政治・経済

西武ホールディングスは4月に再上場を果たしたが、ここまでの滑り出しは上々だ。昨年は米サーベラスグループとの間で企業価値向上をめぐる激しい争いがあったが、株価も順調に推移。観光需要の高まりや都市再開発の進展を追い風に成長ステージへと向かっている。

後藤高志

後藤高志・西武ホールディングス社長

西武ホールディングス再上場後の株価は安定推移

 西武ホールディングス(西武HD)が再上場後初めてとなる株主総会を開催した。筆頭株主の米サーベラスグループとの経営の主導権をめぐる争いがTOBにまで発展した昨年とは一転して、「平穏無風」の株主総会となった。

 会場出席株主数は昨年の940人から半数以下の448人に減少。所要時間も昨年の5時間に対して2時間41分にとどまった。サーベラス側の株主も数名が出席していたが、事前に株主提案をすることもなく、また株主総会の場で質問することもなかった。株主総会では、20人の株主からの質問を受け付け、一部では配当への不満を漏らす声もあったが、総じて再上場を歓迎するムードで終わった。

 ここまで株主総会が平穏に終わったのには、西武HD再上場後の業績と株価が順調に推移していることが大きい。

 特に株価については、サーベラスとの対立の争点の1つだった。投資ファンドであるサーベラスとしては、出口戦略として2千円前後の売り出し価格を想定していたとされている。再上場に当たって、当初の売り出し想定価格2300円に対して、仮条件を1600円に引き下げた時点で、サーベラスは上場時の株売却を見送った。こうした経緯から、仮に株価が伸び悩むようだと、新たな火種となる可能性があった。

 結果的には株価は順調に推移。4月23日の東京証券取引所への上場時には仮条件通りの1600円で売り出したが、5月には懸案の2千円を突破。6月3日には、後藤高志社長が上場時に「フェアコーポレートバリュー」と語った2300円台に到達した。最高値を付けた後はいったん下げたものの、6月末現在、2千円台をキープしている。

 今年の新規上場銘柄の株価が伸び悩むケースが多い中で、西武HDの株価の推移はいたって順調と言える。こうした安定した流れが評価される形で、7月4日には東証の貸借銘柄に選定されている。

紀尾井町プロジェクトの完成予想図

紀尾井町プロジェクトの完成予想図(西武ホールディングス提供画像)

西武ホールディングスがこだわった「良い形での上場」

 ここまでの株価の順調な上昇は、西武HDの潜在能力が評価された結果と見ることができる。2020年の東京オリンピック・パラリンピック関連の最優良銘柄との評価もある。こうした追い風と同時に、上場を機に「守り」から「攻め」に転じる形で、成長に向けた大掛かりな施策を推進できるようになったことが、企業価値を押し上げる。

 まず成長ドライバーとなるのが、プリンスホテルを展開するホテル事業だ。外国人旅行客の増加の恩恵を最も受けるのは、西武HDだと目されている。

 また、群馬県の富岡製糸場の世界文化遺産登録も全体的な観光需要を押し上げる観点から追い風となる。現時点で西武グループと富岡製糸場の関係は、東京と富岡を結ぶ高速バスが走っている以外は直接的なかかわりはない。しかし、西武グループの拠点の1つである軽井沢エリアと地理的に近いため、近場の観光・宿泊地として軽井沢が脚光を浴びる可能性がある。

 さらに東京の都市再開発に関連して、紀尾井町プロジェクトが着実に進展していることは大きい。同プロジェクトは赤坂プリンスホテル跡地の再開発事業で、オフィス、ホテル、住宅、商業施設を組み合わせた複合施設を建設するもの。16年夏の竣工を目指している。「ホテル・オフィス棟」と「住居棟」の2棟で構成されるが、オフィス棟の全24フロアのオフィス部のうち20フロアにヤフーが入居することが発表された。

 西武HDでは、償却前営業利益(EBITDA)1100億円を成長戦略の当面の目標に掲げているが、実現のめどは、紀尾井町プロジェクトが本格稼働する時期としている。その意味で、「開業の2年前にキーテナントが決まったことは大きい」と後藤社長も同プロジェクトに期待を寄せる。なお、開業までのプロパティーマネジメントについては森ビルと提携。企画・立案について森ビルからサポートを受けるという。

 西武HDはこれまで「良い形での上場」にこだわってきた。後藤社長は現在までを振り返り、「成長ステージに乗った今の上場は良い形だった」と語る。

 西武HD上場時に当面のターニングポイントとして考えられたのは、決算発表の5月、株主総会の6月、そしてサーベラスの株式売却禁止期間が終了する10月の3つ。2つは無事に通過し、残る関門はあと1つとなった。最後の関門をクリアするためには、これからの数カ月の間、現在の追い風に乗り、成長ステージをどこまで突き進むことができるかに懸かっている。

(文=本誌/村田晋一郎)

 

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