テクノロジー

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医療ツーリズムに代表される医療の成長産業化

 

 「医療を成長産業に育てる」と聞いても、ピンとこない人がまだ多いかもしれない。日本人にとって医療は社会福祉という認識が強く、ビジネスとしてとらえるというとどうしても〝儲け主義〟といった悪いイメージを抱きがちだ。だが、世界では医療を含むヘルスケア分野を、経済の牽引役にしようとする動きが既に始まっている。

 典型的な例が、外国人を呼び込み国内の医療機関で診断・治療を受けさせる医療ツーリズムだ。例えばタイやマレーシアでは中近東などの富裕層を主な対象に、民間病院が積極的に患者を受け入れる。タイには年間約250万人、マレーシアには約100万人が、医療目的で訪れるという。

 日本で外国人患者受け入れの動きが出てきたのは10年ほど前。当時からロシア人患者と日本の医療機関の仲介役を果たしてきたロシア専門商社ピー・ジェイ・エル(PJL)の徳大寺泰伸顧問は、

 「当初はボランティアで知り合いのロシア人に日本の病院を紹介していたが、希望者が増えたためビジネスとして手掛けるようになった。当時ロシアでは、医者の腕は悪くないものの設備が不足していて、患者と医者の信頼関係も薄く、日本の病院で治療することが喜ばれた。病院にとっても自由診療で高い報酬が得られるため、大歓迎だった」と、語る。

 2009年以降になってくると、医療を新たな成長産業に育てようという当時の民主党政権の方針で、医療ツーリズムへの取り組みは徐々に活発化してきた。しかし、医療ツーリズムの極度な拡大に関しては日本医師会や厚生労働省が難色を示し、結果的に経済産業省の主導で進められるようになった。その流れで、海外からの外国人患者の受け入れ(インバウンド)の運営を主に担う組織として11年に発足したのがメディカル・エクセレンス・ジャパン(MEJ)である。

 MEJの活動は、12年に政権交代を果たした自民党・安倍晋三内閣が医療分野を成長戦略の柱とする方針を打ち出したことで、さらに範囲を広げていく。13年4月に一般社団法人として組織を改編、インバウンドに加えて、日本の医療機関や医療機器メーカーが一体となって海外に進出するアウトバウンドの領域も手掛けるようになった。会員企業にはテルモ、東芝メディカルシステムズ、日立メディコ、オリンパスメディカルシステムズなど日本を代表する医療機器メーカーの他、三菱重工業やソニー、富士通なども名を連ねている。

 さらに、ここへ来て医療の産業化に当初は消極的だった厚労省も積極的な姿勢を見せ始めている。同省が5月に設置した医療国際展開戦略室では、日本の医療技術やサービスの輸出促進を支援することが決まった。インバウンドに関しても、外国人患者の受入れを行う医療機関を認証する機関としてJMIP(ジェイミップ)を設立し、安心・安全な医療の提供を促進する方針を示している。こうした動きに対しては、

「当初は経産省がインバウンドもアウトバウンドも主導する流れができかけていたが、民主党時代と違って安倍政権は省庁間の競争意識を利用することで、両者をうまく巻き込んでいる」(医療業界関係者)との声も聞かれる。いずれにせよ、官民を巻き込んだオールジャパン体制の構築が進んでいるのは確かだ。

 

日本式の医療を海外で展開

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 01~10年の間に医療サービス、医薬品、医療機器を含めた世界市場は毎年平均8・7%の成長率を実現し、市場規模は520兆円に達した。市場は今後も着実に拡大すると見られており、MEJでは新興国を中心に20年までに10カ所程度の医療機関創設、30年までに5兆円の市場獲得を目指す。

 MEJのプロジェクトとしての実績はまだ少ないが、これまで日本の医療機関が絡んだアウトバウンドの実例としては、北斗病院がPJLと共同で展開しているウラジオストクの画像診断センター、岡山大学医学部付属病院、亀田総合病院がミャンマーで展開している乳がん検査、麻田総合病院、瀬戸検診クリニックが中国で展開している検診サービス等、さまざまなものがある。

 これらはいずれも、現地にはない日本式のサービスを持ち込んでいるのが特徴。ウラジオストクのケースではロシアの医療機関に設備を持ち込み、日本から遠隔診断を行っている。富裕層のみならず一般庶民も受診できる料金設定が奏功したのか、毎日20~30人の受診希望者が訪れる盛況ぶりだという。

 経済産業省の担当者は、「アウトバウンドの場合、基本的にターゲットは富裕層のみではないが、ボランティアではなくきちんと収益が見込めることが前提。貧困層に対しては医療の普及啓蒙の活動を行い、実際の収益は富裕層から得るというやり方もある」と、説明する。富裕層に対しては、場合によっては日本に来て治療を受けてもらう選択肢も用意するという。

20130917_24_01 医療へのニーズが高い新興国は医療関係者にとって宝の山にも見える。とはいえ、欧米勢など他の先進国との競争や、現地スタッフの育成など一筋縄ではいかないのも確かだ。

 「大半の病院は様子見で、積極的に海外に出ていこうというところは決して多くない。どこかがうまくいけば自分たちも出ていくという姿勢」と、ある病院関係者は話す。

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