国際

米国とスペイン10年国債利回りの推移低インフレとユーロ高是正を狙った追加緩和

 前回は米国の長期債利回りの低下について取り上げた。順調に回復しているように見える米国経済にも低インフレという「アキレス腱」があり、それが根強い金融緩和の長期化観測につながっていると指摘した。低インフレがより深刻なのは欧州である。ユーロ圏の消費者物価上昇率は0・5%とデフレに陥る寸前のところまで低下した。これまでは国際価格に連動しやすいエネルギー価格の下落が全体の消費者物価を押し下げていたが、最近では低インフレが広範に及び2%のインフレ目標を大幅に下回る水準が長期化している。

 こうしたことから欧州中央銀行(ECB)は前回の理事会で追加緩和策を決定した。主要政策金利を過去最低の0・15%まで引き下げることをはじめとする政策パッケージを打ち出した。そのなかには預金金利をゼロ%からマイナス0・1%にするということも含まれた。預金金利がマイナスということは民間の銀行がECBに余剰資金を預けても付利されず逆に手数料を徴収される。主要国の中央銀行でマイナス金利の適用は初めてのことである。

 ECBは、ユーロ圏の銀行が企業向け融資に慎重なことも域内経済が停滞しデフレリスクをはらむ要因と見ている。だからこそ預金金利をマイナスにして銀行の資金を融資に向けさせようとしていることに加え、域内企業への融資積み増しを公約する銀行に、低利の長期資金を最大4年間にわたって供給することも決めた。

 ECBのドラギ総裁は市場を「利用」するのに長けている。かつて「バズーカ砲」とも言われたLTRO(3年物長期流動性供給オペ)を放ち欧州債務危機を収束させた手腕は語り草だが、そのメカニズムは市場の「キャリートレード」を利用することだった。ECBが問題となっていた南欧の国債を買い取る用意があると言っておきながら実際には銀行に低利の資金を与え、彼らに南欧国債を買わせたのだ。今回も金融機関にキャリートレードをさせる意図だろう。まず、金融機関が資金を中央銀行に預ける経路を一切断った。マイナス金利は預金金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に適用される。当初、預金金利だけのマイナス金利なら、金融機関の資金は当座預金に流れるとも言われたが、そこの経路も断たれた格好だ。

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