に行う事業者が存在します。ご遺体処置のプロフェッショナルである納棺士は、ご遺族との距離が一番近いことが特徴です。

 大学卒業後、私はアジア圏で日本の「納棺の儀」の文化を広めるための活動を行いました。中国では特に高い評価を受け、四川省重慶市では現地の30人の生徒に対し1人で約3カ月にわたり技術指導を行い、今も現地では日本式の納棺の儀が行われています。

 一方、日本においては納棺士の公的な資格や基準がありません。そのため技術や作法、ご遺族への応対に関しても、対応する納棺士や事業者によって異なった手法がとられています。いわゆる「当たり外れ」が存在し、ご遺族は、生涯一度の場面を任せる納棺士を選択する材料がないのです。

 高齢化社会と人口の減少は、葬儀の小規模化と簡素化につながると思われます。そうした中、人生の最期を安心して任せられる納棺士の重要性は高まると予想されます。

納棺の儀

納棺の儀は真剣勝負。ご遺族の心のケアにつながることを願いながら全身全霊を注ぐ。

おくりびとアカデミーでの人材育成とは

 おくりびとアカデミーでの人材育成において、もうひとつ重要な職業があります。エンバーマーという、ご遺体の衛生保全を行う職業です。体内を特殊な溶液で満たすことにより、感染症等の心配もなく、ご遺体の長期保存が可能となります。

 人材不足の状況が続いていますが、海外で働く人員の増加、あるいは若年層の減少に伴う海外からの労働者の流入等が予想される近未来の日本において、ご遺体の海外搬送の機会が増えることが予想されます。優秀なエンバーマーの育成は、グローバル社会において重要な社会基盤の整備となるはずです。

 とかくタブー視されがちな「死」ですが、この世に生を受けた人間にとって、避けることができない人生一度きりの場であるということに変わりはありません。特に若い世代に「死」と正面から向き合ってほしいと考えています。

 おくりびとアカデミーでの活動を通じ、ご遺体処置のプロを養成するとともに、「死」を学ぶことによって「生」を大切にする気持ちを育んでいきたいのです。将来的には死生学の学校教育での採用を目指します。また、現在公的資格のない納棺士を国家資格とするべく、社団法人を立ち上げ、資格付けを行っていきます。

(次号、後編に続く)

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る