政治・経済

[まの・としき]

[まの・としき]
多摩大学大学院教授
多摩大学医療・介護ソリューション研究所所長
1987年名古屋大学医学部卒業。医師、医学博士、経済学博士。臨床医を経て、95年9月コーネル大学医学部研究員。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。同時に英国レスター大学大学院でMBA取得。2004年、京都大学にて経済学博士取得。05年6月多摩大学医療リスクマネジメント研究所教授に就任後、現職。名古屋大学医学部医学科客員教授、東京医療保健大学大学院客員教授などを兼任。厚生労働省独立行政法人評価委員会委員、日本小児科医会 国際委員などを務め、行政刷新会議規制・制度改革に関する分科会ライフイノベーションワーキンググループ委員などの公職を務めた。近著に『「命の値段」はいくらなのか?“国民皆保険”崩壊で変わる医療』(角川oneテーマ21)がある。

 医療が成長分野であること自体は疑いの余地がない。米国ではそもそも医療を社会保障の枠組みでとらえず、産業でありビジネスであると見なしている。その他、ほとんどの先進国においてもヘルスケア、バイオ、予防医療などについては、ビジネスとして力を入れている。iPS細胞が典型例だが、ライフサイエンス分野では今後も多くのブレークスルーが期待できる。市場が拡大していくのは確実だ。

 ただ、問題はボリューム感だ。日本はもともと医療を社会保障の枠組みの中で行ってきたので、ビジネスとしてとらえることに馴染みが薄い。自動車や電機などほかに大きな産業がいくつもある中で、ヘルスケアが国を牽引していくほどの巨大産業になるとは考えにくい。とはいえ高齢化が進む中、ヘルスケア産業が発展する効果は大きいし、雇用創出効果も期待できるため、成長の支援には賛成だ。

 世界における日本の競争力については、日本の医療機器メーカーは技術的には優れたものを持っているが、欧米企業に比べ海外進出は遅れている。もともと海外市場でシェアを獲得するという発想を持つ企業は少なかった。今後、市場拡大が見込まれる新興国では医者が機器の購入決定権を持っているケースが多く、使い慣れた機器を使用する傾向がある。そのため、新興国市場でも今から欧米勢の牙城を崩すのは難しいかもしれない。

 医療法人の場合は、最近は是正しようとする動きがあるものの、これまで組織体としての経営をきちんと行っているところが少なかったという問題がある。基本的に日本の医療界は厚労省の舵取りに従ってきたため、独自の経営戦略はほとんど必要なかった。それが、いきなり世界に飛び出してビジネスを展開してこいと言われても、実行できるところは少ないだろう。

 力のある病院は、経産省の後押しがなくても独自に海外展開している。MEJのプロジェクトで病院と医療機器メーカーが共同で海外進出しても成功例をどこまで作れるかはまだ未知数だ。進出先は、今後中間層が高度医療を受けやすくなりそうな地域が有望と思われる。

 混合診療の解禁に関しては、最先端の領域で部分的に認めたほうが良い。ただし、いずれは保険に組み込む前提であれば、財源の問題が出てくる。そこで提案したいのが、かかりつけ医制度の充実だ。大学病院などの専門医に診てもらう場合は紹介状がなければ1万円程度の負担を課すことにする。むやみに外来を利用しない制度を導入することで、医療費の抑制につながるのではないかと考える。 (談)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

「損して得を取る」事業モデル  不動産登記情報を扱う「登記簿図書館」をご存じだろうか。 かつては法務局でしか取得できなかった登記簿情報がオンラインで簡単に取得でき、かつ、法務局では対応できないさまざまなサービスを提供するというものだ。保有登記情報は全国2450万件、会員数9500社を誇る。 この登記簿図書館を…

支持政党なし

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

独自のプラットフォーム戦略で、外食産業の新たなスタンダードを創造する――きちり社長 平川昌紀

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界9月号
[特集]
人材恐慌 この危機をどう乗り切るか

  • ・企業が脅える人材恐慌最前線
  • ・人材不足の処方箋 働き方改革でどう変わる?
  • ・加藤勝信(働き方改革担当大臣)
  • ・神津里季生(日本労働組合総連合会会長)
  • ・中田誠司(大和証券グループ本社社長)
  • ・若山陽一(UTグループ社長)

[Interview]

 松本正義(関西経済連合会会長)

 2025大阪万博で関西、日本は飛躍する

[NEWS REPORT]

◆第4次産業革命に走る中国、遅れる日本 松山徳之

◆格安スマホに対抗しauが値下げ これから始まるスマホ最終戦争

◆減収続くも利益率は向上 富士通・田中社長の改革は本物か

◆破綻からわずか2年 スカイマークが好調な理由

[政知巡礼]

 野田 毅(衆議院議員)

 「社会保障の安定した財源は消費税しかない」

ページ上部へ戻る