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ロシアが仕掛ける情報戦

ロシアのサハリン(樺太)で軍事演習を視察するプーチン大統領(写真:EPA=時事)

ロシアのサハリン(樺太)で軍事演習を視察するプーチン大統領(写真:EPA=時事)

 北方領土問題をめぐってロシアが奇妙な情報戦を仕掛けてきた。

 7月7日、ビザなし交流で北方領土・色丹島を訪れた日本代表団に対して、穴澗(ロシア名・クラブザボツコエ)村のセディフ村長が「今月15日にプーチン大統領が南クリル(北方領土に対するロシア側の呼称)に来ることになっている。もしも色丹に来たら、花束を持って迎える」と述べた。

 この情報が翌8日、日本のマスメディアで報道されるとクレムリン(露大統領府)がただちに対応した。ペスコフ大統領報道官は、来週、プーチン大統領がサハリン州を訪問する計画があるが、北方領土を訪問する予定はないと明言した。

 筆者が独自にモスクワのクレムリンの内情に通暁する友人から得た情報でもプーチン大統領が北方領土を訪問する計画は全く存在しない。

 もっとも、セディフ村長が捏造情報を日本代表団に伝えたとは考えがたい。大統領府以外のロシア中央政府(恐らくはプリホチコ副首相兼政府官房長官本人もしくはその周辺)もしくはサハリン州行政府の関係者が日付まで明示してプーチン大統領が北方領土のいずれかの島に上陸することになるという情報をセディフ村長に伝えたのだと筆者は見ている。

 この情報がマスメディアを通して拡散することによって日本の世論が硬化し、平和条約(北方領土)交渉が袋小路に陥ることが、この情報操作を行った勢力の意図なのだろう。

 本件に関し、露国営ラジオ「ロシアの声」が7月17日に報じた論評の中で元駐日ロシア大使で、ロシアの対日政策に影響を与えることができるアレクサンドル・パノフ氏のコメントが興味深い。

 「モスクワで先頃、プーチン・安倍会談が行われ、そこでは平和条約交渉を再開する事で合意がなされました。ロ日のどちらの側も、この交渉をめぐる雰囲気を感情的で興奮した、ましてネガティヴなものにしたいとは思っていません。まさにそれゆえに、日本外務省や首相官房の側から、プーチン大統領のクナシリ訪問に関するうわさについてのいかなるコメントも出されなかったのです。出したのはマスコミであり、彼らは彼らであり、そうした情報が好きなのです。(中略)」

交渉の秘密が漏れることへのロシアからの警告

 「残念ながら、日本では、交渉の過程あるいは新しい提案をマスコミに漏らすという傾向があります。これまでのことを見る限り、そうした漏洩は否定的効果しかもたらしませんでした。なぜなら、そうした漏洩をまず利用するのは、そもそも領土問題に関するロ日間の合意に反対する人々だからです。そうした勢力は、日本だけではなく、ロシアにも、さらには第三国にも存在しています。これが、デリケートな問題に関する交渉は非公開で行うべきだという、さらにもう一つの根拠となっています。

 もちろん、通常、交渉に参加するどちらの側も、自分達の国益を損なうような譲歩をしたりはしません。しかし、お互い何らかの歩み寄りをする可能性はあります。そのために、外交官にもまた政治家にも、少なくない勇気が求められます。

 2001年イルクーツクでのプーチン・森会談で、双方は、南クリルの4島同時返還という強硬な要求を棚上げすることで合意に達しましたが、その後、森氏も交渉に参加した日本の外交官達も、国益を損なった裏切り者として非難されました。森氏は首相を辞任し、日本政府は再び従来の強硬路線に戻り、その結果、平和条約と南クリルに関するロ日交渉は、10年以上に渡り凍結してしまいました。

 そして今、日本側の立場が再びより柔軟になるのではないかという希望が見えています。しかし、交渉が成功のチャンスを持つためには、マスコミが『情報を投げ込む事』で交渉に影響がでないようにすべきだと思います」

 01年3月のイルクーツク日露首脳会談での合意を日本側が一方的に覆したとプーチン大統領は認識している。領土交渉の秘密が守れないとプーチン大統領が安倍政権に対する不信を抱く可能性があるというメッセージを、パノフ氏は「ロシアの声」を通じて対露外交担当者に伝えていると筆者は見ている。

 

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