テクノロジー

小澤洋介(J‐TEC社長)

小澤洋介(J‐TEC社長)

自家培養軟骨の適用拡大で再生医療製品の実用化が進む

 

 再生医療ベンチャーとして、国内で初めて再生医療製品の保険収載を達成、医療現場での実用化に成功したJ‐TEC。自家培養表皮「ジェイス」に続き、今年度からは自家培養軟骨「ジャック」も製品化し、着実に実績を積み重ねている。

 そのジャックは、患者数が多い膝の変形性関節症については残念ながら治療の適応対象から除外されたが、外傷性軟骨欠損症と離断性骨軟骨炎の患者には使用が認められた。

 保険償還価格は208万円。「これは画期的だった」と小澤洋介社長は語る。医療機器の場合、保険償還価格はメーカー申請価格の半額程度に抑えられるケースが多いが、今回は申請価格293万円に対し、当初の見込みを大幅に上回ったからだ。

 さらに、通常は製品1個当たりの価格として値付けされるところが、1回の手術で複数個のジャックを使っても価格が変わらないという点もこれまでとは違うところだ。一見、メーカーにとっては不利な条件にも思えるが、むしろ製品の普及を促進する上では有利な条件になると小澤氏は見ている。

 

再生医療ベンチャーで初の黒字化を目指す

 

 これまでの実績が考慮されたこともあり、保険適用に関する条件はジェイスを製品化した時ほど厳しくない。しかし、それでも手術を行う医師に関しては専門分野での経験や手術を実施した症例数、施設に関しては導入機器の面などでさまざまな条件が付けられている。

 J‐TECから従業員を派遣して、製品を使用する前に医師に対して事前の研修を行う義務も課せられている。研修は全国約150施設で実施することとなり、準備段階を含めると1施設当たり2カ月ほどの期間が必要だという。すべての施設を終えるまで2年程度はかかる見込みだ。

自家培養軟骨「ジャック」

自家培養軟骨「ジャック」

 このように1つの再生医療製品が実際に医療現場で使用されるまでには多くの苦労があるが、同社ではようやく15年度に黒字化の見通しが立つなど、徐々に明るい兆しが見え始めている。

「分母は小さいものの、今年度第1四半期は売上高で前期比245%を達成しました。ジェイスが着実にマーケットに浸透しているのに加え、下期にジャックの出荷が増えてくれば、業績上振れの可能性も出てくるでしょう。日本のバイオベンチャーでわれわれのようなメーカー型の企業が黒字化できれば初のケースとなります」と、小澤氏は期待を込める。

 

 

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る