政治・経済

「当座預金残高152・9兆円と過去最高更新へ、日銀がきょうの予想発表」

 日本銀行が午前7時55分に発表したきょうの当座預金残高の予想は152兆9千億円程度と、2営業日ぶりに過去最高を更新する見込み。

 これまでの同残高の最高は20日の151兆3900億円(確報ベース)。日銀の異次元緩和による国債買い入れオペなどで市場に潤沢な資金が流れていることが背景にある。(ブルームバーグ2014年6月24日)

日本銀行の日銀当座預金残高の推移

日銀当座預金とは

国内の銀行などの金融機関が、日銀に保有する当座預金。銀行は預金の一部を「預金準備」として日銀当座預金に預けることを義務付けられている。日銀当座預金の残高は、日銀のバランスシートでは「日銀預け金」と表現される。

増え続ける日銀当座預金

 意外かもしれないが、実は現在の日本において、銀行の貸し出し態度は好転している。無論、個別の融資案件を見れば、いわゆる貸し渋りが発生しているケースもあるが、少なくとも「全体」で見れば、日本の貸し出し姿勢が「融資拡大」の方向に向かっているのは間違いない。何しろ、銀行の貸出態度判断DIは、中小企業ですら2006年水準を回復しようとしているのだ。

 ところが、その反対側で、銀行が日本銀行に持つ当座預金(日銀当座預金)の残高が、ゾッとするほどの規模にまで膨張してしまっている。日本銀行の通貨発行は、例えば「現金を印刷し、国民に配る」などといった手法はとらない。

 日本銀行は国内の民間銀行などから「国債」を買い取り、その代金として新たな日本円を発行するのだ。しかも、現金を刷るのではなく、国内の各銀行が自行(日本銀行)に保有する当座預金の残高を増やす形で、国債代金を支払う。日銀当座預金にお金を「振り込む」のではなく、「残高を増やす」だけであるため、注意してほしい。日本銀行は、日本国内で唯一「デジタルデータ」を増やすだけで、お金を作り出せる存在なのである。

 国内の銀行は、預金の一定割合以上の金額を、一定期間、預金準備として日銀当座預金に預け入れることが義務付けられている。ところが、現在は国内の銀行が預金準備率をはるかに上回る規模のお金を、日銀当座預金に預けっぱなしにしている。

 14年6月、日銀当座預金の残高が、史上初めて150兆円を上回った。13年末時点で100兆円を突破した日銀預け金残高であるが、それから半年が経過し、さらに50兆円も積み増しされたことになる。14年5月の法定準備預金は約8・2兆円である。それに対し、同月の日銀当座預金残高は114・9兆円に達しているため、差額である106・7兆円が5月時点における「凍り付いたマネー」という話になる。

 日銀当座預金の残高が増え続けている最大の理由は、日銀当座預金に0・1%の金利が付いてしまうためだ。本来、日銀当座預金に金利を付けるのは妙な話だが、政府は、「日銀当座預金に金利を付けなければ、銀行が国債を日銀に売らず、札割れが頻発する」という理由で、0・1%の金利を支払っている。

 とはいえ、金融政策の目的は「銀行に供給したお金を、民間(企業・家計)に貸し出してもらう」ことであるはずだ。日銀当座預金に0・1%の金利を付けなければ、銀行が国債を日銀に売ろうとしないことは、民間の資金需要が十分に回復していないと、政府自ら認めているということだ。

 つまり、現在の日本政府に求められる解決策は、金融政策の拡大ではなく、「政府が需要を創出し、民間企業や家計の資金需要を高めること」になるはずなのだ。それにもかかわらず、日本政府は金融緩和から「先」の政策を疎かにしている。

金融政策で銀行の貸し出しを増やす限界

 実は、わが国と同じく中央銀行の当座預金残高ばかりが積み上がり、民間への貸し出しが増えない問題を抱えている「地域」がほかにもある。ユーロ圏だ。ユーロの中央銀行であるECB(欧州中央銀行)は、なかなか増えない銀行の民間貸出に業を煮やし、ついに余剰のECB当座預金残高に対し「金利を徴収する」政策、すなわちマイナス金利を実施することを決断した。

 もっとも、民間の資金需要が増加しない中、金融政策で銀行の貸し出しを増やそうとするだけでは、単に国債が買いこまれるだけだろう。特に、深刻なデフレマインドに冒されている日本国民は、「継続的、安定的に所得(需要=市場)が増えていく」確信が持てない限り、銀行からの借り入れを増やしてまで投資や消費に乗り出そうとはしない。

 前述のとおり、銀行の貸出態度判断DIは好転している。それでも、日銀が発行した日本円の多くが日銀預け金として凍り付いているという現実を、日本政府は見つめなおすべきだ。

筆者の記事一覧はこちら

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング…

シェフラージャパン代表取締役 マネージング・ディレクター 四元伸三氏

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

【特集】2019年注目企業30

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年6月号
[特集] 進化するリーダーシップ
  • ・あなたは北風、それとも太陽?
  • ・小路明善(アサヒグループホールディングス社長兼CEO)
  • ・鈴木貴子(エステー社長)
  • ・千葉光太郎(ジャパン マリンユナイテッド社長)
  • ・二木謙一(國學院大學名誉教授)
[Special Interview]

 中村邦晴(住友商事会長)

 「正々堂々と向き合えば、仕事は人を幸せにする」

[NEWS REPORT]

◆パイオニアに続きJDIも 中国に買われる日本企業の悲哀

◆会社はだれのものなのか サイボウズと株主がつくる“共犯関係”

◆24時間営業はどこへ行く コンビニ業界未来予想図

◆トヨタとホンダが手を組み参戦 「MaaS戦争」いよいよ勃発

[特集2]ブランド戦略 新時代

 技術やデザインだけではない ブランドとは商品の哲学だ

ページ上部へ戻る