政治・経済

鶴見尚也(セガ社長COO)

鶴見尚也(セガ社長COO)

鶴見尚也氏の一手 〝大企業病〟を一掃するため権限委譲と分社化を実現

 パチスロ最大手のサミーとアミューズメントゲーム機器・施設運営最大手のセガが2004年に経営統合して誕生したセガサミーグループ。遊技機から業務用アミューズメント機器、アミューズメント施設の運営、家庭用ゲームソフト、SNS・スマートフォン向けデジタルコンテンツ、玩具、アニメーション、統合リゾート施設事業など幅広い領域で事業展開している。

 12年4月にセガ社長に就任した鶴見尚也氏は、どのような会社にしていくのだろうか。

「私は会社に入って22年になりますが、ロンドンに12年、サンフランシスコに5年赴任していたので、東京にいたのはたかだか5年半ほど。去年1年間は勉強に費やしました(笑)」と日焼けした顔で笑う。

 鶴見氏がまず手掛けたのは〝大企業病〟の一掃。意思決定のスピードアップを図るため、大幅な権限委譲を行うと同時に、アミューズメント施設の運営を行う事業部門をセガ エンタテインメントに、スマートデバイス向けビジネスを取りまとめる部門をセガネットワークスに、と一部事業部門の分社化を行った。

 セガには「創造は生命」という社是がある。常に時代を先取りした製品を世に送り出す「尖った」会社がセガだった。だが近年、革新のDNAが影を潜め、「丸く」なっている印象があったという。

「コンシューマー事業の構造改革により強化した収益構造を基盤に、まずは13年3月期に黒字回復を実現することが命題です。IPとIDを中心にビジネスを考えていく。1つのIPをいろいろな出口で落とし込んでいくのです。それが家庭用ゲームであったり、スマートデバイス向けゲーム、アーケードゲームであったり、また、ゲーム以外のものも含めて、さまざまな出口を増やしていくということをしていきます」

 事業別の展開については、次のように言う。

「アミューズメント事業では、ぷよぷよ!!クエストアーケードという基本プレー無料のゲームを今年11月に導入します。ゲームはすべて無料ですが、ゲーム内でアイテムを買ったり、時間短縮をしたりする際にお金を入れてもらいます。ゲームセンターで無料というのは初のことです。またアーケードゲームとスマホをネットワークで繋げて遊べるような取り組みも行っています。今まではゲームセンターに行かなくては遊べなかったものが、どこでもできるようになりました」

 家庭用ゲームでも入り口は無料で遊べるものを導入。

「オンラインロールプレイングゲームの『ファンタシースターオンライン2』というもので、携帯型ゲーム機やパソコン向けに無料配信。最大の特徴はゲーム機、パソコン、スマホのゲームデータをクラウドで管理すること。外出してもスマホでゲームを続けて遊べます。ゲームを楽しむアイテムなどで課金する仕組みです」

 携帯電話は、電話の他にメール、音楽、テレビなどいろいろな楽しみ方ができる。このため、競合はゲーム会社だけではなく、ユーザーの時間の捕り合いということになる。

「ファンタシースターオンライン2」

「ファンタシースターオンライン2」

送客システムを無料開放しさらなる顧客囲い込み狙う鶴見尚也氏

 そんな中でこの8月、セガが中心となり、15社がスマホ向けゲームのユーザー開拓で連携するというニュースが流れた。SNSのユーザーにゲームを配信してきたグリーは中抜きされかねないということで、「グリー外し」との報道もされた。これに対し、「まずグリーさんやディー・エヌ・エーさん外しを目論んでやっているわけではありません」と鶴見氏はきっぱり否定。

「スマホのゲームでどうお客さまに自分たちのゲームを見つけてもらうか。まずは、自社のゲームの間で送客システムを作りました。これを自分たちの中だけでやっていたのでは限界がある。そこで同じ悩みを持っているソフト会社さんにお声掛けし、このシステムを無料開放した。いわばギブ&テイクです」

 このシステムには課金する仕組みになっていないが、付加価値が付いたサービスが提供できるのであれば、将来は収益化も視野に入れているという。

「それより関心を持っているのは、例えば電子書籍や株情報、映画なども結合させて、既存のマーケットに限らずいろいろなユーザーを呼び込める大きな電子マーケットを作ること。興味を抱いていらっしゃる異業種の方もいらっしゃいます。とはいえ、自社の顧客を流すわけですから、賛同されないところもあるでしょう。そこは各社の考え方だと思います。最後に使うかどうかを決めるのは、お客さまがこうした取り組みに利便性を感じていただけるかどうかだと思います」

 海外市場の事業展開についても、長い海外経験を生かして各事業分野でビジネスチャンスの発掘を促進していくという鶴見氏だ。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長プロフィ…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

一般には馴染みが薄い産業廃棄物処理の世界。古い慣習が残る業界を、ITによって変えようとしているのがトライシクルの福田隆社長だ。業界の老舗企業がテクノロジー導入に舵を切った背景と今後の展望を聞いた。(吉田浩) 福田隆・トライシクルCEOプロフィール   産廃処理で「B to B版メルカ…

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る