文化・ライフ

 日本選手権7連覇、「北の鉄人」と呼ばれた「新日鉄釜石」をルーツに持つ、釜石シーウェイブス。その応援には昔も今も大漁旗「福来旗(ふらいき)」が舞う、震災後の厳しい時にも多くの住民がラグビーを欲した。釜石にとってシーウェイブスとは何か。街とクラブの関係を聞いた。

小原崇志(釜石シーウェイブスRFC ゼネラルマネージャー)

小原崇志(釜石シーウェイブスRFC ゼネラルマネージャー)

小原崇志氏は語る 苦難を乗り越える鉄とラグビーの街

―― 7連覇していた頃の「新日鉄釜石」のイメージは。

小原 実績どおり強かったですけど、家族的な固い絆のチームだなと感じていました。

 私の出身地が、釜石の近くの北上市ということと、当時、明治大学ラグビー部の選手でしたので4年間釜石に合宿に来ていました。練習の後で食事をごちそうになるなどアットホームな雰囲気がありました。

 ただ、当時は地元の住民にとっても、新日鉄のラグビーチームというとらえ方で、地域と密接につながってはおらず、地元でも人気が出たのはだいたい4連覇した頃からだったでしょうか。

―― 2001年に、クラブチーム化されました。

小原 今まで企業の傘の下にいましたから、当然混乱したようです。製鉄所の外で働く選手もいますので練習時間の問題やプロ化の波が押し寄せたので契約の問題などが出てきました。今もまだ完全に解決したわけではないと思っています。

 地域との関係も変わりました。現在も新日鉄の支援がメーンですが、法人、個人のサポーター会員の獲得を積極的に展開しました。今も多くのサポートを受けています。

―― 3・11の震災がありました。

小原 釜石の街も甚大な被害を受けました。練習場のある松倉グラウンドは、内陸にあるので津波の被害がなく救援物資のヘリポートになっていました。ただ、親戚や友人を亡くした選手やスタッフもいましたし、被害を目の当たりにしますと、ラグビーどころじゃないと誰もが思ったようです。

 でも、住民の皆さんが口々に「ラグビーやってくれ」、「練習頑張ってくれ」って言ってくださるんですね、多くの人に言われたことで、5月くらいから練習を開始できました。

 住民の皆さんの言葉の背景には、「釜石はラグビーの街だ」という思いがあると思うんです。ですから、私たちが強くなることによって、住民のみなさんに自信を取り戻してもらう、元気を取り戻してもらう、その起爆剤になれればと思っています。

釜石シーウェイブスの応援にはいつも福来旗が舞う 写真:釜石シーウェイブスRFC

釜石シーウェイブスの応援にはいつも福来旗が舞う(写真:釜石シーウェイブスRFC)

小原崇志氏の思い W杯招致のために、大事なのは「強さ」

―― どのような地域貢献を。

小原 小学校から高校までのラグビー授業のお手伝いはもちろん、ラグビーに関係のない地域の清掃活動などにも積極的に参加しています。ニュージーランドの選手もいるんですが、彼らはボランティアの意識が高いですね。

 例えば、仮設住宅の引っ越しで、数名協力してくれませんか、というお願いがあると、すぐに「やります」と手を挙げてくれるんです。

 彼らのスポーツの原点を考えると地域のスポーツクラブなんですね。だから地域とのつながりを大事にする。日本は学校体育が基本ですからね。

 だから、われわれも、そのような地域に根付いたクラブを目指しています。クラブ化した時からシーウェイブスジュニアという組織をつくり、今では、その年代の子がトップチームに上がってきています。12年も続いたことで子どもの成長も見れますし、うれしいですね。

 企業チームも、隣の席に座っていたから応援できるのであって、お金だけでつながっていても仲間だとは思わないですからね。地域のクラブ化で一番大事なところは、地域で生まれ育った子が、大きくなって地元のクラブに入って活躍する。それが望ましい姿だと思っています。

―― 19年ラグビーW杯招致を目指しているそうですが。

小原 行政としても被災した釜石を再建するために、ワールドカップを起爆剤にしようと思っています。

 もちろん、私たちも積極的にかかわっていきますが、一番重要なのは私たちが強くなることです。強くなければメッセージも届きませんし、弱小チームが何を言ってもしょうがないんです。

 だから、強くなってトップリーグに昇格して活躍し、東北の釜石にこんなチームがあるんだと発信し続けていければと思っています。

 そして、被災した鵜住居(うのすまい)地区に競技場ができれば、そこを核に新しい街づくりをしていければと考えています。

 例えば、競技場に付帯して病院やスポーツジムなど、日常使える施設を提案しています。あそこに行けば、運動もできて、身体も診てもらえる。

「する人」、「見る人」、「応援する人」が一体になれる、そんな競技場にできればと思っています。

―― 最後に釜石にとってシーウェイブスとは何ですか。

小原 街のシンボルでしょうか。われわれの活躍が「釜石の元気!」だと思ってほしいです。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る