政治・経済

 SBIホールディングスは証券・銀行・保険・ベンチャーキャピタル等の多様な事業体によるシナジーを追求している。また、既存事業に加え、バイオ関連事業も強化しており、北尾吉孝社長は「“新産業クリエーター”として、成長産業の育成に大いなる貢献を果たす」と強調する。

北尾吉孝(SBIホールディングス社長)

北尾吉孝(SBIホールディングス社長)

北尾吉孝(SBIホールディングス社長)〜これまでの事業と金融サービス〜

―― これまでの事業を振り返ってみてどうでしょうか。

北尾 1999年の設立から14年が過ぎましたが、「もっと社歴が長いのかと思った」と皆さんに大変驚かれます。14年間を振り返ると、その大半が「失われた20年」という言葉に表象されるように、長引くデフレやリーマンショック、欧州債務危機など金融業界にとって逆風が吹いていました。しかし、厳しい環境下で、顧客基盤を順調に拡大させることができたと思います。設立当初にゼロだった連結子会社は144社に、5千万円だった資本金が816億円にまで拡大したという数字を見ても、飛躍的な成長を遂げることができたと自負しています。

―― 昨年末から金融業界に追い風が吹き始めています。

北尾 傘下のSBI証券では、今年5月単月で過去最高となる営業利益41億円を計上しました。5月だけを見ても大変な好況下にあったと言えます。住信SBIネット銀行も、今期第1四半期の数字を見ると通期での100億円の経常利益達成は間違いないでしょう。SBI損保は当初苦しかったですが、今期中に四半期ベースでの黒字化も視野に入り、2016年度までに株式公開したいと思っています。

 金融サービス事業は非常に順調です。生命保険事業も金融庁の認可を前提に、英国のプルーデンシャルグループ傘下の日本法人であるピーシーエー生命保険を完全買収することになりました。生命保険分野が揃うことで私の思い描いてきた「インターネット金融コングロマリット」が完成します。インターネットは21世紀の中核的成長産業ですから、自らの事業や投資を通じて今まで以上にその発展に貢献していきたいです。同時に、もう1つの成長産業と目されているバイオテクノロジーにも注力していきます。

北尾吉孝(SBIホールディングス社長)〜バイオ関連事業の取り組みと経緯〜

―― バイオ関連事業の取り組みについて。

北尾 有望なバイオ企業に投資をしながら、われわれも自らバイオビジネスを手掛けており、この分野はこれから開花期を迎えることでしょう。私どもが16・9%出資する米国ベンチャーのアキュセラは、ドライ型加齢黄斑変性という失明疾患を対象にした世界初の飲み薬を開発しようとしています。加齢黄斑変性は世界中に約1億2千万人の患者がいる中、十分な治療薬がなく、最終的には失明するということですから、大きなマーケットになることが想定されます。

 傘下のSBIファーマでは、アミノ酸の一種であるALAを利用した創薬を開発しています。既に英国でがん性貧血に対する治験を行い、現在フェーズ1を終了しております。脳腫瘍の術中診断薬としては、日本でも既に製造販売承認を取得しました。さらにわれわれは中東のバーレーン政府やバーレーンの複数の大学とその付属病院とも、ALAを使った糖尿病等の臨床研究で連携しています。中東では、国民の糖尿病罹患率が非常に高く、共同研究を行い、新薬開発に結び付ける計画です。

―― どんな経緯でバイオ事業に参入したのですか。

北尾 これまで21世紀の成長産業としてバイオベンチャーに投資をしてきましたが、自ら産業を育成しようと07年に参入しました。株式市況に左右されない事業体制を作るという狙いもあります。われわれは投資と証券業が主軸ですから、市況に業績が影響されがちです。証券業では収益源の多様化を進めて、株式委託手数料への依存度を下げるなど、基礎体力を向上させてきたわけです。また、バイオ関連事業は今期第1四半期で初めて黒字化しました。

北尾吉孝(SBIホールディングス社長)〜今後の事業環境と展望〜

―― 今後の事業環境をどのように予測していますか。

北尾 金融サービスのIT化が一層加速すると思います。スウェーデンでは、10年において国民の88%が一度も銀行に足を運ばなかったそうです。米国でも総取引における支店の割合は5~13%程度で、15年までに銀行の窓口業務が56%減少するという予測があります。

 日本でも確実に金融分野でのネット化が進みつつあります。これがインターネットの〝進化〟と〝深化〟ということでしょう。われわれの証券、銀行の顧客は20~40代が圧倒的に多くを占めています。現在資産を多くお持ちなのは60~70代です。しかし、10年、20年たてば、ネットに親しんできた世代は収入が増え、多くの資産を保有するようになるでしょう。また、相続で若年層への資産移転も進んでいくと思います。

―― 貴社グループの業績にどんな影響が期待できますか。

北尾 SBI証券の前期における純営業収益は証券業界全体で9位です。ネット証券では既にトップですが、今後は業界トップを目指していきます。リテールに比べ、ホールセールビジネスは十分育ってきたとは言えませんが、IPO案件の引受関与率はあらゆる証券会社を抑えて1位となっています。法人と個人のビジネスを両輪とする真の総合証券会社を目指していく考えです。

―― 貴社の10年後の展望は。

北尾 金融サービス、アセットマネジメント、バイオ関連の3事業の売上割合を3分の1ずつとしたいです。バイオ関連事業は非常に大きなビジネスに育つと思います。10年後には、恐らく私は経営の一線から退いているでしょう。いずれは次の世代にバトンタッチをしたいと思っています。ただ、私は現在62歳なのですが、脳の委縮や微小脳梗塞が全くなく、同世代と比べて非常に若いため、医師から大変驚かれました。それでも、現在のハードワークを続ける上で私自身の知力、体力、気力に限界を感じたらすぐに引退しようと思います。

 
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