政治・経済

 急激な盛り上がりを見せているO2Oだが、まだまだ過渡期であり、今後もさらなる拡大が期待される。その一方でO2Oが抱える問題点は何か。みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部 コンサルタントの山口陽平氏にO2Oの現状と今後を語ってもらった。

山口陽平(みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部 コンサルタント)

山口陽平(みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部 コンサルタント)

日本がうまく使いこなしているO2O

 「O2O元年」といわれたのが2012年です。

 狭義でO2Oとは、「インターネットのさまざまな機能を活用して、リアル店舗にお客さまを誘客し、物販につなげること」と定義しています。

 また、現在のO2Oの盛り上がりの背景にはスマートフォン(以下スマホ)の存在があります。同じく12年は一般ユーザーにスマホが普及した年でした。企業の公式アプリなどを使って、顧客をリアルの店舗に誘導する動きが活発化しました。

 インターネットを利用した店舗への誘客は、過去にもパソコンのメールマガジンやフィーチャーフォン向けのメールマガジンが行われていましたが、確率的に効果が薄い側面がありました。

 一方、スマホの高機能さを生かし、顧客が街中にいる時にタイミングよくメールを発送できれば、例えば5分で直接店舗に誘導できたりします。特に位置情報を活用したアプリでは、店舗近隣のエリアに入ってきた顧客に対してクーポン情報やセール情報を送ることができます。このような、顧客に無理のないように自然に店舗に誘導する手法が活発化すると思っています。

 また、企業公式アプリの伸びも高く、例えば、ユニクロ、GU、無印良品などが公式アプリを提供し、店頭に行くと割引を受けられるシステムが構築されています。同じくヤマダ電機やビックカメラも従来のポイントカードをスマホ上で提供しています。

 それ以外には飲食店やコンビニエンスストアでよく使われているものとして、チェックインクーポンがあります。

 O2Oに限らず、インターネットに絡めたビジネスモデルは海外で成功したモデルを1年くらいの長いタームを経て日本に輸入することが多いです。しかしO2Oはむしろ日本がうまく使いこなしていると思います。例えばコンビニは、無料クーポンの話題をネットに拡散して多くの顧客を集める手法で非常に成功しています。

 あとは街頭で群衆が突然ダンスを始める「フラッシュモブ」というパフォーマンスがありますが、それを新規店舗のオープンに合わせて行うプロモーションが行われています。

 事前にクーポンの配布を予告し人を集めたところでフラッシュモブを見せると、その様子をTwitterやFacebookを通じて「すごいことになっている」とネット上に拡散します。その盛り上がりの中で次のキャンペーンの告知をし、多くの顧客をネットからリアル店舗に誘導するという循環が期待できます。

 昨年4月にアパレルブランドのアメリカンイーグルの日本上陸の際に新宿で実施されて以来、効果的なプロモーションの手法として提供されています。

 

O2Oでこれから起こり得る問題

 

 一方で、O2Oは両刃の剣的な問題を抱えています。1つの可能性として、ショールーミングが加速する懸念があります。

 ショールーミングは、ネットで商品を買う決断ができない人が商品を見て品定めをするためにリアル店舗を活用し、リアル店舗がショールーム化することを指します。

 O2Oに取り組む企業はネット上のコンテンツを充実させます。顧客はそのネット上のコンテンツを見ますが、ついでに商品の最安値をアマゾンや価格・comで検索して、ネット店舗の相場感を持ってしまうことが少なくありません。時には企業の直営ネット店舗自身がリアル店舗より安い価格で販売している場合もあります。

 このため、ネットからリアル店舗に顧客を呼び商品の実物を見せることまでは達成できても、最終的にネットで買うということを止められない懸念があります。O2Oに注力する場合にはネットだけでなく、リアル店舗の魅力を作っていかないと、余計にネット上に顧客を流してしまう危険性があります。

 また、利用者情報やプライバシーの管理が問題になる可能性もあります。

 O2Oの進展でリアル店舗での購入履歴とオンラインでの購入履歴が統合されていきます。そうなると例えば、ネット上で黒いジャケットを買ったとして、次に店舗に行ったら店員が「先日ネットで黒いジャケットを買われましたけどこういうチノパンはどうですか」と薦めてくれたら、非常に便利かなと思います。

 しかしネットでいろいろな物を買った購入履歴が店員にすべて伝わっているかと思うと気持ち悪く感じる可能性もあります。顧客情報が濫用されない仕組みづくりは今後重要になってくると思います。

 さらにネットでの集客の仕掛けに失敗すると、大きな反発があるのがこの分野の特徴です。

 特にTwitterではキーワードが問題を引き起こすことがあります。あるコーヒーメーカーのキャンペーンでは、Twitter上で「コーヒー」とツイートした人に対して、自動でキャンペーンの告知を配信したら、非常に煩わしく感じられ炎上した事例があります。不快な仕掛けを作ると、ネット上で炎上する危険性があります。

 先ほどのフラッシュモブについても、実施したがために道路に渋滞を発生させてしまったとしたら、大きな苦情を招く可能性があります。

 せっかくポジティブな情報をネット上に拡散していこうとしたにもかかわらず、失敗してしまうと逆にネガティブな情報が拡散することも考えられるため、ネットでの仕掛けには注意が必要です。O2Oには期待感も大きい一方でこうしたリスクも感じています。

 O2Oの今後については、LINEをはじめO2Oプラットフォームを提供する会社が頑張ってO2O施策を盛り上げる動きが、直近は続くと思います。

 その先には、それらのプラットフォームを活用してベンチマークになるような超メガヒットを起こす小売店やメーカーが出てきて、その後にさらに後発組が参入して来るということが、繰り返しのサイクルで表れると思っています。 (談)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る