文化・ライフ

天野春果(川崎フロンターレ プロモーション部部長)

天野春果(川崎フロンターレ プロモーション部部長)

川崎フロンターレ独自のプロモーション部

―― プロモーション部とはユニークですね。

天野 他のJクラブにはないかもしれませんね。僕たちの仕事は、ひと言で言うと、クラブを好きになってもらうことでしょうか。

 まずは、スタジアムに行ってみようかと思ってもらうこと、スタジアムに来ていただいたら、もう一度来てみようと思っていただくことですね。

―― 地元とはどんな関係を。

天野 どんなビジネスでも人に喜ばれることが基本ですよね。誰かのためになるから商売が成り立つわけで、川崎フロンターレというのは、川崎のクラブなので、「川崎のために」っていうのがいちばん大きいですね。

 試合に勝つことが目的ではなくて、試合に勝つことで、川崎に住んでいる方や川崎にかかわる方に喜んでもらうことが重要なんです。

 地域の人たちを幸せにできなければ、需要が生まれませんし、需要が無ければ、川崎フロンターレというクラブにもお金は入ってこないわけですから。

―― では、勝負にはこだわらない。

天野 いつでも勝てればいいんでしょうが、そんなことはあり得ません。

 だから、勝っても、負けても、どんな時でも楽しんでもらわなければいけないと思っています。だから、ほんと試合のある日は、お祭りと一緒だと思っていますよ(笑)。

川崎フロンターレ、勝敗に関わらずまずは好きになってもらいたい

―― 具体的にはどんな活動を。

天野 最近だと、鹿島アントラーズとの試合に向けて「闘A(とうえい)まんがまつり」というイベントを行いました。「A」はアントラーズのA。そこと闘うというので、闘Aです。東映ではありません。川崎在住の有名な漫画家さんにイラストを描いていただきました。漫画、アニメは川崎の地域財産でもあるので、川崎市と協力し合って、どちらも満足する形で行っています。

―― 「ドラえもん」も登場したとか。

天野 藤子・F・不二雄ミュージアムが多摩区にあることと、フロンターレもサッカーを通じて元気を与えるという共通の思いから、パートナー契約を結んでいます。

 ホームゲームの時には、スタジアムに「どこでもドア」がありますし、売店では「暗記パン」も売っています。

川崎フロンターレからスポーツの力はビジネスにもなるということを知ってもらいたい

―― サポーターが天野さんの携帯電話の番号を知っているそうですね。

天野 お客さんなんですけど、一緒につくっていく仲間みたいな感覚なんです。サポーターもシーズンチケットを購入して、お金払って、会場の雰囲気をつくるために試合を背にして盛り上げてくれるんですから、ありがたいですよね。だから、私たちもお金払ってくれる人と一緒にいかに楽しむかを考えています。珍しいビジネスですよね。

―― スポーツを地域に根付かせるには。

天野 僕はかつて米国に留学していたのですが、向こうの人はスポーツの力を分かっているんですよね。ビジネスにもなるし、生活も豊かにするものだと、知っているんですね。

 日本にはそんな文化がないのではなくて、そこに気付いていないだけだと思っています。だから、スタジアムに足を運んでもらうことで川崎という街を知ってもらうこと。これからも、私たち自身が楽しみながらいろんな仕掛けを積み重ねていきます。

***

 

川崎フロンターレプロモーション部部長天野氏のスポーツを超えた取り組み

 

 

川崎市の子どもは「算数」を フロンターレと共に学ぶ

川崎市の子どもは「算数」を
フロンターレと共に学ぶ

「川崎フロンターレ算数ドリル」

 ロンドン視察中に現地の強豪クラブ・アーセナルのスペイン人選手がスペイン語の教科書に出ていることを知った天野氏。帰国後、副教本である「ドリル」を作ろうと行政に掛け合うが、営利企業であるフロンターレに厳しかった。しかし、ある小学校の校長先生が興味を持ち、共同で作ることに。作るからには本格的なものにしようと、算数もフロンターレも好きになるように工夫した。

 例えば選手のシュートの速さや、ピッチの大きさなども問題に出てくる。2009年の構想から1年たってようやく完成した。そのドリルをもとに、校庭で選手たちと算数の野外授業も行っている。4年たった現在では、川崎市全域の小学校で配布されている。

「いっしょにおフロんた~れ」

 シーズンオフに行う川崎市の銭湯(川崎浴場組合連合会)との共同企画で、昨年は映画化された漫画「テルマエ・ロマエ」(エンターブレイン)とのコラボレーションで話題になった。3回目の今年は、川崎市の人権・男女共同参画室とNHKEテレの番組「みいつけた!」との4団体のコラボレーション。子どもたちに人気のキャラクター「オフロスキー」と、フロンターレの中村憲剛選手扮する「オフロンスキー」がタッグを組んで、川崎市内の銭湯を盛り上げた。

 プロモーション期間中は、スタンプラリーを行い、市内に60以上ある銭湯すべてを回った人だけに贈られる「完湯賞」も7人が達成した。また高津湯などは、期間中だけ「オフロンスキー湯」と名前を変えて営業するなど、川崎市内全域を活気づけている。

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