[スペシャルインタビュー]
「規制緩和とイノベーション人材の育成に国を挙げて取り組むべき」--中尾浩治(日本医療機器産業連合会会長 ・テルモ会長)
2013年9月17日

アベノミクス〝第三の矢〟の中で、医療分野が成長戦略の柱の1つに位置付けられたことに今後への期待感を強める日本の医療機器メーカー。これを機に世界に打って出ようという機運が高まっている。日本医療機器産業連合会(医機連)会長を務めるテルモの中尾浩治会長に、医療機器産業の成長に向けた課題と進むべき方向性を聞いた。

【なかお・こうじ】
広島県出身。1970年慶応義塾大学法学部卒業後、テルモ入社。95年取締役、社長室長、97年経営企画室長、2002年取締役常務執行役員に就任。その後テルモメディカル社(米国)取締役会長兼CEO、取締役専務執行役員、取締役副社長執行役員を経て、11年より現職。13年より日本医療機器産業連合会の会長を務める。
薬事法改正で開発意欲の湧く環境づくりを
―― 世界シェアで見ると日本の医療機器メーカーは欧米勢に後れを取っていますが主な要因は。
中尾 日本で大手メーカーと言えばテルモ、オリンパス、東芝メディカルシステムズなどですが、売上高はどこも世界ランキングの10位以内に入っていません。上位はほとんどが米国メーカーで、あとは欧州メーカーが数社。こうなった理由として、まず、疾病構造が日本と違うことが挙げられます。昔は日本では消化器系の病気や感染症が多かったのですが、米国では心疾患が多く、その関連市場が拡大しました。心疾患で大きな市場はペースメーカーや埋め込み用の弁などです。日本メーカーはこれらの需要が増えた1970年代や80年代に、関連製品をあまり手掛けていませんでした。
―― 疾患の構造は今もあまり変わらないのでしょうか。
中尾 今は日本でも心疾患が増えましたし、欧米的な疾病構造に変わってきました。それから欧米でも日本でもがんが増えてきました。これは以前にはなかったことです。
―― 心疾患などの領域で日本メーカーの巻き返しはあるのですか。
中尾 もう今から確立された市場に挑戦しようという目立った動きはないですね。それより新しい分野をいかに伸ばしていくかに多くのメーカーは注力しています。例えば心疾患の治療では、MRIによる診断の際に以前のように造影剤を使わなくても大丈夫な技術が登場するなど、性能が大きく進化しています。テルモの場合で言えば、カテーテル治療によって、大きく傷が残るような手術をしなくても済む手法などを導入してきました。この領域では欧米勢と伍して競争しています。
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