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ソフトバンクがロボット事業に本格参入― Pepper(ペッパー)で描く未来

孫正義社長とPepper

ソフトバンクが人とのコミュニケーションに特化した感情認識パーソナルロボット「Pepper」を発表した。クラウドを活用する通信会社ならではの手法で比較的安価なロボットを実現し、次世代プラットフォームとしてロボットをとおしたサービスを拡大していく構えだ。

孫正義社長とPepper

孫正義社長とPepper

ソフトバンクが感情を持つロボット「Pepper」を実現

 ソフトバンクは6月5日、感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」を発表した。その発表前夜、孫正義社長は、こうツイートした。

 「私は25年間この日が来ることを夢見てきました」

 孫社長のロボットへの興味は子どもの頃に見たアニメ「鉄腕アトム」からだというが、事業化への意気込みとしては、ソフトバンクが2010年に発表した「新30年ビジョン」で「知的ロボットとの共存」を掲げ、将来のロボット事業参入を示唆していた。

 そして12年に自律型ロボットの開発を行う仏アルデバラン・ロボティクス社に出資し、共同でロボットの開発を進めてきた。今回のPepperは、そのビジョンを実現する最初の製品となる。

 孫社長は、このPepperを「世界で初めて感情を持ったロボット」と強調。Pepperは、周囲の状況を把握し自律的に判断する独自アルゴリズム、音声認識機能、人の表情や声のトーンで人の感情を推定する感情認識機能などを搭載し、人とのコミュニケーションに特化している。友人や家族と接するようにコミュニケーションを楽しむことができるという。

 15年2月より販売を開始するが、既に6月6日よりソフトバンクショップの銀座店および表参道店でPepperが接客を開始した。順次、全国のソフトバンクショップに常駐させる予定。

 今回のPepperで特筆すべきことは、まず19万8千円という低価格を実現したことだ。高性能のPCの販売価格やペットを飼う際に掛かる費用と同等の価格帯に収めた。

 現状ではまだ赤字だが、今後、数万台規模の出荷となり量産効果が出るようになれば、利益は確保できるという。

 この低価格の理由には、クラウド、アルデバランの2つの要素がある。

 まずPepperはネットワークに接続し、負荷の高い処理をクラウド上で行うことで、ロボット側での処理の負担を軽減している。Pepperの自律回路は人間の感情を感知して学習していくが、その学習もクラウド上で行うため、ネットワークにつながる他のPepperの知見も合わせて、自律回路が進化していくという。通信会社のソフトバンクならではのアプローチでロボット単体の低スペック化および低価格化を実現する。

 また、Pepperは、アルデバランの小型人型ロボット「NAO」をベースにしている。NAOの特徴は、パーツの大半が汎用品で価格を抑えていることにある。PepperはこのNAOの特徴を受け継ぐ形で、低価格を実現している。

ソフトバンクの狙いはPepperによる次世代プラットフォーム構築

 ある業界関係者は次のような見方をしている。

 「孫さんはスティーブ・ジョブズになりたいのではないか。Pepperの発表会は、ジョブズがiPhoneを発表した時のアップルの発表会を連想させるものだった。ジョブズがiPhoneで携帯電話業界を変えたように、孫さんはスマートフォンからロボットへというパラダイムシフトを起こしたいのだと思う」

 今回の発表会でPepperの機能の一端は示されたが、ソフトバンクのビジネスにどう結び付けるかという問題がある。

 当面は赤字覚悟で理想を追ったことを孫社長は示唆したが、発表会に製造を委託する台湾フォックスコン・テクノロジー・グループ代表のテリー・ゴウ氏を招いたことからも、この事業に賭ける意気込みが感じられた。

 ソフトバンクはPepperを次世代のプラットフォームとして、Pepperを通じたビジネスを拡大させる考えのようだ。その手法はかつてのADSLモデムの無料配布や、iPhoneでの格安料金プランで、インターネットやスマホの普及を促した戦略に通じる。

 PepperのベースになったNAOは機能拡張性に優れている。この機能拡張性とクラウドとを組み合わせることで、Pepperをプラットフォームとし、今後さまざまなアプリケーションやサービスを展開する構えだ。

 今回の製品発表から発売まで約半年の時間を設けていることも、この間にサービスの開発をさらに促すと見られる。開発者向けに開発キット(SDK)を提供し、また開発者向けのイベントも9月に開催する。より多くの開発者を巻き込みながら、Pepperで実現できることを増やしていく。

 ただし、ロボット市場はまだ立ち上がっておらず、むしろPepperがこれから市場を創っていくことになるため、さまざまな問題が予想される。

 孫社長が想定しているように人間のパートナーとして、家庭の中に入り、生活に密着した形で稼働するようになると、仮にトラブルや事故になった場合、人命にかかわる可能性がある。その際の責任問題などから法整備が必要になる。さらにクラウドへの依存度が高いシステムのため、セキュリティーや運用における問題も付いて回ってくる。

 ロボットは未知の部分が多く、普及までに乗り越える壁は多い。Pepperの今後は孫社長の理想をどこまで追求できるかにかかっている。

(文=本誌/村田晋一郎)

 
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