政治・経済

芦原義重が差配した顔ぶれ

 渓雲漠々 水泠々--長野県の「くろよんロイヤルホテル」の菖蒲池のほとりに80トンという巨岩の句碑に芦原義重・関西電力社長が斎戒沐浴して揮毫した王陽明の漢詩の一説がある。

 「渓の雲、遠くはるかに、水や風の音、清らかで涼しい」

  〝泠〟が 〝冷〟でないところにこの漢籍の素晴らしさがある。今から30年ほど前、黒部開発20周年を記念して、世紀の建設工事に従事したゼネコン5社に対して関電首脳がその労をねぎらい、あらためてお礼の言葉を述べる催事のドラマといえる句碑が建立された。それは芦原にとって、先輩・太田垣士郎と苦楽を共にした記念すべき催事であった。

 太田垣の差配により、阪急電鉄から国策に沿って転じた関西配電(現・関西電力)。しかも、太田垣は芦原を関電のみならず、関西財界の首脳へのお膳立てを行った。そして昭和41年秋、芦原は財界再編成の渦中に関西の財界総本山・関西経済連合会の会長に就任する。その過程で関経連の主である工藤友恵の妨害戦術に遭遇するが、芦原擁立で意思統一する朝の会面々の芦原内閣作りは、工藤を排除した、ほぼ完璧なスタートになる。

 唯一、盟友である東洋紡の谷口豊三郎の副会長受諾問題だけが即決に至らなかった。その背景には、谷口の先輩である阿部孝二郎の関経連会長辞任が財界再編成で引きずり下ろされた印象があり、自らが受諾しにくかったことがある。また、谷口は東洋紡社長の座を川崎邦夫に譲り、繊維業界の若返りを口にしていた。

 そこで芦原は毅然たる態度で組閣に臨む。「新しい革袋に新しい酒を注ぐため、あえて旧弊を避けて通る新内閣と思ってほしい」(芦原)。

 11月総会で誕生し、発足した顔触れは、芦原以下、大原總一郎・倉敷レイヨン社長、中司清・鐘淵化学社長、栗本順三・栗本鉄工所社長、日向方斎・住友金属社長、上枝一雄・三和銀行頭取、それに神戸商工会議所会頭の砂野仁・川崎重工社長、京都商工会議所会頭の森下弘・日本新薬副会長陣。金融系列では、興銀、富士、三和、住友、三井、第一、三菱が網羅された絶妙のバランス。

 会費は会長会社が群を抜き、関電が事務所の交際費をすべて面倒見る滑り出し。花街の評判は上々であった。

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