政治・経済

 2回目となる東京へのオリンピック招致に成功した招致活動の先頭に立っていたのが、猪瀬直樹・東京都知事だ。中枢を機能させることの重要性を説いた著作の教訓を自ら実行する形で、チームニッポンを実現できたことが招致成功の要因だという。また、2回目のオリンピックでは成熟都市のモデルを示すことも求められる。猪瀬知事に開催都市としての東京の在り方について話を聞いた。

20131112_26_01

情報を中枢に一元化しなければ戦いに勝てない

―― 今回の招致成功の要因のひとつは、中枢が機能したとのことですが、その点について詳しくお聞かせください。

猪瀬 まず日本は、いろいろなところが縦割りなんですよ。霞が関にしても、厚生労働省にパラリンピックがあり、文部科学省にオリンピックがあるといった形で分かれています。また、諸外国のいろいろなニーズの情報は外務省や経済産業省が持っています。それぞれ情報を持っていますが、必ずしも統合されていない。

 また、東京都でもスポーツ振興局をはじめ、さまざまな組織があります。そして日本オリンピック委員会(JOC)があるだけでなく、日本体育協会があり、体協の中にも陸上や水泳やバレーボールなど、いろいろな競技団体があります。そういういろいろなところが持っている情報を中枢に一元化しなければ、「敵」を攻略できません。

 それから、国際オリンピック委員会(IOC)の委員が各国にいますが、それぞれの国に対して施策をきちんと見せていくことも大事です。IOC委員はアスリート出身者が多いですから、水泳なら水泳の競技団体を通じて、その個々のIOC委員に、陸上なら陸上のIOC委員にアピールし、相手側にきちんとメッセージを届けないといけません。一種の選挙活動みたいなものですが、各IOC委員にそういう訴えをきちんとやる必要があります。

 もちろんそれだけでなく、プレゼンテーションをきちんとやっていくわけですが、そのためにも中枢をつくっていかないといけません。だから首相官邸と東京都とが緊密に連絡を取り合いました。

―― 特に一元化のための中枢組織をつくったのですか。

猪瀬 もともと招致委員会は、そのための組織です。各団体が集まって招致委員会ができていますが、各委員の出身母体に情報がいってしまうことが往々にしてありました。そういうことが起きないように、情報を集約することが重要でした。今度の招致合戦は、括弧付きの〝戦争〟でしたが、やはり〝戦争〟を勝つためには、中枢が機能しなければ勝てません。

 僕は『昭和16年夏の敗戦』という本を書いています。その本で書いたことですが、日本は米国と戦争をする前に、大本営政府連絡会議を開いています。ところが海軍が自分の持っている石油の備蓄量を言わない。陸軍もお互いに言わない。米国と戦うのに、自分の持っている情報を言わないで、それでチームができるわけがありません。だから戦争に負けたわけです。太平洋戦争の時は「チームニッポン」が戦争をやる前から崩壊していました。それを踏まえて、今回は歴史的にも日本が大きな戦いをやる時の体制はどうあるべきかを検証しながらやらないといけないと思いました。

『昭和16年夏の敗戦』で書いたのは、当時、普通の政府があって、軍部もいて、それぞれが大本営と政府で連絡会議を持って、統一機能を持たせようとしていたにもかかわらず、縦割りだったため、お互い情報を隠してやらなかったことが失敗の原因でした。ですから、今回は中枢をきちんと機能させなければいけませんでした。そういう意味では、今回は「チームニッポン」ができたことが勝因です。

ページ:

1

2 3

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

「損して得を取る」事業モデル   不動産登記情報を扱う「登記簿図書館」をご存じだろうか。  かつては法務局でしか取得できなかった登記簿情報がオンラインで簡単に取得でき、かつ、法務局では対応できないさまざまなサービスを提供するというものだ。保有登記情報は全国2450万件、会員数9500社を誇る。  この登…

支持政党なし

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

独自のプラットフォーム戦略で、外食産業の新たなスタンダードを創造する――きちり社長 平川昌紀

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界11月号
[特集]
運の科学

  • ・北尾吉孝(SBIホールディングス社長)
  • ・江口克彦(江口オフィス社長)
  • ・畑村洋太郎(畑村創造工学研究所代表)
  • ・藤井 聡(京都大学大学院工学研究科教授・内閣官房参与)
  • ・角居勝彦(日本中央競馬会調教師)
  • ・桜井章一(雀鬼会会長)

[Interview]

 安永竜夫(三井物産社長)

 「やるべきことは2つ。方向性を指し示し、トップ同士の関係を構築する」

[NEWS REPORT]

◆東芝メモリ買収の影の主役 産業革新機構の収支決算

◆電気自動車がガソリン車を駆逐するまであと10年

◆60代を迎えた孫正義 ソフトバンク300年の計への足固め

◆出版不況の風向きは変わるか!? 常識を覆すオンリーワン作戦!

[政知巡礼]

 若狭 勝(衆議院議員)

 「自民党のしがらみ政治をぶった斬りたい」

ページ上部へ戻る