[インタビュー]
累計2500万部突破! 「進撃の巨人」 大ヒットの秘密を語る--木下哲哉(ポニーキャニオン クロスメディア制作部)×川窪慎太郎(講談社『週刊少年マガジン』編集部)
2013年10月15日

3~15メートルの巨人に捕食され続けた人間は、高さ50メートルを超える巨大な三重の壁を築き、巨人が侵入しない安全な領域を確保。その後100年間平和が続いたが、突然50メートルを超える巨人が現れ、壁を破壊。多数の巨人が侵入し、手当たり次第に人間を捕食する。絶望の中で3人の若者は、果敢に巨人に挑むが……。『別冊少年マガジン』に連載中の『進撃の巨人』は、数々の賞を受賞。今年4月からはテレビアニメも放送中。コミックスも8月9日発売の11巻までの累計で2500万部を突破するなど、若者だけでなく、幅広い層からの支持を集めている。
『進撃の巨人』とは
『進撃の巨人』は、諫山創(いさやま・はじめ)による漫画、およびそれを原作とした小説・テレビアニメなどのメディアミックス作品。『別冊少年マガジン』(講談社)の創刊号となった2009年10月号から連載中で、『週刊少年マガジン』(同)にも出張読み切りとして特別編が2度掲載されている。単行本の発行部数は、第11巻までの累計で2500万部を突破している。壁で囲まれた閉鎖的な世界を舞台に、圧倒的な力を持つ巨人とそれに抗う人間たちの戦いを描いたファンタジーバトル漫画。宝島社「このマンガがすごい!」2011年版オトコ編で第1位、11年に第35回講談社漫画賞の少年部門を受賞しているほか、13年4月からはテレビアニメ化され、各局で放送中。実写映画化も予定されている。
『進撃の巨人』は〝応援団〟が分かりやすい設定で大ヒットに結び付く
―― 『別冊少年マガジン』創刊号から連載が続いているそうですが。
川窪 2009年9月に『別冊少年マガジン』が週刊少年マガジン編集部から新創刊されました。『進撃の巨人』はそのときから連載を開始しました。設定が分かりやすいのと、人間が食べられてしまうという、怖いけど気になる存在。初期のころは書店さんとかマンガが好きなブロガーの方などから高い評価をいただき、次第に雑誌やテレビで有名人の方に面白いマンガがあると言っていただき、口コミで広がっていきました。
―― 諫山創さんのデビュー作だそうですね。
川窪 諫山さんは福岡から講談社に電話を掛けてきて、『少年マガジン』に作品を持ち込みたいと。その電話を取ったのが僕でした。まずは半年に1回の新人漫画賞で佳作以上を獲ることがデビューの絶対条件になります。その上で連載案を考え、部内のコンペに出す。これを勝ち抜くのに2~3年くらいかかります。長い人は7~8年、10年かかる方もいらっしゃいます。
―― 早い段階から人気に火が付いたのですか。
川窪 連載開始から3カ月ほど経った時点で読者アンケートが急激に伸び始め、翌年『このマンガがすごい!2011』(宝島社)で1位を獲り、ここから一気に売れ出して、単行本も初版100万部を突破。さらに11年開催の第35回講談社漫画賞少年部門を受賞したのと、日販さんのフェアをやりたい作品のナンバーワンになるなどの応援もいただきました。
―― テレビアニメ化でさらに人気に拍車がかかった?
木下 13年4月から放送開始し、メディアミックスの効果でさらにブースターがかかりましたね。私もこの作品を読んで面白いと思い、テレビがいいのか映画か、あるいはビデオがいいのかと考えた結果、これはテレビが一番いいと思い、毎日放送さんと一緒に組んでやることにしました。まずこの作品は、とても映像映えするだろうなと思い、多くの人に見てもらいたいなと。最近はこういうドラマ性のある作品をアニメ化することは少ないのですが、毎日放送さんは骨太の作品にも取り組んでいたので、うってつけではないかと思いました。
「進撃の巨人」の大ヒットの秘密は”終わらせ方”にあり
―― 2500万部という数字は記録的なんでしょうか。
川窪 各出版社でオープンにしているわけではないので分かりませんが、10年、20年に一度のことです。しかも新人ということではかなり珍しいケースです。9巻までの単行本の発行部数は13年4月で累計1200万部を超えていましたが、テレビアニメが放送されてからはさらに売り上げが伸び、ほぼ倍増したことでも、その加速ぶりがお分かりだと思います。
木下 少年向けの雑誌で連載していて、単行本になってコアな漫画ファンから広がりを見せ、アニメ化で女性層にも拡大しています。漫画は10代後半~20代前半がコア層で、当初は男女比が7:3でしたが、アニメ化後は5:5になっているそうです。
―― ここまでヒットした秘密はどこにあると。
川窪 4話目で主人公が死んだと思わせるシーンがあります。単行本ではそこで次の巻になるようになっていて、次はどうなると読者の気を引く設定にしてあります。諫山さんは漫画の1巻ごとの最後の話が話題になるよう衝撃的な終わらせ方を意識して描いていらっしゃいます。
―― 今後の予定は。
川窪 テレビアニメを中心に、他の映像化やイベントなども積極的にやっていきたいと思います。この8月に江ノ島でサンドアートとのコラボをやりましたが、単行本は4カ月に1回出るので、そこに合わせて今後も何らかの仕掛けをしていきたいです。
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