文化・ライフ

「Jリーグのブランド力を落とすことなく、底辺を広げていきたい」と語る大東和美・Jリーグチェアマン

「Jリーグのブランド力を落とすことなく、底辺を広げていきたい」と語る大東和美・Jリーグチェアマン

 ワールドカップで4度の優勝を誇るイタリアのプロサッカーリーグはセリエAをトップに4つのカテゴリーで編成されている。

 ワールドカップ3度優勝のドイツもプロリーグはブンデスリーガを頂点に4つのカテゴリーからなる。

 ピラミッドの頂点を高くしようとすれば、当然のことながら底辺を広くしなければならない。

 人間だって、そうだ。上半身も大切だが、アスリートにとって、もっと大切なのは下半身だろう。下半身の強化なくして栄光なし――。そう言い切っても、過言ではない。

 5大会連続でワールドカップ出場を決めたサッカー日本代表。近年、これほど目覚ましい成長を遂げた国はない。

 その原動力となったのが1993年にスタートしたJリーグだ。94年のアメリカ大会こそ〝ドーハの悲劇〟により涙をのんだが、それ以降の大会は、すべて出場を果たしている。

 Jリーグ誕生前は、どんなに代表チームを強化しても、ワールドカップには届かなかった。83年にプロ化(現Kリーグクラシック)した韓国の後塵を拝し続けた。

 Jリーグを創設した目的として、世間にあまねく広まったのは「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発展への寄与」だが、協会関係者の本音はこちらだった。

 「日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進」

 要するに韓国に勝ってワールドカップの本選に出場したいということである。

 しかし、それを前面に押し出したのでは、他のスポーツ愛好家からの賛同は得られない。衣の下に鎧を隠したことで、Jリーグの狙いは見事に成功した。

 現在、「地域密着」を謳うJクラブはJ1・J2合わせて40にまで膨らんだ。底辺の拡大が、日本代表という名のピラミッドの頂点を高くしたのは、前述のとおりだ。

 さてJリーグには、2014年度から新たにJ3が加わる。当初は12クラブでスタートする予定だ。

 以下に候補クラブを記す。「聞き覚えがある名前だな。ウチの地元のクラブだ」とヒザを打った向きも多かろう。

 FC町田ゼルビア、ツエーゲン金沢、カマタマーレ讃岐、ブラウブリッツ秋田、SC相模原、AC長野パルセイロ、福島ユナイテッドFC、栃木ウーヴァFC、Y.S.C.C.(横浜)、藤枝YMFC、MIOびわこ滋賀、FC琉球、ヴァンラーレン八戸、グルージャ盛岡、tonan前橋、アスルクラロ沼津、FC鈴鹿ランボーレ、奈良クラブ、レノファ山口。

 既に準加盟承認を得ているクラブは町田、金沢、讃岐、秋田、相模原、長野の6つ。この中で町田、金沢、讃岐はJ2入会に必要なJ2ライセンス取得を目指している。J2ライセンスを取得できなかった場合は、J3の審査対象となる。

 J3の担当理事であるJリーグの中野幸夫専務理事はJ3の設立趣旨について、こう語っていた。

 「Jリーグの(百年構想の)理念の中で、全国に100くらいのクラブをつくっていきたいという基本的な方向性がある。J3は理念に沿ったかたちで数を増やしたい。また、Jクラブの降格チームのセーフティーネット的な要素もある」

 J3が誕生することによってJリーガーは飛躍的に増える。しかし、これには異議を唱える向きもある。

 直言居士で知られる元日本代表のラモス瑠偉だ。

 「J1は14クラブでいいね。そしてJ1の選手だけをJリーガーとして呼ぶべき。今は誰もかれもがJリーガーで、これは選手にとってもよくない。ヘタくそなくせにJリーガーなんて呼ばれていたら、いい気になって努力しなくなっちゃうよ。J1でプレーしたいんだったら〝オマエら、もっと自分を磨いてこい!〟というスタンスも必要じゃないかな」

 ラモスの主張は一理ある。〝オラがまちのJリーガー〟は地域の誇りであり、子どもたちの憧れの対象でもある。

 しかし、石を投げればJリーガーに当たるような状況は、いってみればJリーガーバブルであり、逆に本物のJリーガーのブランド価値を損ねかねない。

 Jクラブの増産、すなわち底辺の拡大は地域振興、日本サッカー強化のためにも大賛成だが、その一方でJクラブやJリーグのブランドを維持する方策も必要だろう。

 J3発足にあたり大東和美・Jリーグチェアマンは「Jリーグのブランド力を落とすことなく、底辺を広げていきたい」と語った。

 問われているのは、その具体策だ。

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る