マネジメント

謝ることは、負けることではない

 「組織風土はトップの言動がつくる」といったことはよく言われますが、自身がミステイクをし、部下に迷惑を掛けたり、組織にマイナスのパフォーマンスをしてしまった場合にどのように対応するかは、まさに風土を作っていると感じます。

 職場でも、誰も謝らないことで対立が生じてしまうケースをよく見掛けます。特に、何かのミスが発生した時、その原因が特定の個人によるものではなく、チーム全体や複数のチーム間にまたがるような場合などは、とげとげしい雰囲気になる場合があります。そんな状況を避け、よい方向に変えるため、上手に「すみませんでした」と言える経営者がいました。独立時、試行錯誤を繰り返す私の経営を気にして、声を掛けてくださる方でした。ある時、悩む私に、「うまくいかなかったときは、言い訳や逃げ道を考えるのではなく、まずは謝ること。それから対処法を考えればいい」と、経験談を話してくれました。

 みんなの感情を落ちつかせ、ぎくしゃくした人間関係も元の状態に戻していく。その方は謝ることを、自分のプライドが傷ついたり負けることとは考えていないようです。

 子どもの世界においても、最近は意地を張って仲直りできない、「ごめんね」が言えない子どもが増えています。意地の張り合いは、大人のけんかの典型的なスタイルです。子どもは、目に見えない間接的しつけが8割影響するといわれていますから、子どものけんかの模範が夫婦喧嘩になっていると、大人のようなけんかを子どもがするようになります。

 夫婦でお互い伝えたいことを伝え合い、率先して謝る姿勢を見せること、そして、万が一、けんかをした場合にも、仲直りするところまで見せることが重要です。「自分は悪くない」と思っていても謝れるかどうかは、うまく生きていくために大事なことですが、なかなか教わる機会はないものです。「負けて勝つ」とは、子どもには少し難しいかもしれませんが、それでも伝え続けてあげる価値は十分にあることではないでしょうか。

 社会性が発達していく3歳以上になると、人間関係の中で「ごめんなさい」が上手に使えるか、わざとしてしまったことではなくても、人に嫌な思いをさせたら「ごめんなさい」が言えるかどうかは大切なしつけのひとつです。

 私は、ファミリービルディングのコンサルティングにおいて、眠る前の対話の時間を薦めています。1歳半頃から親子で対話をする習慣をつけます。キャッチボールできなければ対話ではないと思っている人がいますが、自己開示することがとても大切なのです。強く怒ってしまった時にも、事が起こったその時に謝るのではなく、「もう少しやさしい言葉で怒れたほうがよかったと思ってるよ。ごめんね」と親が言ってあげる。それだけではなく、うれしい話やうまくいかなかった話、子どもと離れていた時に考えていたことなど、親の心の内を話すことで、子どもも自分の心を開きやすくなります。「お友だちにあかんべーしたけど、ダメだったと思う」など、素直な子どもの反省を聞くと、抱きしめてあげたい気持ちになります。

トップが謝ることで相互の信頼関係が生まれる

 ビジネスシーンでも、部下と対話の時間を持つことが、人間関係をスムーズにしていきます。1対1で話す時や、年度末、年の瀬など節目の時に振り返り、弱みも含めて上司から自分の心の内を開くきっかけがあると、部下は失敗や言いにくいことも話しやすくなります。

 大人の社会では、「仕事で謝ることは負けだ」と思う節があるように思います。トップが潔くミスを認め、謝る姿勢は、必ず組織風土にプラスの影響を与えます。風通しがよくなり、ミスを隠したりせず認め合い、許し、リカバリーする健全な自己治癒的な組織力が備わっていきます。

 「(リーダーを)信頼するということは、リーダーを好きになることではない。常に同意できることでもない。リーダーの言うことが真意であると確信できることである」と、経営学者のピーター・ドラッカーも言っています。

 トップが謝ることで、お互いの自己開示をしやすい相互の信頼関係が生まれます。上司がミスをした時は、部下と信頼関係を深めるチャンスです。「ごめんなさい」が素直に言える人は、経営者としても素晴らしい謙虚さをお持ちです。ぜひ子どもに倣って、組織においても謝罪力を生かしてみてはいかがでしょうか。

上司がミスした時は部下と信頼関係構築のチャンス

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