マネジメント

山本絹子

山本絹子(やまもと・きぬこ)
1979年関西大学文学部卒業。同年にテンポラリーセンター(現パソナ)入社。90年に取締役就任後、大阪営業本部担当、人事部長、営業総本部雇用開発本部長などを歴任し、商業施設の立ち上げや農業事業など多くの新規事業に携わる。2007年から現職。

パソナグループ山本専務の経歴と男女関係なく活躍できる環境

 専務といえば企業の中枢を担う役回りだ。たとえ現在多くの女性が活躍していても、人材ビジネスの分野でリードするパソナグループでその役職を担うまでには、苦労があっただろう、と先入観を持って話を切り出した。しかし、山本絹子氏から出る言葉は「女性が出産して職場に復帰することが当たり前」「涙々の苦労話はないのよ」と、暖簾に腕押し状態だった。男女関係なく活躍することが当たり前の環境ができる経緯は、山本氏の経歴からひもとくことができる。

 山本氏は、パソナグループの前身、テンポラリーセンターが設立して3年目に、新卒第1号として入社する。文学部卒、編集者になる夢を持っていた山本氏は、当初長く勤めるつもりはなかったという。しかし、人材派遣事業という当時まだ生まれたばかりの産業の中で創業したての会社には勢いがあった。営業としてスタートを切った山本氏は、いつしかこの産業と会社に魅力を感じるようになり、仕事を続ける決意をする。

 「どこに行っても事業の説明から始まり、営業に出れば出るほど、皆さんが興味を持ってくださった。雇用というのは、喫緊にはニーズがなくても半年〜1年の間には必ずニーズが出てきますので、足繁く通えば成果が出る時代でした。ものすごく、面白かったです」

 その後は、労働者派遣法ができるなど雇用にかかわる環境は大きく変わる。その中で同社も人材派遣事業だけでなく、雇用にかかわるインフラを作る事業を手掛け、山本氏も新事業を担当するようになる。1995年の阪神・淡路大震災時は関西地域の責任者として、神戸に雇用を生み出すための商業施設を開発。現在は兵庫県淡路島で農業をとおした地域活性、雇用創出事業を先導する。山本氏は、多くの活躍の場を手にすることができた理由をこう振り返る。

 「この会社は、私が若い頃から男女関係なく、その人がどんな能力を持っているかを、研修をとおして見てくれました。年齢、性別関係なく、自分の考えを言える会社風土があったので、役割を与えられることや成果を出すことに、それらが問題になることはありませんでした」

 「女性の管理職が多く登用されている企業」と評される同社だが、初めて女性をリーダーとして登用した時は、一度に5人を選出したという。

 「後になって南部(靖之同社代表)から聞きましたが、女性を1人だけを選んでも男性につぶされることがあるので、5人で切磋琢磨すれば根性のある人が残ると考えて選出したそうです。実際に苦境を一緒に乗り越えたメンバーは、スーパーマンでも超離れ業ができるわけではなく、あきらめないで頑張る、粘り強い人ばかりです」

5人の女性リーダー選出とパソナグループの評価

 一方でこのような登用の仕方は時として「女性優遇」と見なされる場合がある。山本氏を含め、5人が一度に選出されたことに疑問の声もあったと思うとしながらも、こう付け加えた。

 「女性にも力があると証明するためには、リーダーをつくって見せる時期が必要なのだと思います。実際にその女性に力があり、その一時を抜ければ、そこからはそれが『普通』になる。そのためには、ある一定期間が必要かもしれません」

 山本氏がこの期間を順風満帆に過ごしたわけではない。神戸の商業施設開設の新規事業においては、これまでと全く分野が異なる業態に一からチャレンジしなければならず、苦戦した時期もあった。

 「つらいばかりだと人間は生きられないので、世間から見たら50点でも、私の中の100点満点を設定してきました。苦しい時は『そんな日もあるさ』と思い、休まない、失敗してもフォローするといった基本的なことを誠実にやってきました」

 こうして山本氏らが女性の力を証明する期間を乗り越え、パソナグループは「男女関係なく活躍できる企業」の評価を得るに至る。そこには山本氏らの踏ん張りのみならず、かじ取り役であるトップのリーダーシップや男女関係ない登用の仕組みなど制度が存在したからこそ完成されたはずだ。同様の企業風土をつくるにはそれに相当する要素が必要かもしれない。しかし、雇用問題に長くかかわってきた山本氏は、今後の状況は変わると最後に語った。

 「これからは社会が変化します。男女関係なく人口が減り、人材の重要性を誰もが実感するはず。企業は社員の健康があってはじめて機能します。子育てだけでなく介護などの課題を抱える社員を、企業が支えなければいけません。結果的に、制度は人間に合うものに変わり、男女関係なく活躍の場が増える、そんな時代になると思います」

(文=本誌・長谷川愛 写真=佐々木伸)

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