政治・経済

 アイ・アール ジャパンは、今年4月、日本初となる「コミットメント型ライツオファリング」を活用した資金調達を実施した。この実績を生かして、同社は上場企業向けにライツオファリング実行に関するワンストップの支援サービスを開始している。ライツオファリング導入の意義について栗尾拓滋副社長・COOに聞いた。

【くりお・たくじ】 1990年神戸大学経営学部卒業後、野村証券に入社し、IPOや上場企業の資金調達、M&Aなどの投資銀行業務に20年以上従事する。今年4月にアイ・アール ジャパン入社、6月より現職。

【くりお・たくじ】
1990年神戸大学経営学部卒業後、野村証券に入社し、IPOや上場企業の資金調達、M&Aなどの投資銀行業務に20年以上従事する。今年4月にアイ・アール ジャパン入社、6月より現職。

【ライツオファリング実行に関するワンストップの支援サービス】〜ライツオファリングーコミットメント型の推移と現状〜

―― ライツオファリングの概要と現状の推移について教えてください。

栗尾 ライツオファリングとは、既存株主に株式の保有比率に応じて新株予約権を無償で割り当て、株主に権利を行使してもらうことで資金調達を行う手法です。

 持分割合を維持したい株主は、割り当てられた新株予約権を行使し、行使代金として必要な金銭を払い込むことによって株式を取得することができます。一方で、株主が新株予約権の行使を望まない場合には、新株予約権を市場取引により売却することも可能であり、1株当たりの経済的価値の希薄化による経済的不利益の全部または一部を補う機会を得ることができます。このような点から、公募増資や第三者割当増資などでないがしろにされていた既存株主への配慮がなされたスキームと言えます。

 ライツオファリングは欧州では既に一般的な増資手法として知られています。国内では2010年以降、12社がライツオファリングを実施しています。そのうち10社が今年に入って行いました。日本でも会社法や金融商品取引法の改正などで、ようやく土壌が整ってきたと言えます。

―― 貴社は日本で初めて「コミットメント型ライツオファリング」を実施しましたね。

栗尾 当社は資本市場の発展に貢献するという目的から、コミットメント型を使いました。コミットメント型は、行使されなかった新株予約権を引受証券会社がすべて買い取る仕組みです。つまり調達額が保証されたスキームです。そのために企業は証券会社にコミットメントフィーを支払います。

 一方、ノンコミットメント型は、行使されなかった新株予約権が失権するため、調達額が未確定のスキームです。

―― コミットメント型のほうがスキームとして優れているということですか。

栗尾 一概には言えません。コミットメント型は、調達額が保証される分、コミットメントフィーが発生します。ノンコミットメント型は、調達額が未確定とはいえ、コミットメントフィーが不要である上、過去に実施した企業の平均行使率が90%程度となっており、デメリットとは言い難くなっています。当社は企業へのライツオファリングの提案にあたり、コミットメントとノンコミットメントのメリット、デメリットの双方を説明しています。

 それらを踏まえた上で、企業は公募増資や第三者割当増資等と比較し、ニーズに合致した手法を選ぶべきでしょう。

20131112_50_2

【ライツオファリング実行に関するワンストップの支援サービス】〜手数料算定や会計基準が普及の課題に〜

―― 日本市場でライツオファリングが本格的に普及するための課題、そして貴社の取り組みについて。

栗尾 コミットメント型においては、証券会社がコミットするリスクをどのように算定するかが課題の1つに挙げられます。コミットメントフィーをいくら徴収すれば、事業として成り立つのかは証券会社にとって重要な問題です。

 また、調達コストにかかる会計処理が課題となっています。公募増資では、証券会社が手数料を差し引いた上で増資額を計上するため、損益計算書(PL)上で調達コストが認識されませんが、ライツオファリングの場合は、証券会社の手数料は発行費用としてPL上に計上されます。税制上の利点はあるものの、PL上に計上されることは企業にとって高いハードルのようです。しかし当社自らが増資を実施する際に各種資金調達手段にかかるコストを調査したところ、ライツオファリングが最もコストが掛からない調達手段であることが分かりました。こういった点の理解を促進することも必要だと感じています。

 ライツオファリング実施において当社は、発行全般のアドバイザリーサービスを手掛けるほか、株主を対象に電話で情報提供を行うインフォメーションエージェントサービスを提供しています。そのほか、昨年から参入した証券代行事業や、米国居住株主の保有状況調査(10%テスト)を手掛けています。これらのサービスで順調に顧客を拡大しているところです。

 われわれはIR・SR支援サービスを通じて、株主や投資家の動向を熟知しています。また自らライツオファリングを行った実績も生かしながら、適切なアドバイスを提供していきたいと考えています。

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

入学試験や資格取得のための勉強法については、さまざまなハウツーコンテンツが世にあふれている。そんな中、独自の学習理論で注目されているのが、サイトビジット社長の鬼頭政人氏。勉強法という個人的な問題を解決するためのサービスを、「働き方改革」を推進する法人向けにも展開している。(取材・文=吉田浩) …

鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年2月号
[第45回経済界大賞]
  • ・[大賞]新浪剛史(サントリーホールディングス社長)
  • ・[特別賞]小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)
  • ・[優秀経営者賞]水田正道(パーソルホールディングス社長CEO)
  • ・[優秀経営者賞]青野慶久(サイボウズ社長)
  • ・[ベンチャー経営者賞]及川智正(農業総合研究所会長CEO)
  • ・[ベンチャー経営者賞]山本正喜(ChatworkCEO兼CTO)
  • ・[グローバル賞]ハロルド・ジョージ・メイ(新日本プロレスリング社長兼CEO)
  • ・[100年企業賞]高松建設(高松孝年社長)
[Special Interview]

 新浪剛史(サントリーホールディングス社長)

 創業精神の共有から始めた米ビーム社との統合作業

[NEWS REPORT]

◆海外メーカーを次々と買収 キリンがクラフトにこだわる理由

◆売上高は前期比3割増 止まらぬワークマンの快進撃

◆第3の都市はどこに? 「スタートアップ拠点」争奪戦

◆寿司屋の大将は3Dプリンター? 電通が画策する未来の飲食

[特集]

 もっと眠りたい

 明日のパフォーマンスを劇的に高める

 一流の睡眠術

ページ上部へ戻る