マネジメント

女性の社会進出の難しさについて、今から40年前はどうだったのだろうか。1974年1月に行われた評論家の俵萠子氏と文化学園理事長の大沼淳氏の対談から、当時の状況を振り返る。

俵萠子

俵萠子(たわら・もえこ)
(1930〜2008)大阪府出身。産経新聞社記者を経て、女性問題や教育などの社会評論で活躍した。

 

女性の社会進出には障害が多すぎる状況

 

大沼 先年中国へ行ってきたんですが、中国の夫婦は仕事も家事も男女平等でしたね。だから、今の日本でだってやればできないことはない。だが、女性には女性としての生き方もあるんじゃないでしょうか。

 〈女としての生き方〉と男が言う時は決まって、主婦として母として家庭を守れということですね。私は決してそれを否定しているわけではないが、働きたい女性にしてみればそれは押し付けに聞こえますよ。

大沼 私自身のことになって恐縮だが、私は子どもの時からずっと母親の強い影響を受けてきていますからね。今でも、そんな気持ちで仕事をしています。それほど母の影響力は強い。

 私も自分の娘に、女がどんなに素晴らしい存在であるか、子どもを産み育てることがどんなに楽しいことであるかいつも話しています。でも、女にも働く自由があるんです。〈働きたい女性にとって障害が多過ぎる〉ということを私はいつも言っている。

 大沼さんの学校も、女性の教育をしておられるし、女性の職員の方も多いと思いますが、働きたい女性にとって今の社会は門戸を閉ざしていると言っていいでしょうね。

大沼 おっしゃるとおりでしょうね。常々それは考えていますよ。なにも、〈女性は働くよりも家におれ〉と言っているわけじゃなくて、働きたい女性は積極的に、社会的に生きるべきだというのが、私どもの教育の根底にありますからね。

 しかし、社会はそれに十分に応えてくれませんからね、現実のところ。記者生活をしていた頃、私は出産という女の経験をした。産前産後の6週間という休暇はある。

 だが、産後の6週間だけでは母としての役目は果たせませんよ。朝、出勤前に子どもに乳を飲ませてくる。ところが3時間もすれば乳房が張ってくる。仕事の途中で洗面所に駆け込んで乳を自分で絞るわけです。

 子どもは今頃飲みたいといって泣いているだろう。捨てる母乳に何度私は涙を流したことか……。

 

大沼淳

大沼淳(おおぬま・すなお)
(1928〜)長野県出身。役人から請われて文化服装学院の経営を任される。対談当時は企業の社長も兼務していた。現・文化学園理事長。

女性の社会進出実現には意識改革が必須

 

大沼 ……(しばらく絶句)私どもの学校では職員のうち女性が約8割ですから、その点休職制度など女性の立場になって考えているつもりですが……。保育所などの設備についても考えていますが、この場合職住近接というのが第1条件ですからね。ラッシュに子どもを連れてくるわけにはいかないし……。

 せめて、1年の休職期間は欲しいですね。子どもが成長するまでは家庭にいて、その後、再就職の道を開くとか方法はいくらでもあるんです。つまり、仕事をする自由と主婦として家にいる自由が女性にはあり、そしてそれを選択できる社会環境をつくってほしいというのが私の願いです。

大沼 男性に比べれば選択の自由には限度がありますよね。それにはまず、日本人社会の意識構造を変えなければなりません。一般的に考えても、例えば教育についても画一化していますよね。それが、女性についても同様に語られるわけですよ。主婦の座が女性のあるべき位置だとね。

 全然別のものなのに、家事と育児を一段下に見ていることは確かですね。まずそこから革命を起こさなければ。

大沼 文化大革命にも匹敵しますね。

 (笑)そこまでやらなければなかなか変わりません。最も不幸な女性というのは、働きたいのに働ける環境にない女性であり、育児に専念したいと願っているのに経済的に働かざるを得ない女性ですよ。この環境を変革するための運動がウーマン・リブです。

大沼 体制内での革新が第一条件ということでしょうね。

対談の様子 その環境づくりを、大沼さんのような男性に、こと女性教育に携わっている方に、力を貸していただきたいですね。

大沼 つまり、私がウーマン・リブの代弁者ということになるわけでしょうか(笑)。

 女性は女性で、一所懸命やりますから、ぜひ男性側からも、働き掛けてほしいところですよね。

(構成/本誌・古賀寛明)

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