政治・経済

 これまで〝高級食〟の代名詞だった寿司を一般大衆が気軽に食べられるものとして認知させたのが回転すしの存在だ。1皿100円というリーズナブルプライスの実現により、新規顧客も急増、今や老若男女を問わず高い支持を受けている。

 しかし、一方で、競走は熾烈を極め、これまで主戦場だった郊外店に加え、現在では首都圏でも激しいシェア争いが展開されている。「スシロー」を展開するあきんどスシローの豊﨑賢一社長に、現状と展望を聞いた。

豊﨑賢一(あきんどスシロー社長)

豊﨑賢一(あきんどスシロー社長)

豊﨑賢一氏の戦略 新価格帯を打ち出した背景

―― これまでの1皿105円から追加で189円という新価格帯を打ち出しました。一見、強気の価格設定に思えますが、実施した背景は。

豊﨑 弊社の客層が広がっていく中、お客さまの中から「もう少し高くてもいいから、より高級なネタを食べてみたい」との声を聞くようになったことが契機です。これまでの1皿105円という制約にとらわれず、弊社の企業理念である「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」をより追求できるという理由から開始しました。2011年7月より関西の実験店で販売を開始しましたが、売り上げやお客さまの声を分析した結果、予想以上の手ごたえを感じました。心配した価格への抵抗感もさほど見受けられず、また客単価向上にもつながったため、本年4月から順次全国導入へと踏み切りました。

―― 現在の導入店舗は何店舗になりますか、また、地域による差は出ていますか。

豊﨑 7月末で351店舗の全店に導入する予定です。地域差はさほどありません。むしろ、店舗間の差が大きいと言えます。105円商品以上に取り扱いの難しいものや、技術を要するものもあるため、高価なネタだけに提供タイミング、数量などによる廃棄率のブレが各店舗で若干の違いが発生しており、現在は店舗オペレーションの統一が課題となっています。

―― 牛丼チェーンなど現状でも低価格を打ち出している外食は多いですが、顧客を奪われる懸念はないのですか。

豊﨑 大きな懸念は感じていません。弊社の主軸商品はこれまでどおり105円ラインですので、競合他社への競争優位性を損なうことはないと認識しています。189円ラインに関しては、105円ラインに飽き足らないお客さまに対し、「こんなものもありますよ」「食べたい方はぜひ」というスタンスで、新たな選択肢を増やす存在と位置付けています。

―― 外食産業全体に言えることですが廃棄ロスの抑制策は。

豊﨑 「回転すし総合管理システム」(米国特許取得)を導入し、すしの供給・管理を行っております。曜日や時間帯ごとのお客さまの状況と販売数量のデータを蓄積するシステムになっており、お客さまが召し上がった内容、破棄された商品の内容がすべてデータ化されます。その過去のデータに基づき、最適な種類と数量で、すしの供給を行っておりますので、廃棄ロスを抑えることができております。このシステムの導入により廃棄率は十数年前に導入する前の9%から5%まで下がっております。また、このシステムを活用することで、常にお客さまのニーズに合った商品をご提供している状態となっていますので、お客さまが席に着かれてすぐにお好みの物を食べることができます。これにより食事にかかる時間を短縮できるため、平均滞在時間にして35~40分という高い回転率を維持しております。

―― 今や寿司は東南アジアをはじめ欧米でも食されるものとなりました。それゆえ過去に比べ原材料費が高騰しているのではないですか。

豊﨑 魚価高騰や為替による変動など影響が大きいことは事実ですが、必ずしもすべての原材料が高騰しているわけではないので一概には申し上げられません。また、仕入れの工夫については取引先さまとの関係上、詳細はお伝えできませんのでご容赦ください。

20130820_24_02

豊﨑賢一氏は語る 鍵を握る都心部攻略

―― 郊外から駅前の小型店への出店を加速するとのことですが、その背景は。

豊﨑 郊外での出店余地の減少や競合環境の激化をうけ、都心部への出店を強化する必要が出てきました。新たに189円ラインも展開し、企業としての力がついてきたとも感じておりますので、今後、都心部への出店を加速化しようと考えております。都心部ではこれまでの郊外型のビジネスモデルが通用しないため、賃料や人件費などのコストを抑えた小型店も新たなモデルの1つとして検討しております。

―― 差別化が難しい業態ですが、いかに御社の特徴を打ち出していくのですか。

豊﨑 企業理念に基づき「うまいすし」を提供し続けることかと思います。弊社の取引先さまには「105円で仕入れられるネタ」ではなく「うまいネタ」を提案してほしいとお願いしています。その「うまいネタ」を105円や189円で販売できるよう企業努力をし続けることで、「うまくて安い」と、お客さまに驚きと感動をご提供でき、競合他社に対する差別化につながると考えております。

―― 競争激化の外食産業をいかにして勝ち残っていきたいと考えているのですか。

豊﨑 いかに勝ち残るというよりは飲食店としての当然のことをやり続けていくことを大切にしていきたいと思っております。その中でお客さまの満足度をより高めていくために企業理念に基づき「うまいすし」を提供し続ける努力を企業全体として行い、働いてくださってる従業員のみなさんの満足度を向上させると同時に、外食産業はピープルビジネスですので人材育成により力を注ぎ、従業員の皆さんのES向上にも注力することで、サービスの質の向上を図り、競合他社との差別化を図っていきたいと考えております。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

「消費者が電力の供給者を自由に選択できる時代へ」―― 再エネ主体の「顔の見えるでんき」をコンセプトに掲げるみんな電力が目指すのは、富が一部の人々に独占されないフェアな世界だ。法人顧客を中心に、同社への支持が集まっている理由を大石英司社長に聞いた。(吉田浩)大石英司・みんな電力社長プロフィール 消費者が発電事業…

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る