政治・経済

 日本のプロ野球は、親会社の広告塔という意味合いが強かったが、最近では地域を意識した経営を行う球団が増えている。埼玉県を本拠地とする埼玉西武ライオンズも、地域密着の取り組みに積極的だ。

佐々木将之(西武ライオンズ事業部長)

佐々木将之(西武ライオンズ事業部長)

経営改革を機に地域密着化を推進

 西武ライオンズは2008年に経営改革を行い、それまでの体制を一新した。球団名を「西武ライオンズ」から「埼玉西武ライオンズ」と変更、地域に根差した球団運営を展開している。

 同社は13年3月期まで2期連続の黒字化を達成しているが、その背景にある経営改革はタテとヨコの2つの側面で展開している。タテの展開は、野球をベースに、ファンクラブ会員を中心としたコアなファン層へ訴求するロイヤルカスタマーマーケティング。限定グッズやイベント優待など、ファンクラブ会員が来場を重ねるほどメリットが上がるシステムを構築したほか、試合後のフィールドでのキャッチボールや球団OBによるノック体験など、野球好きなコアなファンが来場したくなる参加型イベントを毎試合行っている。

 その結果、ファンクラブ会員1人当たりの来場回数やチケット・グッズ・飲食などを含めた消費単価が確実に上昇、収益に結び付いている。

 もう1つのヨコの展開が地域密着で、経営的には顧客接点を増やすことが目的。08年から所沢市の西武ドーム以外に、さいたま市の県営大宮球場でも試合を開催している。昨年からは大宮区のイメージカラーであるオレンジ色を意識したプロモーションを展開。試合で選手がかぶる帽子にオレンジ色のラインを入れ、オレンジ色を交えた応援グッズを販売している。現在は年間3試合を組んでおり、所沢とは異なるファン層の拡大を図っている。

 11年からの企画として、試合ごとに埼玉県および西武線沿線の感謝デーを展開している。対象自治体の住人に低価格の優待チケットを販売。試合当日は各自治体のゆるキャラが来場したり、ご当地グルメの出店を設けたりしている。動員効果と同時に、自治体との関係構築にも役立っているという。

 自治体との連携では、社会貢献活動に注力している。日常の活動として、キャラクターの「レオ」と「ライナ」が地域の幼稚園や保育所を訪問して子どもたちと交流。また、NPO法人と協力し、老人福祉施設などでシニア層を対象にレクリエーションゲームを実施している。

「提携先からも提携先が抱える問題解決のためにライオンズと何かできないかという要望があり、積極的に応えている」(事業部長・佐々木将之氏)

 例えば、埼玉県が進める「ウーマノミクスプロジェクト」の支援を行っている。同プロジェクトは、女性が働きやすい環境を整え、社会進出を促すもの。広報活動にライオンズが協力するほか、同プロジェクトの認定企業に西武ドームの試合の招待券を提供する。

 西武鉄道と連携した企画も行っている。その1つが球団の過去の歴史を振り返る毎年恒例の企画「ライオンズクラシック」で、今年は東京セネタースを取り上げた。東京セネタースはライオンズと直接の関係はないが、プロ野球創成期に西武新宿線の上井草を本拠地とし、当時の西武鉄道も出資していた。昨年100周年を迎えた西武鉄道のアニバーサリー企画という意味も含め、7月26~28日にライオンズが東京セネタースのユニフォームを着て試合を実施。西武線沿線の地域密着の要素を含んだ企画になった。

ライバルシリーズ開催時には球場周辺に両県のグルメコーナーを設置

ライバルシリーズ開催時には球場周辺に両県のグルメコーナーを設置

埼玉西武ライオンズが郷土愛を育む新たなイベントを開催

 今年から始めた新たな企画として、3rdユニフォームに「埼玉ユニフォーム」を設定した。デザインは、09年から新たに設定したチームカラーである濃紺の「レジェンド・ブルー」を基調に、胸には「Saitama」のロゴが入り、右肩には埼玉県の県章が入る。この埼玉ユニフォームをファンクラブの今年の入会特典として会員全員に配布した。

「埼玉に愛着を感じてもらうと同時に、ファンを巻き込んだ企画を展開する」(佐々木氏)

 埼玉ユニフォームの企画は年間3カードで実施。1つ目は6月21~23日の試合を、「GO!ファンクラブシリーズ」として開催した。ファンクラブがビジネスの基盤であるため、埼玉ユニフォームを着て行う最初の試合は、限定グッズや限定イベントなどファンクラブ会員にメリットのある企画を開催した。

 2つ目は7月5~7日に千葉ロッテマリーンズとの「ライバルシリーズ」を実施。ちょうど千葉ロッテマリーンズでも昨年に千葉移転20周年を記念して「千葉ユニフォーム」を作製したことから、マリーンズは千葉ユニフォームを、ライオンズは埼玉ユニフォームを着て試合を行った。また、球場周辺では両県のグルメコーナーなどを設けた。千葉県と埼玉県の「微妙なライバル意識」に焦点を当て、双方の自治体を巻き込んだイベントとなった。同様のイベントは9月6~8日に千葉でマリーンズのホームゲームでも行う。

 3つ目が昨年から開始した「埼玉フェスタ」で、8月23~25日に実施する。同イベントは彩の国さいたま魅力づくり推進協議会との共催により、埼玉県がバックアップ。県内の相当数のご当地ブースが出展するほか、各自治体のゆるキャラやご当地ヒーローが集まって会場を盛り上げ、さながら埼玉県民デーの様相を呈した雰囲気になる。

 今回の埼玉ユニフォーム企画の実現に向けて、自治体との関係が相当深まったという。そしてこの関係強化が地域貢献活動をはじめCSR活動などに派生してきている。ライオンズとしては、今後もこうした地域との連携に注力していく方針だ。

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