政治・経済

 大和ハウス工業は、戸建住宅から、賃貸住宅、商業・事業施設まで、多角的に事業を展開し、成長を加速している。住宅をはじめ建築物は耐用年数が長く、社会的使命を帯びると同時に長期間にわたって顧客の評価を受ける。このため、何よりも顧客との関係構築が鍵になるという。

 

大野直竹(大和ハウス工業社長)

大野直竹(大和ハウス工業社長)

住宅部門を軸にさらなる成長を目指す大和ハウス工業

 

―― 経営計画を前倒して、新たな3カ年計画がスタートするそうですが。

大野 2013年3月期に売り上げが2兆円を超えて、第3次中期経営計画の売上高、営業利益、経常利益など、すべて目標値をクリアできたので、1年前倒して第4次中期経営計画を今年から始めます。

 しかし一番難しいと考えているのは、消費税の影響がどう出るか。住宅は間違いなく影響が出るのですが、どのくらい出るか。その読みが難しい。せめて10月頃の感じはみておこうということで、11月に第4次中計を発表したいと思っています。

―― 消費税に関して、住宅の駆け込み需要については。

大野 住宅展示場の来場者が今年に入って増えてきているのは確かで、多少は心理面での影響はあると思います。しかし、お客さまが消費税という言葉を口にするようになっているのはここ3~4カ月のことです。

 この3月期の決算を見ると、住宅は伸びていますが、その伸びは少ない。それに比べて賃貸住宅、商業・事業施設といった分野が非常に大きな伸びを示しています。しかしそれは当社が望んでいる姿ではありません。当社としては、社名が示すように住宅部門をさらに強くしたいと思って、ここ数年、策を打っています。その策が功を奏して、住宅の伸びが期待できる形があるべき姿だと思っています。

―― 新築住宅が減っている状況で、これから住宅を伸ばしていく見通しは。

大野 当社の戸建住宅のシェアは2・3%程度です。いろいろな業界を見ても、市場全体のパイが小さくなったからと言って、シェア2・3%の企業の売り上げが減るのかと聞かれたらノーだと思います。当社も順位では2~3番手の位置にありますが、どの業界を見ても、市場全体の影響を受ける企業は20%や15%のシェアを持っています。そういうことを考えたら、当社の今の数字は満足していませんし、市場全体のパイが小さくなったからといって、販売戸数が減りましたという言い訳はしたくないですね。

―― 住宅の中でも最近はスマートハウスに注力している印象を受けますが。

大野 東日本大震災以降、需要の大きな要素として、省エネ、創エネ、蓄エネという分野はどうしてもお客さまは意識しています。当社はその分野については先駆けて投資してきましたし、良質なサービスが提供できているので、お客さまの支持はそれなりに得られている感触があります。電力やガスが有限であることが、お客さまの中に相当根付いていますので、スマートハウスは今後の柱の1つになってくると思います。

―― スマートハウスでは20年までにエネルギー自給住宅の実現を目指していますね。

大野 これは目標を掲げて挑戦しようということでやっていて、ぜひとも達成したいと考えています。今は一歩ずつですが、階段を上っている段階です。

―― 海外事業の展開は。

大野 まずベトナムに関して言えば絶好調で、予定通りに進んでいます。ベトナムで工業団地を造成し、工業団地を販売していく事業ですが、現地に進出する日系企業を中心に引き合いを受けています。同時に施工も行っています。施工については、今年1月に買収したフジタが実績を上げている分野に積極的に参画していますので、これから順調に伸びてくると思います。

 その他、インドネシアについては、地元の有力なデベロッパーに投資して、工業団地を中心にして展開していきます。また、マレーシアについては、戸建住宅の展開を計画しています。

 

「やっぱり大和ハウスがいい」と言ってもらえるように

 

―― 将来的な目標として、貴社には石橋信夫オーナーが遺した「創業100年で売り上げ10兆円」がありますが、逆算して将来計画があるのでしょうか。

大野 そんなに綿密なものではありません。しかし企業は止まることができません。進化し続けられるかどうか、前進し続けられるかどうかが企業の存在価値としてのあるべき姿だと思います。ですから10兆円だろうが、20兆円だろうが、そういう目標を目指してやっていかないといけません。もちろん効率は時には見直しますが、規模としてはそれだけの社会的使命を帯びているのですから、成長を目指して進んでいきます。

―― 企業が前進し続けるために心掛けていることは。

大野 いろいろなことがあると思いますが、社員によく話しているのは、お客さまととにかく長い付き合いをしろと、それで目先のものにあまりとらわれるなということです。

 当社の場合、お客さまの評価は、建物が建った時に一度評価を受けます。それから建物が存続している中でも評価を受けます。私としては、建物が存在する限り、「この会社で良かった」とお客さまに思ってほしい気持ちがあります。数十年後に建て替える場合にも「やっぱり大和ハウスがいい」と言ってもらえるようにしていきたい。

 また、賃貸や事業施設についても、そこを借りて家賃を払う人たちが、そこで商売をやって良かった、そこに住んで良かったと思っていただかなくてはいけません。みんなに良かったと思ってもらえる形を考えていかないと、企業が成長し続ける方向にならないと思います。そういう面では、長い目で見てお客さまから支持を受けることに重点を置いてやっていけば、いろいろな問題は解決すると思います。やはりこういう商売はお客さまの評判が第一です。その点を強く意識した戦略を練っていきたいと思っています。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

グローバル化が進む中、多くのビジネスパーソンにとって英語力の向上は大きな関心事の1つ。日本人が相変わらず英語を苦手とする理由と解決策について、英語学習アプリで展開するポリグロッツの山口隼也社長を取材すると共に、同社が提供するサービスについても聞いた。(取材・文=吉田浩)日本でますます高まる英語学習熱  201…

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る